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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

外出禁止令のパリ 閉塞感解き放つ芸術を応援

2020-04-10 12:16:25 | 新型コロナウイルス
外出禁止令のパリ 閉塞感解き放つ芸術を応援
堀切克洋
ほりきり・かつひろ 1983年福島市生まれ。演劇批評家・俳人。句集『尺蟻の道』(俳人協会新人賞)。パリ在住



外出禁止から3週間が過ぎ、朝から晩まで家族で過ごす生活は「日常」となっている。トーク番組も議会もウェブ会議ツールをフルに活用中だ(議員は自宅ないしは事務室から質問をする)。マクロン政権は新自由主義的政策で薬品やワクチンの製造を中国やインドに移転してきたので、そこを問題視されている。マスクの発注も中国に頼らざるを得ない。つまり感染拡大は不運などではなく、医療費の削減も含めて生活に関わる部分を切り捨て「外注」してきたこと、つまりグローバリズムの副作用の問題としても扱われている。
幸い自宅のなかは平穏だが、街に出れば医療崩壊の懸念や遠隔教育の混乱等の現実がある。自分ではない誰かの生活を想像する力が求められているのだと思う。



新型コロナウイルス対策でひっそりとしたパリの街並みを見詰める女性=3月31日(AFP時事)

劇場閉ざされウェブ公開に
そんななかで、久しぶりに演劇をたくさん見ている。フランスは年末年始の長期ストもあって劇場通いが遠のいていたのだが、感染対策のために劇場が閉鎖になり、多くの劇場・劇団が作品のウェブ公開に踏み切ったためである。
もちろん映像と上演は別物だが、劇場閉鎖中の現状ではウェブ上で劇場の門戸を人々に開くことも一案だろう。例えば、フランス国立管弦楽団は、各団員が自宅で演奏・撮影した「ボレロ」を映像編集して公開。
禁止令後は、精神科の通院や家庭内暴力が増えているとも報道されているが、ふさぎ込む心を解放するには芸術家の役割は大きい。SNSを通じて気軽にシェアすることもできる。
フランスでは外出禁止令開始の翌日、総額2200万ユーロ(約26億円)の文化省による緊急支援策第1弾が発表された(税金の猶予、助成金の維持、雇用維持を原則とした支援金など)。同様の救済措置は英米でもとられたが、ドイツ文化相は「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要だ」と明言。個人・自営業者向けの支援は最大500億ユーロ(約6兆円)と桁違いで、このうち約半数が文化セクターで働いている。
最大の不安は、コロナウイルスの終息時期が予測できないことだ。東京五輪が来年7月に延期になったが、感染が終息している保証はないだろう。ワクチンが流通するのはおそらく1年以上先のことだ。このような不安な状況だからこそ、文化芸術の支援は国家の大切な仕事である。
欧州に比べると、日本の文化予算の規模は小さい。昨夏のあいちトリエンナーレの問題を見ても、芸術の公的支援への共感度は決して高くはない。商業的な文化ジャンル(文芸や映画など)と比べると、演劇や音楽は値段も高く、敷居が高い。文化的には地方分権がなされている独仏とは違って、日本では芸術への回路は東京近郊のインテリ層に限定されたままであることも問題だ。
とはいえ、上演芸術はクリエイティブな人たちが集まって、即興的に新しいものを作っていく仕事だ。オンラインの即時性とも相性がいい。日々刻々と変化する状況を取り込みながら、アーティストが人々に提案をしていく。人々が自宅に閉じ込められている状況では、そのような交流は貴重である。

こもる人々に感性を“感染”
非常事態だからこそ、彼らがクリエイティブであり続けることを国は保障してほしい。間違っても、芸術家の「善意」に甘えてはならない。まずはシンプルな手続きで、生活費を付与することだ。生活の不安が取り除ければ、アーティストの自発的な活動が、私たちの無色で平坦になりがちな生活に、彩りと起伏を与えてくれることだろう。
アーティストや制作者には、未曽有の状況だからこその画期的なアイデアをどんどん繰り出してほしい。この苦難な状況における特異な経験が、これからの文化芸術の財産になる。
フランスの演劇理論家であるアントナン・アルトーはかつて、演劇の「感染力」がペストに匹敵すると論じたことがある。現在、文化芸術に携わる者たちはウェブを通じ、自室にこもっている人々にまで自身の思考や感性を「感染」させることができるようになった。私たちは、新型コロナウイルスよりもはるかに強力な存在である彼らのことを応援しなければならない。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年4月10日付掲載


新型コロナで、フランスも新自由主義の弊害が現れています。
でも、フランスは日本と比べて芸術や文化への支援・予算がレベルが違う。
演劇家たちも、創意工夫して、ウェブ公開とか…。自身の思考や感性を人々に「感染」させたいなんて心意気は良いですね。

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