きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

写真は語る① 「真」の姿を写す

2021-05-20 07:20:59 | 赤旗記事特集
写真は語る① 「真」の姿を写す
大藪順子(のぶこ)

写真は撮る人の視点だけでなく思いも映し出す。
アメリカの新聞社で専属フォトジャーナリストをしていた時、富める人、貧しい人、人種や文化の違う人と出会う中で、彼らをどのように写すか常に注意が必要だった。なぜなら、私の中の偏見や先入観が写真に写り込んでしまったら、写っている事柄がニュースではなくオピニオンになってしまうからだ。
ビジュアル情報、特に報道写真が、社会に存在するステレオタイプを助長するのは間違っている。いや、そもそも偏見や先入観は、写真や映像を通して作られてきた。歴史の中で幾度となく、意識や思想を誘導する手段として、ビジュアルはプロパガンダに使われてきたのだ。
多様性が叫ばれる今は特に、ビジュアル情報に携わる者には、もっと自分の勝手な思い込みと発信するイメージとに向き合う必要がある。



「二つの視点」大藪順子作 ©2020Nobuko Oyabu All Rights Reserved

写真には、近年別の問題も生まれている。
スマホアプリの開発が進み、手元で写真を簡単に編集できるようになった今、目にするイメージ全てが実際に存在する風景であると思っていては、騙される時代になった。何が本当かを見極めるためには、実際にその場に出向いて自分の目で確認するしかない時代ともいえる。
写真の「真(の姿)を写す」という「真」の意味が薄れていくのは、なんだか皮肉である。
そんな時代の今、どのように撮れば「真を写した」イメージとなり、「真」を伝える写真を取り戻すことができるのか。
それに対する一取り組みとして私が始めた二つの写真プロジェクトについて、この連載で紹介したい。これらのプロジェクトでは、写真家の私が撮るのではなく、撮られる側になりがちな人たちがカメラを持ち、当事者の世界とそこに反映される思いを内側から写し出す。それらの写真は見る人たちに、別の視点からの「真」なる物事について語ってくれる。
(フォトジャーナリスト、コラムニスト)(金曜掲載)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月2日付掲載


以前は、「写真」は真実を写すから「写真」と言われてきた。
しかし、写真編集ソフトで簡単に編集できる時代。今目の前にある写真が「真実」とは言えない。
また、どのように意図して撮るかが問われてくるという。
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まやかしの住宅セーフティネット 登録住宅の85%が大東建託住宅

2021-05-18 07:11:19 | 政治・社会問題について
まやかしの住宅セーフティネット 登録住宅の85%が大東建託住宅
全国の専用住宅空家0.9% 大東建託の専用住宅0戸


3月に閣議決定された「住生活基本計画」では、住生活をめぐる現状の課題に対応するために、8つの目標設定し、目標5では「住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティ機能を整備」として、基本的な施策として公営住宅の計画的な建て替えとともに、「緊急的な状況にも対応できるセーフティネット登録住宅の活用を推進。地方公共団体のニーズに応じた家賃低廉化の推進」が盛り込まれました。
平山神戸大学大学院教授は国交省の登録住宅のインターネットに掲載されている「セーフティネット住宅情報システム」から、住宅セーフティネット登録住宅の実態について分析し、日本住宅会議会報2021年111号に発表しました。

要配慮者を拒ばまない住宅
登録住宅には要配慮者のみを対象とする「専用住宅」と、要配慮者を拒まず、同時にそれ以外の一般世帯をも受け入れる「一般住宅」があり、家主は受け入れ可能な要配慮者として、高齢者、子育て世帯のみと範囲を限定することができる。専用住宅に登録すると、国や自治体から改修費の補助や家賃低廉化補助(家主に対して)が受けられる。改修費は国費限度額が50万円(一戸)、国3分の1、地方3分の1の補助(限度額50万円)が受けられる。国の改修費補助を受ける場合には、公営住宅に準じた家賃額以下であるとされています。家賃低廉化補助は国2分の1地方2分の1で最高4万円まで補助があり、低廉化前の家賃は近傍同種家賃と均衡をした家賃とされ、10年間は支援の継続が求められています。その他床面積等の基準があります。


