政権追い詰めた市民と共産党 通常国会150日① 岸田大軍拡の本質暴く
通常国会が21日に閉会しました。岸田政権は敵基地攻撃能力の保有や軍事費2倍化、原発回帰など日本政治の大転換を次々と打ち出しました。しかし、まともな説明をせずに、こまかしと数の力で数々の悪法を強行しても、国民の不安や反対の声は広がるばかりです。岸田政権を追い詰める市民と日本共産党の論戦を振り返ります。
「5年間で43兆円の防衛予算確保や、防衛産業の基盤を強化する法案も今国会で成立した」―。岸田文雄首相は21日の国会閉会後の会見で、軍拡推進を「成果」として誇りました。
安全保障をめぐっては与野党ともに「防衛力強化は必要」と声をそろえる中、「専守防衛に徹する」「日本を守るため」という「二つのウソ」を根本から暴き、岸田政権の大軍拡と正面からたたかったのは日本共産党だけでした。
危険性正面から
「安保8文書は『専守防衛』という戦後の歴代政権が掲げてきた安全保障政策を根底から覆す」―。日本共産党の志位和夫委員長は1月31日の衆院予算委員会で、安保3文書の違憲性と危険性を正面から追及しました。
志位氏は、敵基地攻撃能力が米国の先制攻撃戦略「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」のもとで、米軍と自衛隊が融合し、海外での先制攻撃戦争で行使されることを米軍の資料を示して暴露。「専守防衛」について、1972年に田中角栄首相(当時)の「防衛上の必要からも相手基地を攻撃することなく」との答弁を示し、「敵基地攻撃と両立しないのは明らかだ」と迫るも、岸田首相はまともに答えられませんでした。
敵基地攻撃を行えば日本全土が戦場になる危険を示し、全国に衝撃を与えたのが、小池晃書記局長の追及です(3月2日の参院予算委員会)。小池氏は、全国283地区の自衛隊基地を「強靱化」する防衛省の計画を告発。「日本中に戦火を広げ、国民の命を危険にさらす」と批判しました。
質問する志位和夫委員長=1月31日、衆院予算委
国民世論後押し
岸田政権の大軍拡は、日本防衛に関係なく、米国の先制攻撃戦略に沿ったもので、日本全土の戦場化を想定している。日本共産党の論戦はその本質を浮き彫りにし、軍拡に反対する国民運動、国民世論を後押ししました。
市民にひた隠しにし、日米合意ありきで南西諸島の軍事要塞化を進める政府の強権的な姿勢も追及してきました。
岸田首相は敵墓地攻撃可能な長射程ミサイルの配備について「配備先は決まっていない」と繰り返しています。しかし、赤嶺政賢議員は2月8日の衆院予算委で、南西諸島への長射程ミサイル配備や軍事費の国内総生産(GDP)比2%への引き上げも米国が要求してきた経緯に触れ、「本気で受け取る人はいない」と強調。沖縄にミサイルを配備する際に政府は「防衛上の空白を埋めるため」と説明してきたにもかかわらず、敵基地攻撃可能なミサイル配備を狙っているとして、「まともに説明もせず、県民を愚弄するやり方だ」と厳しく批判しました。
「ミサイル配備に反対し、沖縄が二度と戦場にならないよう力をあわせよう」と声をあげる集会参加者=3月21日、沖縄県うるま市
財源破綻 「死の商人」の道
岸田政権は5年間で国内総生産(GDP)比2%、43兆円という軍拡目標は「数字ありきだ」と批判されてきましたが、国会審議で結局「2%」の根拠を示せませんでした。なぜなら米国が求めた「GDP比2%」の軍拡要求に応えるのが目的だからです。
米国製兵器を爆買いする「有償軍事援助(FMS)」の2023年度の契約ベース額は前年度の4倍に急増。購入している兵器も、米軍が「時代遅れ」として退役を決めた無人偵察機グローバルホークなど「無駄遣いになる」と指摘されるものが多数あり、参考人質疑でも「見直すべきは防衛予算の中身で総額を大ざっぱに2倍にすべきでない」(防衛ジャーナリストの半田滋氏)など批判が上がっています。
岸田政権は大軍拡予算を捻出するため「防衛力強化資金」を創設はする軍拡財源法を成立させました。
しかし、審議を通じて明らかになったのは、医療や年金、震災復興などの資金を軍事費に流用したり、赤字国債を軍事費に回して将来世代に負担を押し付けたりするなど“禁じ手”を重ねても恒久財源が確保できず、岸田大軍拡は初めから大破綻していることです。
被災地から批判
軍拡財源に東日本大震災の復興特別所得税を充てることについて被災地から批判が相次いでいます。
