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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

危機のフランス公共医療① 大統領選へ「待遇改善を」

2022-03-11 07:08:47 | 国際政治
危機のフランス公共医療① 大統領選へ「待遇改善を」
フランスでは、公立病院の体制強化と医療従事者の待遇改着を求める運動が続いています。約20年前から、医療支出の抑制策により病床と人員の不足、看護師をはじめ医療従事者の低賃金が深刻な社会問題となってきました。新型コロナ禍で公立病院にさらなる負担がのしかかるなか、最前線で患者の治療にあたる人たちをたずねました。
(パリ=桑野白馬 写真も)

パリ東部のカフェ「自由・コミューン」では2月24日、公立病院で働く医師や看護師を招き、映画の鑑賞会と、医療の現状についての討論会が行われました。映画タイトルは「神経症ギリギリの病院」(2003)。効率を重視して病院の運営を評価する病院「改革」が行われた年の作品です。
舞台は、パリ中心部から北北東に20キロ離れたゴネスの病院。病床も医師・看護師も足りず、呼吸器専門医が、胃腸に問題を抱える患者に対応する場面も。外国から若い看護師を臨時で雇ったものの訓練の時間が足りず、言葉の問題で患者との意思疎通がうまくいきません。



カフェで行われた討論会の様子=2月24日、パリ

関連死は14万人
約40人ほどでいっぱいとなった会場からは、コミカルな場面に時おり笑いが起きました。ただ、約20年前の時点で、すでに公共医療が危機に陥っていたことを示しているため、参加者は真剣な表情で見入っています。
上映後に登壇したサン・タントワーヌ病院の看護師アイシャさんは、現在では病床数がさらに減らされ、病院の統廃合により医療の質が低下していると指摘。コロナ禍では対応できる患者が限られ、治療の優先順位を決めざるを得なかったと話しました。フランスのコロナ関連の死者は、計14万人に迫っています。
トゥルソー病院の医療秘書イザベルさんは、勤務時間が「連続12時間から14時間労働となり、3、4年で離職する若者が多くいる」と述べ、医師や看護師の人数が減ると病床が減らされる悪循環に陥っていると警告しました。
医療従事者はこの間、公立病院の予算を減らす危険性を再三にわたり訴えてきました。2019年には、資金不足解消と待遇改普を求める全国ストを決行。新型コロナ禍で医療労働者の待遇改着を求める声が強まりました。マクロン政権は20年5月、保健政策を改善する政労協議(セギュール協議)の開催を決断します。

人権であり権利
協議の結果、公立および非営利の病院・高齢者介護施設の職員(医師以外)を対象に、月183ユーロ(約2万3500円)の賃上げが決まりました。しかし、パリ北部ビシャ病院の看護師サミラ・アクローさん(48)は「改善はほんの少し。政府は、誰もが利用できる公立病院の大切さを理解していない」と厳しい評価を下します。
アクローさんは勤続15年。賃上げでようやく、月額の手取りが2000ユーロ(約25万7000円)に到達しました。それまで12年間も賃上げがなかったと言います。「女性が多い職場ということもあり、正当に評価されていないと感じる。医療は消費するモノではない。人権であり、権利だ」
4月に行われるフランス大統領選に向け、医療従事者は新たな行動を起こしています。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月10日付掲載


トゥルソー病院の医療秘書イザベルさんは、勤務時間が「連続12時間から14時間労働となり、3、4年で離職する若者が多くいる」と述べ、医師や看護師の人数が減ると病床が減らされる悪循環に陥っていると警告。
協議の結果、公立および非営利の病院・高齢者介護施設の職員(医師以外)を対象に、月183ユーロ(約2万3500円)の賃上げが決まる。しかし、パリ北部ビシャ病院の看護師サミラ・アクローさん(48)は「改善はほんの少し。政府は、誰もが利用できる公立病院の大切さを理解していない」と厳しい評価。
医療費は無料(償還式)だというフランスですが、医療の労働条件は劣悪なものが。

水平社創立100年 人間の尊厳を求めて③ 人権・民主主義根付く社会へ

2022-03-10 07:12:23 | 政治・社会問題について
水平社創立100年 人間の尊厳を求めて③ 人権・民主主義根付く社会へ
全国地域人権運動総連合代表委員 丹波正史さんに聞く