(表1)21年2月(5日)時点での「登録住宅」の住宅種別内訳
 登録住宅計大東建託住宅ビレッジハウスその他の住宅直近の登録住宅
1.愛知県55,81454,431(97.5)281(0.5)1,102(2.0)55,849
2.千葉県30,19029,678(98.3)399(1.3)113(0.4)33,915
3.大阪府25,89817,802(68.7)4,256(16.4)3,840(14.8)32,294
4.兵庫県21,41320,161(94.1)1,044(4.9)208(1.0)23,019
5.東京都10,6597,711(72.3)563(5.3)2,385(22.4)31,196
6.宮城県10,2218,979(87.8)1,107(10.9)135(1.3)10,337
7.埼玉県9,3978,238(87.6)720(7.7)439(4.7)41,402
8.福島県8,6227,730(89.6)835(9.7)57(0.7)8,643
9.静岡県7,6776,741(87.8)833(10.8)103(1,4)29,001
10.岩手県7,3456,916(94.1)416(5.7)13(0.2)7,391
11,京都府5,8635,830(99.4)033(0.6)5,912
12.熊本県5,8295,336(91.5)430(7.4)63(1.1)13,846
13.茨城県4,7224,047(85.7)640(13,6)35(0.7)5,067
全国217,308184,139(84.7)21,185(9.8)11,984(5.5)322,840
出所:SN住宅情報提供システム(その他住宅は民間賃貸家主の登録住宅で、大東建託、ビレッジハウス以外の住宅)

(表2)「緊急状況に対応」可能な「専用住宅の空室」は、登録住宅の1%未満。「一般住宅の空室」も4%程度
 専用住宅の空室数棟・戸数%一般住宅の空室数棟・戸数%登録住宅の総戸数%
1.愛知県13棟・74戸(0.1)460棟・687戸(1.2)55,849戸(100)
2.千葉県9棟・16戸(0.04)126棟・181戸(0.5)33,915戸(100)
3.大阪府51棟・1,956戸(6.1)407棟・3,567戸(11.0)32,294戸(100)
4.兵庫県6棟・8戸(0.03)265棟・405戸(1.8)23,019戸(100)
5.東京都38棟・318戸(1.0)234棟・1,525戸(4.9)31,196戸(100)
6.宮城県7棟・38戸(0.4)202棟・417戸(4.0)10,337戸(100)
7.埼玉県11棟・14戸(0.03)167棟・344戸(0.8)41,402戸(100)
8.福島県2棟・7戸(0.08)174棟・733戸(8.5)8,643戸(100)
9.静岡県3棟・3戸(0.0)362棟・510戸(1.8)29,001戸(100)
10.岩手県4棟・14戸(0.2)63棟・225戸(3,0)7,391戸(100)
11.京都府1棟・5戸(0.08)43棟・52戸(0.9)5,912戸(100)
12.熊本県1棟・4戸(0.03)350棟・805戸(5.8)13,846戸(100)
13.茨城県066棟・115戸(2.3)5,067戸(100)
全国250棟・2,819戸 0.9%3,690棟・12,417戸 3.8%322,840戸(100)
〔表1の専用住宅と一般住宅の内訳〕
【大東建託住宅】専用住宅 0 一般住宅184,139戸(100%)
【ビレッジハウス】専用住宅 159戸(0.8%) 一般住宅21,026戸(99.2%)
【その他住宅】一般家主等 専用住宅 3,951戸(33.0%) 一般住宅8,033戸(67.0%)
なお、空室住戸数は大東建託住宅3,778戸(2.1%) ビレッジハウス1,989戸(9.4%) その他住宅1,549戸(12,9%)
出所:SN住宅情報提供システム


大東建託住宅の98%入居中
しかし、表1のように登録住宅21万7308戸(2月5日現在)の実に85%は大東建託の物件で、ビレッジハウスが9・8%を占めています。
大東建託は土地所有者にアパートを建てさせ、それを借り上げて転貸するサブリースビジネスを展開する会社です。昨年まで低迷していた登録住宅が大東建託の物件の大量登録で国の目標を一気に超過達成しています。さらに問題なのは、表2のように大東建託の物件は98%が入居中の物件で、専用住宅は0件です。要配慮者が入居可能な物件は、全国で2819戸と僅か0・9%しかありません。これで、果たして登録住宅の活用ができるのか甚だ問題です。

