<三宅氏>
「人生100年時代」を生き抜くためには、学びたいことを学んで
「自分だけのスキル」を身につける仕組みづくりが必要だと
リンダさんは強調していました。
ただ、全ての人が実現するのは簡単ではありません。
リンダさん自身どこでも通用する手法はなく、
難しい問題だということを認めています。
この理想をどう実現していくのか、社会のあり方が問われているのです。
意識調査では10代から20代の若い世代も、
「人生100年時代」に対して、39.8%が「どんよりする」と答えていました。
少子高齢化が進み、経済も停滞が続く日本で、
若者はどのように100年の人生に臨めばよいのでしょうか。
<グラットン氏>
「さまざまなことを学び、自分の選択肢を増やすこと。
これをやめてしまうと、将来の可能性を閉ざすことになります。
いま若い人たちは、長い人生で“自分は何ができるのか”“どれだけ
いろんなことができるか”が問われています。
18歳に伝えたいのは、リスクを負う覚悟を持ってほしいということです」
<三宅氏>
リスクを負うといっても、若い人たちは心配しています。
収入がある仕事に就けるのか、高齢者を支えていけるのか、
そういう重い気持ちを持っています。
<グラットン氏>
「日本の若い人たちは、高齢者の面倒をみることを負担と感じて
いるようですが、そんな心配をする必要はありません。
高齢者は、自分の面倒は自分でみられます。若者に面倒を見てもらおうと
思ってはいけないのです。私たち高齢者が子どもたちを解放し、
新しいスキルを身につけて人生を最大限に活用できるようにしなければなりません」
<三宅氏>
それは、元気な高齢者は若い人たちが元気になるようにしないと
いけないということでしょうか?
<グラットン氏>
「そのとおりです。これは母親としての私の意見ですが、親がすべきなのは、
子どもを束縛せず、心配しすぎないこと。
そしてリスクを取らせ、失敗する機会を奪わないことです。
日本はいま、以前ほど新しいものを生み出す国ではありません。
起業家が生まれる土壌がなくなったことが理由です。日本が繁栄するためには、
親は子どもを自由にさせること。そうすれば子どもは起業家にもなれるし、
リスクも取れる、そして世界に羽ばたくこともできます。
もし私たち大人が子どもたちを箱の中に閉じ込めてしまったら、成長できません。
「人生100年時代」とは「贈り物」です。
世界には100歳どころか50歳まで生きられない人がたくさんいます。
だから100歳まで生きられるのは、幸せなことだと思って生きてほしいのです」
<三宅氏>
取材を終えて "ひとしく挑戦できる社会へ"
聞いてこそ分かることがある。インタビューの醍醐味です。
リンダさんに会ってまず驚いたのは、その前向きな明るさ。
「人生100年」の意味を伝えたいとの気持ちが、みなぎっていました。
それはどこから来るものなのか?
耳を傾けると、終盤、特に思いが胸に響くところがありました。
「リスクを負う覚悟を持って」という若者への言葉。
「親は子どもを束縛せず、失敗する機会を奪わないこと」と続け、
それを日本社会の課題との認識も示しました。
実は収録では、彼女は21歳の頃みずから中東・アフリカなどを旅し、
息子が18歳の時にインドや中国などに住むように勧め、
「不安をこらえ別れを告げた」との思い出も語っています。
「探検」と呼び、新しい技術を学び、友人をつくる大事さを説きました。
長くなる人生。回り道もよい。それが社会の力となり、老後も豊かにしてくれる。
若い人たちが、ひとしく挑戦できる社会!これからの豊かさかもしれないと
考えさせられました。