守れ日本の鉄道網 赤字路線切り捨ての危機② 「鉄道は財産、文化の源」
1987年の国鉄分割民営化時に、採算のとれない 83路線が廃止・第三セクター移管となりました(45が廃止、38が第三セクターへ)。一方で、存続した路線について政府与党は、民営化された後も「事業の廃止は採算性そのものを判断基準にしない」(橋本龍太郎運輸相、86年10月13日、国鉄改革特別委員会の答弁)など、これ以上ローカル線は廃止しないと国民に約束したのです。
また、新幹線と都市路線の収益が見込まれるJR東、西、東海と違い、JR北海道、四国、九州については、「経営安定化基金」が設けられ、その運用益で赤字を補てんする想定でした。しかし、超低金利政策によって運用収益は激減しました。
一部を残し、橋桁が流失したJR肥薩線の球磨川第1橋りょう。2020年の豪雨で被災した同線は現在も八代-吉松間で不通のまま=熊本県八代市
路線5区間すべてバス
この間、全国では不採算路線の廃止が相次ぎました。2000年以降、JR私鉄を合わせると45線、1157・9キロが廃線となりました(国交省、今年2月3日現在)。
JR北海道・留萌線(深川-留萌間50・1キロ)の沿線4自治体は8月30日、JR側が提案した廃止・バス置き換えを受け入れることを決定しました。JR側が16年に打ち出した廃止路線5区間がすべてバスになります。
決定を受けて地元沼田町の横山茂町長は「この財産を残したかったというのが正直な気持ち。無念だ」と心情を吐露しました。
この間、北海道では、日高線のほとんどの区間が廃線、北海道新幹線の延伸により函館線の小樽-長万部(おしゃまんべ)間(140・2キロ)の廃止が決まりました。16年に台風被害を受けた根室線の富良野-新得間について、地元自治体は存続を断念、443キロにもおよぶ同線は東西で分断されます。
11年の豪雨災害の被害を受けた只見線(JR東)は、この秋11年ぶりに運行再開となりますが、上下分離方式(復旧区間)の下部にあたるインフラ部分が地元自治体の負担となります。
リニアには巨額費やす
政府はこの間、大都市開発、リニア建設、新幹線建設などに巨額な予算を費やす一方、地方路線は切り捨て、震災・津波、台風・豪雨で被災した路線の廃止、BRT・バス転換を進めるなど、都市圏と地方の格差拡大を推進する政策を取り続けてきました。
切り捨て対象路線を抱える地方の自治体は、こうした国の姿勢に懸念を持ち続けています。
28道府県の知事会は5月、▽鉄道の重要性を認識し、地方自治体等が行う利用促進などの取り組み支援▽JRなど事業者の経営安定化にむけた支援▽届け出制になっている鉄道事業者の路線廃止の手続き見直し―の提言を国土交通省に提出しました。
赤字ローカル線の廃止・代替路線転換にむけ議論を進めるよう提言をまとめた「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」のヒアリングでは、地方代表から「鉄道事業者だけ、事業者と沿線自治体の間の問題でもない。国の交通政策の根幹として考えるべきだ」「鉄道をはじめとする公共交通は、文化の源であり自治の根幹」などの意見が出されました。
JR留萌線の廃止決定を受けて北海道新聞は1日付の社説でこう断じました。
「国や道は、5線区に対し存続にむけた協力を一切しなかった。JRへの財政支援の対象からも外れ、事実上、見放していたといえよう」
赤字ローカル線の問題は、人口減少やモータリゼーション等の理由にとどまらず、国鉄分割民営化と、都市・地方の格差拡大を進めたその後の政府の施策も原因の一端を担っています。開業150年を迎えた世界有数の鉄道サービスを維持するため、国はJRをはじめとする事業者や地方自治体に負担を丸投げする姿勢を改め、支援を含め深く関与することが不可欠です。(おわり。遠藤誠二が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月5日付掲載
この間、北海道では、日高線のほとんどの区間が廃線、北海道新幹線の延伸により函館線の小樽-長万部(おしゃまんべ)間(140・2キロ)の廃止が決定。16年に台風被害を受けた根室線の富良野-新得間について、地元自治体は存続を断念、443キロにもおよぶ同線は東西で分断。
広大な北海道の大地で、鉄道線路が廃止されることは陸の孤島になるに等しい。
28道府県の知事会は5月、▽鉄道の重要性を認識し、地方自治体等が行う利用促進などの取り組み支援▽JRなど事業者の経営安定化にむけた支援▽届け出制になっている鉄道事業者の路線廃止の手続き見直し―の提言を国土交通省に提出。
住民の足を国が責任をもって守る。当然のことです。