「被災者の願いと真っ向から反する」。福島市で開かれた参院財政金融委員会の地方公聴会(6月12日)で、いわき市民訴訟原告団長の伊東達也氏は厳しく批判しました。14日の衆院財務金融委員会の意見聴取会でも、福島駅前で市民が「復興税を軍拡に使うな」「福島切り捨て許さない」と抗議。しかし、日本共産党の田村貴昭議員が「被災地の声をどう受け止めるか」とただすも、鈴木俊一財務相は「理解を得る努力をする」(4月26日の衆院財務金融委員会)と述べるのみでした。
年度中に使いきれずに余った決算剰余金を軍拡財源に活用することにも批判が集中。4月21日の参考人質疑で金子勝慶応大名誉教授は、決算剰余金の元になった巨額の予備費の原資は赤字国債で、間接的に赤字国債を軍事費に回す「国債マネーロンダリングだ」と批判。田村氏は5月23日の衆院本会議で、「軍拡財源のための国債発行は『未来世代に対する責任として取り得ない』と述べたのは岸田首相自身だ。結局、未来世代に増税を押し付けるのは明らかだ」と強調しました。
安保3文書を具体化する軍需産業支援法をめぐっては、審議を通じ「軍需産業を成長産業に」というゆがんだ発想に基づき、「平和国家」日本を「死の商人国家」に変貌させることが鮮明になりました。
赤嶺政賢議員は、国が採算のとれない軍事企業を丸抱えし、武器輸出への助成も進める法律で「究極の軍事企業支援策」だと喝破。契約企業の従業員に守秘義務を課し、刑事罰の対象にすることについて、情報漏えいは30年間で1件のみで立法事実がないことを明らかにしました。(4月27日の衆院安全保障委員会)
参考人から同法によって軍需産業と防衛省で癒着が生じ、「不祥事のリスクがある」との指摘が上がる中、山添拓議員は構造的な癒着を排除する規定がないことを明らかにし、「汚職や腐敗の危険は高まる」と批判しました。(6月1日の参院外交防衛委員会)
武器輸出拡大に向けた動きは着々と進んでいます。自民、公明両党は21日に殺傷武器の輸出を解禁するため「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しに向け、本格的な論点整理を開始。共同開発品の第三国への移転や、F15戦闘機のエンジンのインドネシアへの提供を可能にすることなどを議論していきます。殺傷武器を輸出すれば紛争を助長する恐れがあり、国際社会から日本は「死の商人国家」とみなされることは避けられません。
呉江浩中国大使(右)と会談する志位和夫委員長=5月4日、東京都内の中国大使館
共産党「平和の対案」に反響
平和の共同体を
岸田首相は21日の国会閉会後の会見で「ウクライナは明日の東アジアだ」と改めて述べ、大軍拡を正当化しました。一方、日本共産党は、「平和の対案」を発展させ、具体的に働きかけてきました。
志位氏は、3月30日に日中関係を前向きに打開するための提言を発表し、岸田首相、呉江浩駐日中国大使に申し入れ、両国から肯定的な受け止めが寄せられました。
提言は①「互いに脅威とならない」との合意(08年の首脳会談の共同声明)②尖閣諸島など東シナ海の緊張を「対話と協議」で解決するとの合意(14年)③東南アジア諸国連合(ASEAN)インド太平洋構想(AOIP)に対する賛意1という日中間の三つの合意を土台に外交努力するよう提起しています。
米国に従属して軍事的対立をあおるのではなく、アジアで平和の共同体を構築する外交こそ求められています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年6月23日付掲載
「専守防衛に徹する」「日本を守るため」という「二つのウソ」を根本から暴き、岸田政権の大軍拡と正面からたたかったのは日本共産党だけ。
米国製兵器を爆買いする「有償軍事援助(FMS)」の2023年度の契約ベース額は前年度の4倍に急増。購入している兵器も、米軍が「時代遅れ」として退役を決めた無人偵察機グローバルホークなど「無駄遣いになる」と指摘。
金子勝慶応大名誉教授は、決算剰余金の元になった巨額の予備費の原資は赤字国債で、間接的に赤字国債を軍事費に回す「国債マネーロンダリングだ」と批判。
志位氏は、3月30日に日中関係を前向きに打開するための提言を発表し、岸田首相、呉江浩駐日中国大使に申し入れ、両国から肯定的な受け止めが。
