5月3日から5日まで、秋の高山祭りで知られる「櫻山八幡宮」で、30年に一度の式年大祭が行われる。
大祭は飛騨国中の150余の神さまが、一堂に会する壮大な祭りで、全国的にも珍しいといわれている。
開催年は不思議と天災に見舞われたり、世の中が乱れたりと、大きな災いが起こることから「世直し大祭」と呼ばれている。
折からの東日本大震災もあって、祭り開催の是非の議論もあったようだが、宮司は「式年大祭では神々を招き、飛騨国、日本国の平安や繁栄をひたすらお祈りする」と述べ、歴史ある神事は粛々と執り行われることになった。
飛騨各地の鎮守の森を後にした神々は、八幡宮の近くのお寺などで御神幸の準備をし、祭列を組んで八幡宮へ向かう。
わずか十数人の御神幸から、神輿や獅子舞、雅楽、神楽太鼓、唐櫃、闘鶏楽、輪棒、警護など、100人を超す時代絵巻のように絢爛豪華な祭り行列など様々だ。
飛騨特有の獅子舞や闘鶏楽、雅楽なども、神社によって微妙に違いがあるのも興味深い。
元は同じであった思われるが、言い伝えや口伝による継承は、長い間に少しずつ変化していったのだろう。
わが集落の「岩井神社」の神様も、午前7時に「神移し」の神事でお神輿に移り、八幡宮に近い蓮乗寺に氏子ともども参集して、御神幸の準備をした。
50名ほどの祭列は塩撒きを先頭に、榊持ち、旗持ち、警護、唐櫃、獅子舞、神楽太鼓、鉦、巫女などが続き、列の中心には神が乗り移ったお神輿がある。
行列は江名子川沿いに進み、古い町並みを鉦を打ち鳴らし、獅子舞をしながら八幡宮を目指す。
本殿に到着すると、神官によって「神移し」が行われ、神輿の神様は御神座に移られる。
「神移し」の神事は、神主がお祓いをし、氏子代表が白絹の布で覆う中で厳かに行われる。
その間、神殿の前で待機する獅子は歯をカタカタと鳴らし、闘鶏楽の鉦を激しく打ち、神集う祭りは最高潮に達する。
数時間八幡宮の祭神と共に過ごされた神様をお迎えするため、再び祭列を組んで八幡宮へ向かう。
神々の集いが終わり、お還りのときも同じ神事で、もとの神輿に移られ、それぞれの神社へ戻られる。
今日の役割は、渡御行列(行き)は「唐櫃担ぎ」で、祭神への「献備金」が入った唐櫃の片棒を担った。
白装束に黒い烏帽子を被り、奉納所へ届ける役で、神輿の後に続いた。
還御行列(帰り)は、「輪棒」という祭列の道開け役で、藍染の衣装に冠を被り、鉄の錫杖を打ち鳴らしながら神輿の道を開いていく。
岩井神社の神様も無事に鎮守の森に戻られ、氏子たちの平安と五穀豊穣を守ってくれる。
30年に1度の大祭で、計らずも二つの大役を担い、神々と人の交わりを身近に感じる一日となった。