1987年の国鉄分割民営化時に、採算のとれない 83路線が廃止・第三セクター移管となりました(45が廃止、38が第三セクターへ)。一方で、存続した路線について政府与党は、民営化された後も「事業の廃止は採算性そのものを判断基準にしない」(橋本龍太郎運輸相、86年10月13日、国鉄改革特別委員会の答弁)など、これ以上ローカル線は廃止しないと国民に約束したのです。
また、新幹線と都市路線の収益が見込まれるJR東、西、東海と違い、JR北海道、四国、九州については、「経営安定化基金」が設けられ、その運用益で赤字を補てんする想定でした。しかし、超低金利政策によって運用収益は激減しました。
一部を残し、橋桁が流失したJR肥薩線の球磨川第1橋りょう。2020年の豪雨で被災した同線は現在も八代-吉松間で不通のまま=熊本県八代市
路線5区間すべてバス
この間、全国では不採算路線の廃止が相次ぎました。2000年以降、JR私鉄を合わせると45線、1157・9キロが廃線となりました(国交省、今年2月3日現在)。
JR北海道・留萌線(深川-留萌間50・1キロ)の沿線4自治体は8月30日、JR側が提案した廃止・バス置き換えを受け入れることを決定しました。JR側が16年に打ち出した廃止路線5区間がすべてバスになります。
決定を受けて地元沼田町の横山茂町長は「この財産を残したかったというのが正直な気持ち。無念だ」と心情を吐露しました。
この間、北海道では、日高線のほとんどの区間が廃線、北海道新幹線の延伸により函館線の小樽-長万部(おしゃまんべ)間(140・2キロ)の廃止が決まりました。16年に台風被害を受けた根室線の富良野-新得間について、地元自治体は存続を断念、443キロにもおよぶ同線は東西で分断されます。
11年の豪雨災害の被害を受けた只見線(JR東)は、この秋11年ぶりに運行再開となりますが、上下分離方式(復旧区間)の下部にあたるインフラ部分が地元自治体の負担となります。
リニアには巨額費やす
政府はこの間、大都市開発、リニア建設、新幹線建設などに巨額な予算を費やす一方、地方路線は切り捨て、震災・津波、台風・豪雨で被災した路線の廃止、BRT・バス転換を進めるなど、都市圏と地方の格差拡大を推進する政策を取り続けてきました。
切り捨て対象路線を抱える地方の自治体は、こうした国の姿勢に懸念を持ち続けています。
28道府県の知事会は5月、▽鉄道の重要性を認識し、地方自治体等が行う利用促進などの取り組み支援▽JRなど事業者の経営安定化にむけた支援▽届け出制になっている鉄道事業者の路線廃止の手続き見直し―の提言を国土交通省に提出しました。
赤字ローカル線の廃止・代替路線転換にむけ議論を進めるよう提言をまとめた「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」のヒアリングでは、地方代表から「鉄道事業者だけ、事業者と沿線自治体の間の問題でもない。国の交通政策の根幹として考えるべきだ」「鉄道をはじめとする公共交通は、文化の源であり自治の根幹」などの意見が出されました。
JR留萌線の廃止決定を受けて北海道新聞は1日付の社説でこう断じました。
「国や道は、5線区に対し存続にむけた協力を一切しなかった。JRへの財政支援の対象からも外れ、事実上、見放していたといえよう」
赤字ローカル線の問題は、人口減少やモータリゼーション等の理由にとどまらず、国鉄分割民営化と、都市・地方の格差拡大を進めたその後の政府の施策も原因の一端を担っています。開業150年を迎えた世界有数の鉄道サービスを維持するため、国はJRをはじめとする事業者や地方自治体に負担を丸投げする姿勢を改め、支援を含め深く関与することが不可欠です。(おわり。遠藤誠二が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年9月5日付掲載
この間、北海道では、日高線のほとんどの区間が廃線、北海道新幹線の延伸により函館線の小樽-長万部(おしゃまんべ)間(140・2キロ)の廃止が決定。16年に台風被害を受けた根室線の富良野-新得間について、地元自治体は存続を断念、443キロにもおよぶ同線は東西で分断。
広大な北海道の大地で、鉄道線路が廃止されることは陸の孤島になるに等しい。
28道府県の知事会は5月、▽鉄道の重要性を認識し、地方自治体等が行う利用促進などの取り組み支援▽JRなど事業者の経営安定化にむけた支援▽届け出制になっている鉄道事業者の路線廃止の手続き見直し―の提言を国土交通省に提出。
住民の足を国が責任をもって守る。当然のことです。
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