「全解連」は部落問題解決の到達点を踏まえ、2004年に「全国地域人権運動総連合」(全国人権連)に発展的転換をしました。



全解連を発展的転換した全国人権連の創立大会=2004年4月4日、東京都千代田区

内外の障壁打破
「地域社会で人権と民主主義、住民自治の確立をはかる多様な住民運動を包含する恒常的な全国組織」として出発。部落解放運動の歴史課題を含めながら地域社会を土台に、差別や人権の問題に積極的に挑戦し、部落内外の障壁を打破していく道を歩んでいます。
部落内外の旧身分にかかわる障壁は基本的に瓦解(がかい)しましたが、一部に古い意識のとりこになっている人や新しい差別主義など、地域的・部分的に障壁が残存したり新しく構築されており、この間題を解決していくことは人権連運動の独自課題です。
また「人権条例」と称して部落差別の固定化や乱脈行政の継続をもくろむ動きも軽視できません。
さらに旧同和地区では、公営住宅の建て替えや空き家問題、超高齢化の進行など課題が山積しており、活力ある融合型の地域づくりが都市部で強く求められています。
地域人権運動の展望として、地域社会を土台に人権問題に焦点を当て、貧困・格差、高齢化・単身化、外国人の3点に絞って課題を挙げておきます。
①新自由主義による雇用上の構造的差別が不安的就労・非正規雇用を増加させ、貧困と無権利状態のまん延で人間の尊厳が踏みにじられ地域社会の活力を奪い去っており、安定した雇用をつくりだし、人間らしく働き生きることができる社会の構築が求められる。
②超高齢化と単身世帯増によって生活要求の多様性と切迫性が課題となっており、これに応える社会システムの構築と人間らしい生活を営める地域社会の実現が急務である。
③在日外国人の急増を背景に人種・民族の違いによる分断・排除・不平等が横行しており、多様性を認め合い、人間の尊厳を柱にした社会の構築が必要になっている。
こうした諸課題に挑戦することは人権連運動の真骨頂ですが、こうした課題をただそうとする労働者・市民などの動きも各地で力強く広がっています。

人間解放の願い
水平社の創立者たちは、差別・貧困に卑下せず、人間的自覚を高め差別意識を払拭(ふっしょく)し、人間として水平線上に立ち人間相互が尊敬し合い、差別がなくなり、蔑視されず、侮辱もない、お互いがいがみ合わない、温かい社会の実現を望みました。これは部落差別だけにとどまらない、人間解放への崇高な願いでもあります。
全国水平社創立100周年を機に、すべての人々の人権が尊重され、民主主義が根付いた、平和な社会の実現をめざし、地域から新たな連帯とたたかいの輪を広げていくことが求められています。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月9日付掲載


部落内外の旧身分にかかわる障壁は基本的に瓦解(がかい)しましたが、一部に古い意識のとりこになっている人や新しい差別主義など、地域的・部分的に障壁が残存したり新しく構築されており、この間題を解決していくことは人権連運動の独自課題。
水平社の創立者たちは、差別・貧困に卑下せず、人間的自覚を高め差別意識を払拭(ふっしょく)し、人間として水平線上に立ち人間相互が尊敬し合い、差別がなくなり、蔑視されず、侮辱もない、お互いがいがみ合わない、温かい社会の実現を望みました。これは部落差別だけにとどまらない、人間解放への崇高な願い。
ジェンダー差別、正規雇用と非正規雇用の差別、技能実習生や入管による差別的待遇。
まだまだ、解決すべき課題があります。

水平社創立100年 人間の尊厳を求めて② 「国民的融合」で差別解消へ

2022-03-09 07:07:21 | 政治・社会問題について
水平社創立100年 人間の尊厳を求めて② 「国民的融合」で差別解消へ
全国地域人権運動総連合代表委員 丹波正史さんに聞く

「水平社」は支配権力による弾圧や圧迫のなか20年で消滅しましたが、部落解放運動は戦後いち早く再建されました。1946年に「部落解放全国委員会」が結成され、55年に「部落解放同盟」と改称し、諸要求実現や悪法反対のたたかいを展開し、社会的影響力を強めていきました。
しかし、1969年に同和対策事業特別措置法が施行され本格的な同和事業がはじまると、この同和事業の独占管理(窓口一本化)を主張し、組織内の人びとを暴力的に排除する逆流が運動の一部に生まれました。



