フラット３の記憶

この時期はネタがないので昔の記憶で、元日本代表監督フィリップ・トルシエが植え付けた革新的な戦術、「フラット３」の思い出です。トルシエは紅白戦を決してやらない監督として知られ、事実国立競技場のベルギー戦の前のウォーミングアップの練習を見ていると、スタメン組をその形に並べ、ボールをつながせる練習でした。

フラット３はトルシエ自身は「日本人の体格に合った戦術」と話していましたが、この戦術は1998年フランスW杯でトルシエが率いた南アフリカ代表でも採用しており、トルシエ自身の哲学と思われます。この戦術が最も機能したのは、皮肉にもA代表ではなく、1999年にトルシエが率いたユース代表での姿が印象的です。

当時、ナイジェリアという猛暑の地で行われるワールドユースに臨む日本ユース代表には、小野伸二、小笠原満男、遠藤保仁、稲本潤一、高原直泰らのちのA代表の主力メンバーになるビッグネームが揃っていました。史上最強の呼び声もあったユース代表でしたが、当時DFの中心選手だった金古が直前合宿で負傷するというアクシデントに見舞われます。

そのため、代役に辻本を入れ、さらにボランチだった中田浩二をDFにコンバートするなど、DFに関しては急造メンバーでした。それでも、本番は準優勝という立派な結果を残しました。それができたのはトルシエがフラット３、つまり3バックを横に並べてコンパクトな中盤を保つスタイルを植え付けたからでした。

コンパクトな中盤を保ちオフサイドを取る、サイドのDFも攻撃に絡むなど、それまで見たことのなかった戦術がナイジェリアの地で躍動する姿は、日本からテレビを見ていた私にも感動的でした。決勝トーナメントに進んでからも、ポルトガル、メキシコ、ウルグアイを破って決勝まで進みました。

決勝戦こそ、のちにバルセロナでレジェンドとなるシャビがボランチに入ったスペインに、0-4と完敗しました。それでも、このトルシエの手腕の確かさは、のちに解任論が出るたびに「あれ？」と思うほどでした。懐かしい思い出です。