きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

米中対立激化と半導体産業① 国内生産強める米国

2021-05-26 07:07:33 | 国際政治
米中対立激化と半導体産業① 国内生産強める米国
桜美林大学教授 藤田実さんに聞く

4月に行われた菅義偉首相とバイデン米大統領の首脳会談で、米国は日本に対し、半導体などのサプライチェーン(部品供給網)の見直しを迫りました。半導体産業に詳しい桜美林大学の藤田実教授に文章を寄せてもらいました。

4月17日に行われた日米首脳会談の共同声明は「日米両国はまた、両国の安全及び繁栄に不可欠な重要技術を育成・保護しつつ、半導体を含む機微なサプライチェーンについても連携する」と明記。付属文書「日米競争力・強靱(きょうじん)性(コア)パートナーシップ」では、「半導体を含む機微なサプライチェーン及び重要技術の育成・保護に関し協力する」と具体化されています。付属文書では、量子コンピューターや人工知能(AI)、5G(第5世代通信規格)及びそれ以降の技術の研究開発など先端科学技術分野での連携、協力、投資がうたわれています。
日米首脳会談前から、アメリカはコロナ禍で鮮明になった世界的な半導体不足に危機感を表明し、国内生産を強化する必要性を強調しています。2月24日にバイデン大統領は、「半導体の国内生産を加速するために370億ドルの財源を確保する」という大統領令に署名しました。これは、韓国や中国、日本などを中心とした生産からアメリカ国内での生産を拡大したいとの思惑からきています。4月12日、バイデン大統領は自動車や半導体、IT(情報技術)など19社の幹部を集めたオンライン会議を開き、半導体不足への対策を協議しました。



米ワシントンのホワイトハウスで行われた日米首脳会談=4月17日(首相官邸ホームページから)

業界圧力
半導体の国内生産の促進をめざすアメリカ政府の政策展開には、半導体業界からの強い働きかけもあります。2月11日にアメリカ半導体工業会の代表やインテル、マイクロンなどの半導体企業がバイデン大統領に書簡を送り、半導体製造と研究への多額の資金投入を要請しています。その書簡で、半導体は米国経済、米国の技術リーダーシップ、および国家安全保障にとって重要であることを指摘しています。そして国内の半導体製造と研究への投資により、米国の経済成長、雇用、インフラストラクチャー(社会基盤)を促進することができるとともに、国家安全保障とサプライチェーンの回復力を強化することができるとしています。
しかし世界の半導体製造能力における米国のシェアは1990年の37%から今日では12%に減少しており、AI、5G/6G(第6世代通信規格)、量子コンピューティングなど、将来のテクノロジーの優越性をめぐる競争において、テクノロジーのリーダーシップが危険にさらされているとしています。
このように半導体メーカーなどの書簡は、アメリカの半導体製造能力が海外に流出していることで、アメリカの安全保障と技術的リーダーシップが危険にさらされているとして、政府による積極的支援を訴えています。
アメリカ国内での半導体産業の再構築を求める動きは、バイデン政権で始まったわけではありません。トランプ政権時代の20年6月、アメリカの超党派議員はアメリカ半導体産業の強化法を提案しました。それは「米半導体製造支援法(CHIPS)」と「米半導体ファウンドリ強化法(AFA)」といわれます。これらの二つの法案は半導体分野への補助金支給を求めるものですが、補助金支給は安全保障と対中国包囲を意識しています。すなわちCHIPSは国防総省など政府機関のプロジェクトを対象にし、AFAは国防総省と民間企業を対象にしていることから、安全保障を重視していることがわかります。さらにAFAは中国政府に関係する企業への資金提供を一切禁止するものとなっており、半導体産業の国内生産強化が対中包囲網の一環であることを示しています。

日米連携
こうした議会や半導体業界の訴えを受けて、バイデン大統領は半導体業界への巨額の財政支援を要請するとともに、日米で連携、協力して、半導体のサプライチェーンから中国を切り離そうとしているのです。昨年からのアメリカの動きをみると、半導体製造を国内に回帰させることで、研究・開発から製造まで一貫した能力を国内で保有し、AIや量子コンピューター、6Gなど将来技術でも競争力を確保することを意図しているといえます。そして日本の技術を日米同盟の枠内に閉じ込め、アメリカの競争力強化のために利用しようとしているのです。
(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月20日付掲載


コンピューターや電子機器のハードを支える半導体のシェア。意外とアメリカの競争力が落ちているのですね。
巻き返しを図るために日本を巻き込んで半導体業界への支援策をというこです。
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写真は語る⑤ 内なる声を見出す

2021-05-24 06:31:41 | 赤旗記事特集
写真は語る⑤ 内なる声を見出す
大藪順子(のぶこ)