全国部落解放運動連合会結成大会=1976年3月15日、東京都千代田区

各地で運動展開
これに対して70年に「部落解放同盟正常化全国連絡会議」(議長岡映)が結成され、部落問題にふさわしい解決のあり方をめざす運動を展開しました。
「正常化連」は、76年に全国部落解放運動連合会(全解連)に発展的に改組しました。
水平社時代の運動家も立ち上がり、「国民融合をめざす部落問題全国会議」が結成され、各地で住民運動も広がりました。
こうした状況を反映して日本共産党から1975年に「国民的融合論」が提起されました。国民的融合論は戦前の「人民的融和」論を継承したもので、「部落解放とは、江戸時代の旧身分のいかんを問わず、人間としての平等、同権を確立し、社会生活においても旧身分による閉鎖的な障壁を打破して、自由な市民的交わりと結合、融合をとげることである」としました。
①戦前と違い部落問題解決の客観的主体的条件が成熟した②差別の拡大再生産でなく解消過程にある③「部落民以外はすべて差別者」とする「部落排外主義」に反対し、民主主義を徹底させれば解決が可能である―ことを明らかにしました。

「四つの指標」で
全解連は綱領的文書(1987年)で部落問題解決の四つの指標をまとめました。
①生活環境や労働、教育などで周辺地域との格差が是正される②部落問題に対する非科学的認識や偏見に基づく言動がその地域社会で受け入れられない状況がつくりだされる③部落差別にかかわって、部落住民の生活態度・習慣にみられる歴史的後進性が克服される④地域社会で自由な社会的交流が進展し、連帯・融合が実現する―ことです。
同和事業費は1969年から2002年まで33年間に約16兆円が投下されました。部落内外の生活上の格差も解消され、古い差別的な悪習・悪弊も大きく薄れ、部落住民の自立意識も醸成され、社会生活上の障壁も打破されました。四つの指標は基本的に実現したといえます。残る問題は一般行政施策の拡充と、人権尊重・民主主義の前進に引き継がれたのです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月8日付掲載


国民的融合論は戦前の「人民的融和」論を継承したもので、「部落解放とは、江戸時代の旧身分のいかんを問わず、人間としての平等、同権を確立し、社会生活においても旧身分による閉鎖的な障壁を打破して、自由な市民的交わりと結合、融合をとげることである」と。
部落内外の生活上の格差も解消され、古い差別的な悪習・悪弊も大きく薄れ、部落住民の自立意識も醸成され、社会生活上の障壁も打破された。
残る問題は一般行政施策の拡充と、人権尊重・民主主義の前進に引き継がれる。

水平社創立100年 人間の尊厳を求めて① 自ら立ち上がり解放めざす

2022-03-08 07:08:13 | 政治・社会問題について
水平社創立100年 人間の尊厳を求めて① 自ら立ち上がり解放めざす
部落差別間題の解決を目指す「全国水平社」は1922年3月3日、京都市で創立されました。100周年を機に水平社結成の歴史的意義と部落問題の到達、今日的教訓について丹波正史さん(全国地域人権運動総連合代表委員)に聞きました。

全国地域人権運動総連合代表委員 丹波正史さんに聞く

水平社創立は、封建的身分差別の残滓(ざんし)である部落差別の屈辱と呻吟(しんぎん)から人間の誇りを取り戻し、自らを解放しようとしたものです。創立大会では「人間を尊敬する事によって自ら解放せん」と誓い、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」とうたいあげました。
先人達は屈辱の歴史に終止符を打とうと挑戦し、戦後民主主義と部落解放運動を背景に「社会問題としての部落問題」の最終解決を見通せる段階に到達しています。ここに100周年を記念する最大の意義があります。
水平社運動は、ロシア革命の影響や米騒動の経験、朝鮮・中国での日本帝国主義反対のたたかいなど世界と日本の人民闘争のなかで誕生しました。日本共産党の創立をめざしていた人々の活動も大きな影響を与えました。



全国水平社の創設者たち(全国人権連・全国水平社創立100年記念特設ページの動画から)

歴史的な意義
水平社創立の歴史的意義は、①部落住民が初めて自主的大衆的な組織を誕生させたこと、②地方分散的たたかいから全国的な集団運動の組織を確立したこと、③部落出身者が初めて人間としての権利を主張し行動する組織をもったこと、④集団運動の確立が部落外住民との協力・共同の運動を構築する契機になったこと、⑤人間の平等・水平を求める、すぐれて民主主義の運動の時代的な先駆性を発揮したことに―あります。
水平社創立大会で「吾々に対し穢多(えた)及び特殊部落民等の言行によって侮辱の意志を表示したる時は徹底的糺弾(きゅうだん)を為す」と決議しました。この「徹底的糺弾」は、支配階級に対する闘争としても展開されましたが、その多くが勤労大衆の差別言動に向けられました。
その結果、差別的言動は抑制されたものの支配権力による弾圧とも相まって一般国民に大きな恐怖心を植え付けるものとなりました。
そのため「糺弾路線」の見直しが行われ、差別を支える根本へのたたかいこそ解放への道との認識が組織内で広まりました。