通常国会が21日に閉会しました。岸田政権は敵基地攻撃能力の保有や軍事費2倍化、原発回帰など日本政治の大転換を次々と打ち出しました。しかし、まともな説明をせずに、こまかしと数の力で数々の悪法を強行しても、国民の不安や反対の声は広がるばかりです。岸田政権を追い詰める市民と日本共産党の論戦を振り返ります。
「5年間で43兆円の防衛予算確保や、防衛産業の基盤を強化する法案も今国会で成立した」―。岸田文雄首相は21日の国会閉会後の会見で、軍拡推進を「成果」として誇りました。
安全保障をめぐっては与野党ともに「防衛力強化は必要」と声をそろえる中、「専守防衛に徹する」「日本を守るため」という「二つのウソ」を根本から暴き、岸田政権の大軍拡と正面からたたかったのは日本共産党だけでした。
危険性正面から
「安保8文書は『専守防衛』という戦後の歴代政権が掲げてきた安全保障政策を根底から覆す」―。日本共産党の志位和夫委員長は1月31日の衆院予算委員会で、安保3文書の違憲性と危険性を正面から追及しました。
志位氏は、敵基地攻撃能力が米国の先制攻撃戦略「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」のもとで、米軍と自衛隊が融合し、海外での先制攻撃戦争で行使されることを米軍の資料を示して暴露。「専守防衛」について、1972年に田中角栄首相(当時)の「防衛上の必要からも相手基地を攻撃することなく」との答弁を示し、「敵基地攻撃と両立しないのは明らかだ」と迫るも、岸田首相はまともに答えられませんでした。
敵基地攻撃を行えば日本全土が戦場になる危険を示し、全国に衝撃を与えたのが、小池晃書記局長の追及です(3月2日の参院予算委員会)。小池氏は、全国283地区の自衛隊基地を「強靱化」する防衛省の計画を告発。「日本中に戦火を広げ、国民の命を危険にさらす」と批判しました。
質問する志位和夫委員長=1月31日、衆院予算委
国民世論後押し
岸田政権の大軍拡は、日本防衛に関係なく、米国の先制攻撃戦略に沿ったもので、日本全土の戦場化を想定している。日本共産党の論戦はその本質を浮き彫りにし、軍拡に反対する国民運動、国民世論を後押ししました。
市民にひた隠しにし、日米合意ありきで南西諸島の軍事要塞化を進める政府の強権的な姿勢も追及してきました。
岸田首相は敵墓地攻撃可能な長射程ミサイルの配備について「配備先は決まっていない」と繰り返しています。しかし、赤嶺政賢議員は2月8日の衆院予算委で、南西諸島への長射程ミサイル配備や軍事費の国内総生産(GDP)比2%への引き上げも米国が要求してきた経緯に触れ、「本気で受け取る人はいない」と強調。沖縄にミサイルを配備する際に政府は「防衛上の空白を埋めるため」と説明してきたにもかかわらず、敵基地攻撃可能なミサイル配備を狙っているとして、「まともに説明もせず、県民を愚弄するやり方だ」と厳しく批判しました。
「ミサイル配備に反対し、沖縄が二度と戦場にならないよう力をあわせよう」と声をあげる集会参加者=3月21日、沖縄県うるま市
財源破綻 「死の商人」の道
岸田政権は5年間で国内総生産(GDP)比2%、43兆円という軍拡目標は「数字ありきだ」と批判されてきましたが、国会審議で結局「2%」の根拠を示せませんでした。なぜなら米国が求めた「GDP比2%」の軍拡要求に応えるのが目的だからです。
米国製兵器を爆買いする「有償軍事援助(FMS)」の2023年度の契約ベース額は前年度の4倍に急増。購入している兵器も、米軍が「時代遅れ」として退役を決めた無人偵察機グローバルホークなど「無駄遣いになる」と指摘されるものが多数あり、参考人質疑でも「見直すべきは防衛予算の中身で総額を大ざっぱに2倍にすべきでない」(防衛ジャーナリストの半田滋氏)など批判が上がっています。
岸田政権は大軍拡予算を捻出するため「防衛力強化資金」を創設はする軍拡財源法を成立させました。
しかし、審議を通じて明らかになったのは、医療や年金、震災復興などの資金を軍事費に流用したり、赤字国債を軍事費に回して将来世代に負担を押し付けたりするなど“禁じ手”を重ねても恒久財源が確保できず、岸田大軍拡は初めから大破綻していることです。
被災地から批判
軍拡財源に東日本大震災の復興特別所得税を充てることについて被災地から批判が相次いでいます。