「全国借地借家人新聞」2021年5月15日付掲載


国の「住生活基本計画」で、基本的な施策として公営住宅の計画的な建て替えとともに、「緊急的な状況にも対応できるセーフティネット登録住宅の活用を推進。地方公共団体のニーズに応じた家賃低廉化の推進」。
しかし、その登録住宅の実態は、85%が大東建託の物件。しかも98%が入居中で、とても「緊急的な状況にも対応できるセーフティネット登録住宅」に活用できるものではありません。
国や地方自治体の税金は投入されている制度で、はなはだ疑問です。
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AI規制 EU案の光と影④ 個人情報保護法強化を

2021-05-17 07:24:22 | 経済・産業・中小企業対策など
AI規制 EU案の光と影④ 個人情報保護法強化を
情報産業研究者 高野嘉史さんに聞く

欧州連合(EU)欧州委員会の人工知能(AI)規制案をみると、本規制案は有用であり、日本でも人権を守る厳格な仕組みとして早期の導入を図る必要があると考えられます。他方で、日本での導入を検討するに当たっては、EU規制案の影の部分も見過ごすことはできません。



EUのAI規制について説明するマルグレーテ・ベスタガー欧州委員会副委員長(左)とティエリー・ブルトン欧州委員=4月21日、ブリュッセル(ロイター)

乱用の可能性
第1に、顔認証などの生体認証技術は、公共空間における警察などによる法執行目的での利用は「原則禁止」されますが、原則としてというところが問題です。「特定かつ実質的な緊急の人命に対する脅威、またはテロリストによる攻撃への対処」、「犯罪者、犯罪容疑者の発見、現在地の把握、同定、または起訴」のためには、有効な法的根拠と適切な監督の下で例外的に使用が認められることになっています。具体的な運用次第では大変危険なものになります。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、私権を制限して個人の行動追跡を可能にしようとする動きまである現状では、警戒が必要です。いったん拡大した利用方法は乱用される可能性があります。中立の第三者機関による監視が重要です。
第2に、教育・職業訓練の分野、採用や業績管理などの労働者管理の分野、公的な分野へのAIシステムの導入では基本的な人権の侵害が危惧されます。いくら利用者に対する透明性の確保と情報の提供が義務づけられても、求職者、労働者や生活保護の申請者は弱い立場に置かれます。同調圧力の働く日本社会では企業・自治体などの説明を一方的に受け入れざるを得ないケースが多いのではないでしょうか。AIシステムを適用される側の弱者を保護する仕組みが不可欠です。
第3に、移民・難民・国境管理のためのAIシステムの使用にも問題があります。日本では出入国管理における人権侵害事例がしばしば表面化しており、慎重な取り扱いが求められます。
第4に、革新的なAIシステムの開発を促進するために、規制のサンドボックス(実証制度)を設け、AIシステムの試験、実証的な評価を行うことができるとしています。これ自体は必要なことだと考えられますが、日本では「生産性向上特別規制法」のように規制のサンドボックスがさまざまな分野の規制を実質的に骨抜きにするために使われることがあります。骨抜きが行われないよう、規制のサンドボックスの適用には第三者機関による承認制度など監視の仕組みを入れることが必要です。
第5に、EUの競争力強化の下心がみえることです。規制導入の目的の一つにもAIへの投資と技術革新を促進し、EU統合市場を発展させることがうたわれています。EU各国の企業がいち早く規制案に対応する一方、規制への対応が遅れる日本企業が競争上不利になることも考えられます。経営資源の貧弱な中小企業が実質的にEU市場から締め出されることにもなりかねません。AIの分野では新興企業の事業展開も重要です。中小企業に対する政府の支援が求められます。
EU域外からEU向けにAI製品・サービスを提供する企業は、EU域内に文書で委任した権限を持つ代理人の任命を義務づけられていることも注目されます。この手続きが日本企業にとって過重な負担とならないような配慮が求められます。

制度化早急に
極めて重要なのは個人情報保護法の強化です。日本の個人情報保護法には、機械のみによるプロファイリングの禁止や「忘れられる権利」など、EUにあるような規定がありません。AIの利用拡大に伴って個人情報の取り扱いが増大することは目にみえており、個人情報保護法の改正による保護の強化が不可欠です。
日本でも、EUの規制案の影の部分にも着目したAIシステム規制を早急に制度化することが求められます。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月15日付掲載


