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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

賃金の上がる国へ① 「明るい兆し」どこの話? 問われる政治の責任

2024-06-07 07:13:43 | 働く権利・賃金・雇用問題について
賃金の上がる国へ① 「明るい兆し」どこの話? 問われる政治の責任

ジャーナリスト 昆 弘見さん

歴史的な物価上昇が国民生活を直撃するなか、岸田文雄政権は「三位一体の労働市場改革」によって「構造的賃上げ」を実現するといいます。岸田政権の労働改革の問題点と真の賃上げに向けた打開の方向を、労働問題に詳しいジャーナリストの昆弘見さんに寄稿してもらいました。

日本はいま、政治の責任で労働者の賃金を上げることが急務となっています。岸田首相は「経済の再生が岸田政権の最大の使命」だといい、そのために「物価の上昇を上回る賃上げ」に力を入れると強調しています。30年間、賃金が上がらず経済が停滞し、国民の暮らしが悪化するなかで「言は良し」です。しかし、本当に上がるでしょうか。

国民に実感なし
岸田首相は昨年の春闘のとき、「30年ぶりの高水準」(3・6%)だったと宣伝し、夏ごろには実質賃金がプラスに転じるだろうとの予測をふりまきました。しかし、一度もプラスになりませんでした。
賃上げが3・6%だといっても、勤続年数で毎年自動的に上がる定期昇給(約2%)を含んでいるので、実際のべースアップ(増額)は1・6%。物価上昇(3・1%)にとても追いつきませんでした。結局、実質賃金は2022年4月以降、今年3月まで24カ月連続でマイナス。ついに過去最長となりました。
今年の春闘はどうか。大手の5%超え回答に岸田首相はまたもや「明るい兆しが見えてきた」と上機嫌です。しかし労働者の7割が働く中小企業は、3割の企業が賃上げできるかどうか危ぶまれています。雇用者の4割に増えた非正規雇用の労働者の多くは春闘とは無縁です。実質賃金がプラスになるかどうかは物価の動向しだいという心細さです。
岸田首相の発言にたいして、国民からX(旧ツイッター)で「明るい兆し?どこの話?」「明るいどころかお先真っ暗」などの批判が噴出しました。国民の多くは賃上げ実感がありません。これが現実です。
財界とのお手盛り「官製春闘」では、国民が実感できる賃上げは期待できません。日本が、賃金が上がらない国になったのは、財界・大企業が徹底した賃金抑制政策をとり、自民党政府が全面的な応援政治をとってきたことにあります。



奥田碩経団連会長(当時)。トヨタ自動車会長として賃金抑制を先導=2004年11月15日、東京・帝国ホテル

内部留保は更新
象徴的な例をあげます。
2002年に当時の経団連と日経連が統合して日本経団連が発足し、トヨタ自動車の奥田碩(おくだ・ひろし)会長が初代会長に就任しました。この新組織が真っ先に唱えたのが、国際競争力の強化のために「ベースアップは論外」「定期昇給の凍結・見直しも」という賃金抑え込み方針でした(「03年版経営労働政策委員会報告」)。
年明けすぐに衝撃が走りました。トヨタ自動車の労働組合がベースアップ要求の見送りを表明したのです。トヨタ自動車は、02年に日本企業で初めて1兆円を超える経常利益を記録したばかりでした。史上最高の大もうけを達成した世界のトップ企業がベアゼロに。これで春闘が一気に冷え込みました。
どれほど利益がふえても賃金には回さない。利益は内部留保にという「賃金が上がらない国日本」の構図がここでつくられたといえます。ちなみにトヨタ自動車は、5月8日に発表した3月期決算で営業利益が5兆円、内部留保(利益剰余金)が32兆円超と最高益を更新し続けています。
自民党政府は、財界の要求に応えて、派遣労働の自由化、有期雇用拡大など労働法制の規制緩和政策を次々に強行しました。こうして日本は賃金が上がらない国になってしまいました。(つづく)(5回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月4日付掲載


岸田首相の発言にたいして、国民からX(旧ツイッター)で「明るい兆し?どこの話?」「明るいどころかお先真っ暗」などの批判が噴出。国民の多くは賃上げ実感がありません。これが現実。
2002年に当時の経団連と日経連が統合して日本経団連が発足し、トヨタ自動車の奥田碩(おくだ・ひろし)会長が初代会長に就任。この新組織が真っ先に唱えたのが、国際競争力の強化のために「ベースアップは論外」「定期昇給の凍結・見直しも」という賃金抑え込み方針。
トヨタ自動車は、02年に日本企業で初めて1兆円を超える経常利益を記録したばかり。史上最高の大もうけを達成した世界のトップ企業がベアゼロに。これで春闘が一気に冷え込みました。
どれほど利益がふえても賃金には回さない。利益は内部留保にという「賃金が上がらない国日本」の構図がここでつくられたと。

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