続続 性別なくても大丈夫～♪② 新井祥 しょせん記号

続続　性別なくても大丈夫～♪②　新井祥　しょせん記号
５０代になってから、量販店の会員登録などのさいに、にわかに「女性」と認識されるようになった。自分の外見はなにか変わったかというと、男性として社会生活を送れていた１０年前とたいして変化はない。はやりに合わせて、オーバーサイズの服を着るようになったくらいだ。
もしや、それが原因なのだろうか？最近もっぱら、生年月日の欄に５０代と書いたのを見ると、店員の態度が「ミセス相手」の雰囲気に豹変するのだ。
５０代の「男性らしい」記号とはなにか？広い額や男性的な体格、お父さん系の私服、紳士用の眼鏡…その内のひとつもない自分。となると、残る可能性は「マニッシュな格好を好む短髪のお母さん」…そう思われてしまっているのだろう。
実際、同世代くらいの女性たちも短髪にしたり、若い頃より声が低くなったり、女くささのないシンプルなパンツルックを好む率が、ぐっと上がった気がする。要するに年々、中性の自分と同世代女子との共通点が増えて、パッと見の違いがわかりにくくなっているのだ。



マスクをしているせいは大きいだろうと思う。なにせマスクの下はひげモジャ…。日頃その顔を鏡で見ているだけに、女性かと問われたときの自分の違和感はものすごいものである。そうして、今日も自分は店頭で女性かと聞かれるたびにマスクの下からあごを出してみせるのだった。
ひげの生えたあごを見て、それでも女性と登録する人はいない。しょせん記号で判断しているにすぎないのだ、見た目の性別なんて。いや、本当はたかが会員登録でいちいち性別を記入しなきゃならない習慣自体がなくなればいいと思ってるんだけどね。
（エッセー漫画家）（金曜掲載）

「しんぶん赤旗」日刊紙　2022年5月13日付掲載

最近もっぱら、生年月日の欄に５０代と書いたのを見ると、店員の態度が「ミセス相手」の雰囲気に豹変する。
実際、同世代くらいの女性たちも短髪にしたり、若い頃より声が低くなったり、女くささのないシンプルなパンツルックを好む率が、ぐっと上がった気がする。要するに年々、中性の自分と同世代女子との共通点が増えて、パッと見の違いがわかりにくくなっている。
ホルモンバランスで、女性でもない、男性でもない…。それでもいいんじゃないって事。