昨日の毎日新聞の「余録」で、丸谷才一さんはパーティーで原稿を読みながら挨拶をしていたことを知った。
小紙の書評欄「今週の本棚」の担当だった当時、作家の丸谷才一(まるや・さいいち)さんにお世話になった。年1度、書評委員をお招きしてパーティーをしたのだが、最初は原稿を読みながらの丸谷さんの挨拶(あいさつ)に驚いた▲なぜ、原稿を用意するのか。丸谷さんは二度と同じ人が集まらないパーティーで自分の思いばかりを長々としゃべるような挨拶は困るからだという。聞き手あってこその挨拶である。みんなに楽しんでもらえる話題をきちんと話すには原稿にした方がいいというのだ▲「読者あっての文章なのと同じです」。実は挨拶の話は文芸の話なのだ。自分の思いのたけを記すのが文学と思われてきた日本の風土で、一席の歓(かん)を尽くすパーティーのように読者と歓を共にする文学を掲げた丸谷さんだ。
パーティーの挨拶もそうだが、いろいろな場面で場の雰囲気を感ずることなく一人で長々お喋りをする方には辟易することがある。
このような場面でいつも思い出すのが、先師・五十嵐正美先生のお言葉。
「すなおに自己を語り すなおに他己を聞く」
できることなら、皆が「語り」と「聞く」を楽しめるのがよいと思う。
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