顔認証などの生体認証技術は、公共空間における警察などによる法執行目的での利用は「原則禁止」されますが、原則としてというところが問題。「特定かつ実質的な緊急の人命に対する脅威、またはテロリストによる攻撃への対処」、「犯罪者、犯罪容疑者の発見、現在地の把握、同定、または起訴」のためには、有効な法的根拠と適切な監督の下で例外的に使用が認められることに。
極めて重要なのは個人情報保護法の強化です。日本の個人情報保護法には、機械のみによるプロファイリングの禁止や「忘れられる権利」など、EUにあるような規定がない。
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AI規制 EU案の光と影③ 違反に制裁金40億円

2021-05-16 07:08:55 | 経済・産業・中小企業対策など
AI規制 EU案の光と影③ 違反に制裁金40億円
情報産業研究者 高野嘉史さんに聞く

欧州連合(EU)欧州委員会の人工知能(AI)規制案では一応、「高リスク」のAIシステムを公共機関・企業などが導入するに当たっては、AIの使用前、使用後に以下のような事項が義務づけられます。
①本規制への適合性の確保②AIシステムのリスクを管理するためのシステムの整備③AIシステムを習熟させるために使用されるデータセット(標本の集合)の一定の品質の確保④技術的な仕様書の事前整備⑤AIシステムの自動的な運用記録(ログ)⑥利用者に対する透明性の確保と情報の提供⑦AIシステム使用中の人手による監視⑧正確性、堅牢(けんろう)性、サイバーセキュリティーの確保―です。



AIを使って学生の内定辞退率を推定し販売していたリクルートキャリア社のウェブページ

透明性が重要
この中では、特に透明性の確保と情報の提供が重要です。日本で利用されているAIシステムの中には、AIシステムを利用していること自体が明らかにされていないものがあるからです。また、AIシステムを利用していると明示されていても、どのような要素を用いて、どのように分析し、どのような判断が下されているのかが、対象者に明示されないことが多いからです。
ただ単に「AIを利用して分析した結果です」といわれても、にわかには納得できないと感じる人が多いのではないでしょうか。
EUの規制案ではまた、「高リスク」AIシステムの利用に当たって一般国民が認識できるようデータベースへの登録が求められ、登録簿は一般に公開されます。
3番目の「限定的なリスク」には、深刻な危険のないAIシステムが分類されます。AI技術を用いたチャットボット(文字や音声を通じて会話を自動的に行うプログラム)などが含まれます。これに対しては特別の規制はありませんが、行動規範の採用が奨励されます。また、企業などが消費者からの問い合わせへの回答などにAIを使っている場合、人間ではなくAIが対応していることの明示が求められます。
4番目に、テレビゲームや迷惑メール防止機能など「最小限リスク」とみなす他の分野への利用には介入しない方針です。

規制機関設け
以上に述べた規制の実効性を確保するため、規則違反に対しては次のように制裁金が科されます。①禁止AIの使用=3千万ユーロ(約40億円)または年間全世界売上高の6%のいずれか高額の方②規制の義務違反=2千万ユーロまたは年間全世界売上高の4%のいずれか高額の方③虚偽の情報提供=1千万ユーロまたは年間全世界売上高の2%のいずれか高額の方④EU機関による違反=違反の種類に応じて最大50ユーロまたは25万ユーロ―です。一応、中小企業への適用に当たっては、過重な負担とならないよう配慮するとしています。
こうした詳細な規制を執行するために、EUレベルでは「欧州人工知能委員会」が設置され、加盟各国にも規制担当機関を設けることが求められます。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月14日付掲載


透明性の確保と情報の提供が重要です。AIシステムを利用していると明示されていても、どのような要素を用いて、どのように分析し、どのような判断が下されているのかが、対象者に明示されないことが多いからです。
ただ単に「AIを利用して分析した結果です」といわれても、にわかには納得できないと感じる人が多いのではないでしょうか。
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AI規制 EU案の光と影② 救急車派遣順位にも

2021-05-15 07:37:45 | 経済・産業・中小企業対策など
AI規制 EU案の光と影② 救急車派遣順位にも
情報産業研究者 高野嘉史さんに聞く

欧州連合(EU)欧州委員会が発表した人工知能(AI)規制案の構造をみてみましょう。(表)