私が代表を務める団体「Picture This Japan」は、報道で被写体になりがちな人たちが写す側になることで、自らの世界と思いを写真で表現する活動を行ってきた。当事者の視点で伝えることが何よりも社会を変える力になることを、実際に経験してきたからだ。
アメリカでまだ性暴力自体が軽視され、被害者が顔を出して実名で語ることがタブーだった2000年代初期、アメリカとカナダで約70人の性暴力被害者を取材撮影した。
このプロジェクトは、東はワシントンの政府ビルから西はハワイの刑務所まで全米で展覧会となった。写真に写る彼女彼らは、観る人をじっと見つめ返し、被害者という肩書の裏にいる一人の人として静かに語ってくれる。
なぜ多くの人が私に撮影許可をくれたのか。それは、1枚1枚の写真の裏に1~2年かけた関係作りがあったからだが、同時に私自身が当事者であるからこそ入っていけた世界なのだ。



「STAND Still」ワークショップでの作品 ©2020 Nobuko Oyabu All Rights Reserved 自由を奪われた被害者の思いを撮ったもの

2019年に新しく「STAND Still-性暴力サバイバービジュアルポイス」というプロジェクトを立ち上げた。ここでは、私が被害者を撮るのではなく、被害者自身がカメラの後ろに立つ。
初年度の参加者が運営委員会を築き、昨年も十数人が思いを写すことに取り組んだ。今年度も始まる準備が進んでいる。
被害体験を語るかどうか、作品を展示するか否かも本人が決める。心の安全を守るために「みんなで声を上げよう」という雰囲気は作らず、決定権を被害者自身に委ねることを徹底する。声を上げないのもその人の権利であり尊重されるべきだし、人それぞれ心の回復にかかる時間も形も違うのだ。
無意識に撮った写真の中に自分の在り方を見てはっとする時がある。写真は撮影者自身にも語りかける。そんな自己啓発を通して、参加者たちは自分の内なる声を見いだしていく。自分のためにカメラを手に取って自身と向き合うこと。最終的にそれは社会全体のためにもなる。
(フォトジャーナリスト、コラムニスト)(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月30日付掲載


当事者の視点で写真を撮る。性的被害者が自らカメラを構えて被写体になる。
ということで、よりリアルに実態に迫ることが出来る。
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写真は語る④ いつまで「外の人」か

2021-05-23 07:13:20 | 赤旗記事特集
写真は語る④ いつまで「外の人」か
大藪順子(のぶこ)

「横浜インターナショナルユースフォトプロジェクト」は、昨年5年目を迎えた。
5年間でたまった作品を多くの人に見てもらいたいと写真集を出すことになった。過去の参加者で現在大学生や高校生の有志が編集委員となり、エッセーを書き、中国語と英語に翻訳し、取材に応えて、コロナ禍でも写真集制作が進められた。
『横浜』と書いて『KOKO(此処・個々)』と無理やり読ませるタイトルも彼らの話し合いで決まったものだ。ただ「横浜インターナショナルユースフォトプロジェクト」がサブタイトルでは何の本かわかりにくいため、「外国につながるこどもの作品」のような説明が必要だと出版社から言われた。



『横浜(KOKO)―「外国につながる」ではひとくくりにできない中高生の作品集』(明石書店、4月30日発売)

「外国につながる」という言葉は日本人にとっては都合がいい。さまざまな外国へのつながり方がある中で、細かに分類することで誰かが漏れてしまったら文句が出るし、それ以前に面倒だ。「外国人」や「外人」というよりは、言われる側の疎外感が少ないかもしれない。何よりも、日本人が「外人」という言葉を否定的に思うようになってきた。
サブタイトルについて編集会議をした時、当事者である若者たちが「外国につながる」という呼ばれ方に飽き飽きしていることを教えてくれた。生まれも育ちも日本である子も多く、いつまで「外の人」でいなくてはならないのか。彼らは「多文化共生社会」を実現させるために存在する道具ではないとも言う。もっともだ。
そこで「外国につながるではひとくくりにできない人たち」はどうかと提案してみると、その路線でいくことに彼らから同意を得た。このプロジェクトには日本人の子も参加してきたし、それぞれがユニークな存在で、それが社会を豊かにすることを知ってもらいたい。
『横浜―「外国につながる」ではひとくくりにできない中高生の作品集』は、明石書店より4月30日出版となる。
(フォトジャーナリスト、コラムニスト)(金曜掲載)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月23日付掲載


国籍は外国でも、生まれも育ちも日本である子も多く、いつまで「外の人」でいなくてはならないのか。
彼らは「多文化共生社会」を実現させるために存在する道具ではないとも言う。もっともだ。
もちろん日本人の子どもたちも参加。だからこそ個性的な作品になったのではないでしょうか。
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写真は語る③ 自由な表現の場を