「被災者の願いと真っ向から反する」。福島市で開かれた参院財政金融委員会の地方公聴会(6月12日)で、いわき市民訴訟原告団長の伊東達也氏は厳しく批判しました。14日の衆院財務金融委員会の意見聴取会でも、福島駅前で市民が「復興税を軍拡に使うな」「福島切り捨て許さない」と抗議。しかし、日本共産党の田村貴昭議員が「被災地の声をどう受け止めるか」とただすも、鈴木俊一財務相は「理解を得る努力をする」(4月26日の衆院財務金融委員会)と述べるのみでした。
年度中に使いきれずに余った決算剰余金を軍拡財源に活用することにも批判が集中。4月21日の参考人質疑で金子勝慶応大名誉教授は、決算剰余金の元になった巨額の予備費の原資は赤字国債で、間接的に赤字国債を軍事費に回す「国債マネーロンダリングだ」と批判。田村氏は5月23日の衆院本会議で、「軍拡財源のための国債発行は『未来世代に対する責任として取り得ない』と述べたのは岸田首相自身だ。結局、未来世代に増税を押し付けるのは明らかだ」と強調しました。
安保3文書を具体化する軍需産業支援法をめぐっては、審議を通じ「軍需産業を成長産業に」というゆがんだ発想に基づき、「平和国家」日本を「死の商人国家」に変貌させることが鮮明になりました。
赤嶺政賢議員は、国が採算のとれない軍事企業を丸抱えし、武器輸出への助成も進める法律で「究極の軍事企業支援策」だと喝破。契約企業の従業員に守秘義務を課し、刑事罰の対象にすることについて、情報漏えいは30年間で1件のみで立法事実がないことを明らかにしました。(4月27日の衆院安全保障委員会)
参考人から同法によって軍需産業と防衛省で癒着が生じ、「不祥事のリスクがある」との指摘が上がる中、山添拓議員は構造的な癒着を排除する規定がないことを明らかにし、「汚職や腐敗の危険は高まる」と批判しました。(6月1日の参院外交防衛委員会)
武器輸出拡大に向けた動きは着々と進んでいます。自民、公明両党は21日に殺傷武器の輸出を解禁するため「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しに向け、本格的な論点整理を開始。共同開発品の第三国への移転や、F15戦闘機のエンジンのインドネシアへの提供を可能にすることなどを議論していきます。殺傷武器を輸出すれば紛争を助長する恐れがあり、国際社会から日本は「死の商人国家」とみなされることは避けられません。
呉江浩中国大使(右)と会談する志位和夫委員長=5月4日、東京都内の中国大使館
共産党「平和の対案」に反響
平和の共同体を
岸田首相は21日の国会閉会後の会見で「ウクライナは明日の東アジアだ」と改めて述べ、大軍拡を正当化しました。一方、日本共産党は、「平和の対案」を発展させ、具体的に働きかけてきました。
志位氏は、3月30日に日中関係を前向きに打開するための提言を発表し、岸田首相、呉江浩駐日中国大使に申し入れ、両国から肯定的な受け止めが寄せられました。
提言は①「互いに脅威とならない」との合意(08年の首脳会談の共同声明)②尖閣諸島など東シナ海の緊張を「対話と協議」で解決するとの合意(14年)③東南アジア諸国連合(ASEAN)インド太平洋構想(AOIP)に対する賛意1という日中間の三つの合意を土台に外交努力するよう提起しています。
米国に従属して軍事的対立をあおるのではなく、アジアで平和の共同体を構築する外交こそ求められています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年6月23日付掲載
「専守防衛に徹する」「日本を守るため」という「二つのウソ」を根本から暴き、岸田政権の大軍拡と正面からたたかったのは日本共産党だけ。
米国製兵器を爆買いする「有償軍事援助(FMS)」の2023年度の契約ベース額は前年度の4倍に急増。購入している兵器も、米軍が「時代遅れ」として退役を決めた無人偵察機グローバルホークなど「無駄遣いになる」と指摘。
金子勝慶応大名誉教授は、決算剰余金の元になった巨額の予備費の原資は赤字国債で、間接的に赤字国債を軍事費に回す「国債マネーロンダリングだ」と批判。
志位氏は、3月30日に日中関係を前向きに打開するための提言を発表し、岸田首相、呉江浩駐日中国大使に申し入れ、両国から肯定的な受け止めが。
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