デジタル広告 ルール整備へ 政府報告書から① 巨大ITが自社優遇
巨大IT(情報技術)企業がインターネットを通じて仲介するデジタル広告について規制強化を検討してきた政府の「デジタル市場競争会議」が最終報告をまとめました。急成長するデジタル広告の特性や課題などを整理し、ルール整備のあり方を提示しました。今後、関係省庁が具体的なルール整備を進めることになります。報告書の中身を見てみます。
(嘉藤敬佑)
テレビ超え増額
デジタル広告費は年々増加し、2019年に初めてテレビメディア広告費を抜きました。20年には年間2・2兆円にのぼり、国内全体の広告費の36%を占めています。20年の総広告費は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で前年比11・2%減の6兆1594億円だった一方、デジタル広告は20年も前年比5・9%増の成長を遂げました。
世界の広告費全体に占めるデジタル広告費の割合は、21年にも過半を占めるようになるとの予測があります。
デジタル広告の種類をみると、利用者の検索結果に応じて表示内容が選ばれる「検索連動型」が38・6%で最多です。個別のウェブサイト上に表示される「バナー広告」(32・6%)、ユーチューブなどの動画サイトで利用される「動画広告」(22・0%)と続きます。特に動画広告は前年比21・3%増の成長で、高い伸びが続いています。
報告書は、デジタル広告市場について「従来のアナログ的な広告市場の延長線上にあるものではない」と指摘しています。従来のテレビ広告や紙媒体とは異なる特性があるためです。個人事業者や中小企業などにも安価な広告機会が提供され、顧客への接触機会が容易になったとしています。また、検索などのインターネット上の無償サービスを、広告収入によって支える「インフラ」を担っていると強調しました。
しかしデジタル広告市場は、その特性とあいまって、さまざまな課題を抱えていることも指摘しています。
不正な水増しも
第1は、デジタル広告の場を提供するグーグルやフェイスブックといったプラットフォーム事業者の寡占化が進み、市場の設計や運用における影響力が強まっている問題です。
デジタル広告市場は、①自社商品などの広告を出す広告主②自社サイトなどの広告枠を広告主に販売するサイト運営業者③検索やSNSなどの無料サービスを通じて消費者に広告をみせるグーグルやヤフーなどの巨大IT企業―の3者からなります。このうち③の巨大IT企業は消費者のデータを独占的に蓄積しており、圧倒的に優位な立場にあります。
巨大IT企業が圧倒的に有利な状況のもと、▽広告掲載のルールや条件が一方的に変更される▽取引内容・条件が複雑で広告主とサイト運営業者がともに全体像をつかめない▽広告費が不正に水増し請求される―などの問題もあります。
また、広告枠の入札プロセスの中で落札者や落札価格の決め方を巨大ITに有利な仕組みにするなど、自社優遇が行われている問題もあります。
第2は、デジタル広告市場の質の問題です。市場の急速な成長の中で、関係者の間でも全体像の把握が困難になっています。報告書は、▽広告主にとって自社のブランドを穀損(きそん)しかねないサイトに広告が掲載される▽悪意のある者が広告収入を不正取得し、反社会的勢力に広告費が流出する―など深刻な問題もあるとしています。(つづく)
(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月25日付掲載
FasebookやTwitterに投稿すると、続いて自分の友達やフォロアーの投稿が表示される中に10件に1件ぐらい広告の投稿がある。
これはあまり目障りではない…。
YouTubeを再生する時、動画によって事前に広告が流れることがある。大抵は5秒ぐらい再生すると広告をスキップできるが、これが結構目障りだ。
広告を提供するサーバーを運営している巨大IT企業が圧倒的に有利な立場に。
巨大IT(情報技術)企業がインターネットを通じて仲介するデジタル広告について規制強化を検討してきた政府の「デジタル市場競争会議」が最終報告をまとめました。急成長するデジタル広告の特性や課題などを整理し、ルール整備のあり方を提示しました。今後、関係省庁が具体的なルール整備を進めることになります。報告書の中身を見てみます。
(嘉藤敬佑)
テレビ超え増額
デジタル広告費は年々増加し、2019年に初めてテレビメディア広告費を抜きました。20年には年間2・2兆円にのぼり、国内全体の広告費の36%を占めています。20年の総広告費は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で前年比11・2%減の6兆1594億円だった一方、デジタル広告は20年も前年比5・9%増の成長を遂げました。
世界の広告費全体に占めるデジタル広告費の割合は、21年にも過半を占めるようになるとの予測があります。
デジタル広告の種類をみると、利用者の検索結果に応じて表示内容が選ばれる「検索連動型」が38・6%で最多です。個別のウェブサイト上に表示される「バナー広告」(32・6%)、ユーチューブなどの動画サイトで利用される「動画広告」(22・0%)と続きます。特に動画広告は前年比21・3%増の成長で、高い伸びが続いています。
報告書は、デジタル広告市場について「従来のアナログ的な広告市場の延長線上にあるものではない」と指摘しています。従来のテレビ広告や紙媒体とは異なる特性があるためです。個人事業者や中小企業などにも安価な広告機会が提供され、顧客への接触機会が容易になったとしています。また、検索などのインターネット上の無償サービスを、広告収入によって支える「インフラ」を担っていると強調しました。
しかしデジタル広告市場は、その特性とあいまって、さまざまな課題を抱えていることも指摘しています。
不正な水増しも
第1は、デジタル広告の場を提供するグーグルやフェイスブックといったプラットフォーム事業者の寡占化が進み、市場の設計や運用における影響力が強まっている問題です。
デジタル広告市場は、①自社商品などの広告を出す広告主②自社サイトなどの広告枠を広告主に販売するサイト運営業者③検索やSNSなどの無料サービスを通じて消費者に広告をみせるグーグルやヤフーなどの巨大IT企業―の3者からなります。このうち③の巨大IT企業は消費者のデータを独占的に蓄積しており、圧倒的に優位な立場にあります。
巨大IT企業が圧倒的に有利な状況のもと、▽広告掲載のルールや条件が一方的に変更される▽取引内容・条件が複雑で広告主とサイト運営業者がともに全体像をつかめない▽広告費が不正に水増し請求される―などの問題もあります。
また、広告枠の入札プロセスの中で落札者や落札価格の決め方を巨大ITに有利な仕組みにするなど、自社優遇が行われている問題もあります。
第2は、デジタル広告市場の質の問題です。市場の急速な成長の中で、関係者の間でも全体像の把握が困難になっています。報告書は、▽広告主にとって自社のブランドを穀損(きそん)しかねないサイトに広告が掲載される▽悪意のある者が広告収入を不正取得し、反社会的勢力に広告費が流出する―など深刻な問題もあるとしています。(つづく)
(2回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月25日付掲載
FasebookやTwitterに投稿すると、続いて自分の友達やフォロアーの投稿が表示される中に10件に1件ぐらい広告の投稿がある。
これはあまり目障りではない…。
YouTubeを再生する時、動画によって事前に広告が流れることがある。大抵は5秒ぐらい再生すると広告をスキップできるが、これが結構目障りだ。
広告を提供するサーバーを運営している巨大IT企業が圧倒的に有利な立場に。