2021-05-22 08:44:33 | 赤旗記事特集
写真は語る③ 自由な表現の場を
大藪順子(のぶこ

2016年から手掛けている「横浜インターナショナルユースフォトプロジェクト」は、外国につながる中高生の目線で社会を切り取り、彼らの世界を内側から見せてもらうと同時に、彼らが自由に表現することで自己肯定感を養う目的で行ってきた。
だが、これは日本の子どもたちにも必要なプロジェクトだと確信している。
人それぞれ表現の仕方も、何を表現というのかも違うけれど、残念ながら日本の子どもの多くは、与えられた物を用いて見本通りに作ることはうまくても、真っ白いキャンバスだけ与えられて「自由に描け」と言われると、何をしていいかわからない子が多い。
近年スマホの普及とSNSの流行で「インスタ映え」する写真を求めて「写す人」は増えている。ただ、飲食店も商業施設も「インスタ映え」を念頭に見栄えのよさを工夫している中、素材を常に提供されている人たちが、自らのオリジナリティーを見いだすのは難しいだろう。



横浜スカイライン ©2020 Nobuko Oyabu All Rights Reserved 普段見慣れた風景をどう切り取って自分の作品にするかをテーマに撮ったもの

毎年私のプロジェクトでは、日本人生徒も参加してきた。ボランティアもみんな外国につながる人たちなので、ワークショップに来ると日本人がマイノリティーになる。同じ街に住んでいるのに見方や考え方、言葉が違う同世代と出会い、肌の色や見た目で判断されたり、差別を経験したりしている同世代の存在に初めて気づく子もいる。
観察していて思うのは、日本人の生徒たちは「こう撮ればいいよ」と誰も教えてくれない中、見慣れた風景をどのように切り取れば「自分の作品」になるのか、それ以前に「何が正解なのか」と考えてしまうことで、何も撮れなくなる傾向がある。また、外国につながる同世代が自分の意見をはっきり主張する姿に圧倒されるようだ。
そんな日本の子どもたちにとって、このプロジェクトはよい経験になると願いたい。日本の外に一歩出たら、誰もお膳立てしてくれないのだから。
(フォトジャーナリスト、コラムニスト)(金曜掲載)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月16日付掲載


いわゆる「インスタ映え」した写真というのは流行るけど。
見慣れた風景をどのように切り取れば「自分の作品」になるのか、それ以前に「何が正解なのか」と考えてしまう。
ずいぶん前に写真屋さんに、「観光ハガキに載っているような写真じゃだめなんだよ」と言われたことを思い出しました。
自分の視点で、自分がこうだと思ったアングルと切り取りで撮る。

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写真は語る② 内側から表現する思い

2021-05-21 07:20:22 | 赤旗記事特集
写真は語る② 内側から表現する思い
大藪順子(のぶこ)

2016年から「横浜インターナショナルユースフォトプロジェクト」なるものを手掛けている。
このプロジェクトでは、外国につながる中高生が彼らの目線で横浜を切り取り、いわゆる一般の日本人が彼らの世界を内側から見せてもらうというものだ。
外国につながるつながらないに関係なく、一人ひとりの視点が違うのは当然だ。「真を写す」写真は、実際に他人の目線で物事を見ることを可能にする。いつもの風景が違って見えてこそ私たちは違いに気づき、それについて考えることができる。違いを受け入れるか否かは個人の勝手だが、少なくとも対話はそこから始まるだろう。



2019年度参加中学生 ©2020 Nobuko Oyabu All Rights Reserved

このプロジェクトのきっかけは15年、川崎での中学1年生の殺害事件だ。関与したのは外国につながる若者たち。長年日本の外で外国人として暮らし、犯罪被害者になった経験のある私にとって、この事件は誰かの怒りが弱者へ向けられる構図の象徴として映った。そして、怒りの表現は暴力でなくても可能であることを若者たちへ伝えたいと思ったのだ。
そのためには、まず彼らのような若者が自由に表現することがよしとされる場所を作ることが必要だ。その言い訳として「写真やってみない?」と若者たちを誘ってみた。
ワークショップでは、撮った本人が写真について語ることを繰り返す。その中でレンズを通して自分が生きる社会を直視し、なぜこの被写体に惹かれたのか、なぜこのように撮ったのか等、普段考えたこともないことに気を配らせる。その過程の中で、彼らは独自の感性と創造力を発揮して、思いを写真で表現するようになる。
「あなたにしか撮れない写真とはなんだろう」と繰り返される問いかけに、特に日本の中で必死に同化しようと思ってきた子たちは、オリジナルでよしとされることを家庭の外でも経験し、少しずつ自分でいることに自信をつけていく。
(フォトジャーナリスト、コラムニスト)(金曜掲載)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月9日付掲載


レンズを通して自分が生きる社会を直視し、なぜこの被写体に惹かれたのか、なぜこのように撮ったのか等を考えさせる。
その過程の中で、彼らは独自の感性と創造力を発揮して、思いを写真で表現するようになる。
写真は、ただただ、撮った、写っているだけじゃなくって、どのように表現するかが大事。
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