「人民的融和」
水平社は紆余曲折を経ながらも、第13回大会(1935年)で「人民的融和」論を方針化しました。部落差別を市民的自由の問題と位置づけ、人民との連帯・融和を通して差別の根拠をなす天皇制支配体制の変革をめざすものでした。
天皇制権力は、部落大衆の爆発的なエネルギーに警戒心を示し、日本共産党の影響力が広がることを阻止する方策をとりました。たとえば米騒動で部落民衆が果たした役割に驚がくしました。京都府警文書で部落民衆の特性を「凶暴性」「団結心」「鞏固(きょうこ)」と記していました。部落民衆の戦闘性、強靱性を恐れ、社会進歩の運動と接合することを恐れていたのです。
水平社内の共産党員らに対して、特高警察などによる監視・拘束・転向強要などの弾圧が加えられました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月5日付掲載


水平社創立は、封建的身分差別の残滓(ざんし)である部落差別の屈辱と呻吟(しんぎん)から人間の誇りを取り戻し、自らを解放しようとしたもの。
差別的行為や言動をする一般国民が悪いのではない。
部落差別を市民的自由の問題と位置づけ、人民との連帯・融和を通して差別の根拠をなす天皇制支配体制の変革をめざすものへ。
根本には絶対的天皇制の支配があると。

気候危機と小型炉② 安全性検証は不十分

2022-03-06 07:10:07 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
気候危機と小型炉② 安全性検証は不十分
小型原子炉への関心が高まっている背景には、安全への要求が高まったことによる原発建設の長期化や費用の増大があります。原子力産業界などが、初期投資の少ない小型炉へ期待を寄せているのです。
しかし、小型炉は1基当たりの建設費は少なくなりますが、発電量当たりのコストは高くなります。小型モジュール炉(SMR)は、工場でパッケージ製造し、現地で組み立てるため工期短縮とコスト削減が図れるとしていますが、そのためには100基、200基といった大量発注が必要となります。
原発メーカーなどは、「安全性が高い」ことをSMRの売りにしています。舘野淳・元中央大学教授は、「小さいと事故を起こしてもコントロールしやすいとはいえます。しかし、本質的安全が高まったわけではなく、それぞれの原発の安全性の検証は不十分です。また、大規模な自然災害やテロなども考慮する必要があります」と話します。
実用化にはさらにハードルがあります。計画されているSMRの多くが、ウラン濃縮度を5%以上としており、中には高濃度のプルトニウム燃料を利用する計画もあります。核燃料の調達や処理・処分、さらに核拡散防止も課題となります。
原子力規制委員会の更田豊志委員長も「わが国で5%を超える濃縮度の燃料の利用が許されるのか」、「現行の再処理とは.相いれない燃料を使う炉型もある」と指摘。全体像を見て「つじつまの合う議論」が必要と繰り返し発言しています。
(おわり)


お金の無駄
原子力資料情報室の松久保肇・事務局長の話
海外の計画を見ても、商用の小型炉に関しては、仮にすべてが順調に進んだとしても2028年以降に動き始めるという状況です。まだ建設も始まっていません。温暖化対策として期待はできないのです。
日本では、大型の原発を1カ所に集中して立地させていますが、経済的メリットがあるのでそうしてきたわけで、小型炉にあまりメリットはありません。日本の原発産業界は、国内での原発の新設もなく、海外での注文も逃してきて、小型炉に活路を見いだそうとしているのでしょう。しかし、海外でも小型炉に多くの需要は期待できません。
SMR開発を国が支援するというのは、ほぼ死んでいるような産業を補助金で生き延びさせるという話で、お金の無駄遣いです。産業転換によって活路を見いだす方が、産業界にとっても有意義なはずです。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年3月4日付掲載


実用化にはさらにハードルが。計画されているSMRの多くが、ウラン濃縮度を5%以上としており、中には高濃度のプルトニウム燃料を利用する計画もあります。核燃料の調達や処理・処分、さらに核拡散防止も課題となる。
SMR開発を国が支援するというのは、ほぼ死んでいるような産業を補助金で生き延びさせるという話で、お金の無駄遣いです。産業転換によって活路を見いだす方が、産業界にとっても有意義なはず。