規制案ではAIシステムを「機械学習、論理ベース・知識ベース、統計評価などの技術と手法を用いて開発されたソフトウェアであって、人間が定義した目的を達成するために、AIが相互に作用する環境に対して影響を与えるようなコンテンツ(情報の内容)、予測、提案及び決定を生成する」機能を持つものと定義しています。


EUのAI規制案の構造
規制の類型利用例規制内容
1.禁止・認知されない形でのサブリミナル技術の活用
・年齢、身体的、精神的障害の面での脆弱性の
利用
・行動や人格的特性に基づき、政府が個人の信
頼性などを格付けるスコアリング
・法執行を目的とする公共空間での生体認証
(顔認証)など
利用を禁止、ただし、法執行目的の場合には、裁判所の令状などがあれば使用可
2.高リスク・運輸など重要インフラ
・ロボットを使った手術支援
・企業の採用活動
・大部分の顔認証
第三者機関によって規制への適合性を事前に審査
3.限定的なリスク企業が消費者との対話に使うシステムなどAIを使用していることの情報開示
4.最小限のリスク1~3以外既存の法令を満たしていれば、追加の対応は不要


4類型に分類
これは一般的な理解に合致するものであるといってよいでしょう。そのうえで規制案はAーシステムをリスクの大きさに応じて4類型に分類しています。①受け入れられないリスク②高リスク③限定的なリスク④最小限リスク―です。
1番目に「受け入れられないリスク」として以下の四つのAIシステムの利用を禁止しています。
①人々に認知されない形でサブリミナル(潜在意識に働きかける)技術を用いて身体的・精神的な危害を与える可能性のあるもの②年齢や身体的・精神的障害の面での脆弱(ぜいじゃく)性を利用することによって身体的・精神的な危害を与えるか、その可能性のあるもの③公的な機関が社会的な行動や人格的な特性を分析することによって個人の「信頼性」を評価・分類(スコアリング)するもの④公的にアクセス可能な場所で法執行のために常時、遠隔型の生体認証システムを利用するもの―です。
ただしこれには、裁判所の令状、または独立の行政当局の事前承認を得た場合に限って、次のような例外が認められていることに留意する必要があります。▽行方不明の子どもなど犯罪被害に遭う可能性のある特定の個人に絞った捜索▽特定かつ実質的な緊急の人命に対する脅威、またはテロリストによる攻撃への対処▽犯罪者、犯罪容疑者の発見、現在地の把握、同定、または起訴―です。



Alが算出したスコアに基づいて金利などの参考値を示す、株式会社ジエイスコアの個人向け融資サービスのウェブページ

事前に規制も
2番目に、幅広いAIシステムの利用が「高リスク」と分類され、その利用には事前、事後の規制が課せられます。
①自然人の生体認証による監視とカテゴリー化(分類)②道路交通、水道・ガス、暖房、電気などの重要なインフラストラクチャー(社会的な基盤となる設備)の監視・運用③教育・職業訓練の参加者の決定、入学・入所試験での評価④採用に当たっての選考や昇進、雇用契約の終了、職務の割り当て、業績・行動の評価などの労働者管理⑤行政機関における公的扶助・サービスの申し込みや見直しの評価⑥自然人の信用評価と信用スコア(点数)の作成⑦消防車・救急車の派遣と優先順位の決定⑧法執行機関による犯罪・再犯のリスク評価、犯罪被害のリスク評価、ポリグラフ(生体現象監視装置)による感情状態の把握、犯罪行為の発見・操作・訴追のためのプロファイリング(人物像の推定)⑨移民・難民・国境管理のためのポリグラフによる感情状態の把握、セキュリティーリスク・違法移民・保健リスクなどの把握、旅券・ビザの有効性のチェックなど⑩司法や民主的プロセスの運営―です。
これら「高リスク」AIシステムの一覧を見ると、このような分野にまでAIが導入されているのかと、がくぜんとさせられます。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月13日付掲載


AIを使って、潜在意識に働きかける技術を用いて身体的・精神的な危害を与える可能性、社会的な行動や人格的な特性を分析することによって個人の「信頼性」を評価・分類(スコアリング)などは禁止。
消防車・救急車の派遣と優先順位の決定などは、利用には事前、事後の規制があるものの認められているとは。
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