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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

コポリ

2010-05-31 15:25:54 | 好きな本
久しぶりに、いしいしんじの本を読みました。

こももさんのレビューを読んでいて、気になる箇所がいくつもあって、そして
図書館の棚に、並んでいるところに出くわしたので。
(予約すればどの本でも借りられますが、そうやって借りたい本と、たまたま
見かけて、その時に読みたかったら借りようと思う本があって、いしい作品を、
私は後者にしています)


みずうみ』  いしいしんじ 作

3章からなる物語です。
が、その3つの章はどことも(はっきりわかる形では)繋がっていないのです。

章だてになっている話は、時間軸で繋がっていたり、あるいは、よく読んでいくと、
点や線で繋がっていたりしますが、この物語は、なんか入れ子式のように感じました。

1章が大きくて、その中から、2章と3章が出てくる感じ。でも、2と3を比べると
3が2の中に入っているというわけでもなく、ただ、1の中に「入っている」というふうに
感じたのです。

rが小さい頃、カップを積み上げて遊ぶおもちゃがあって、6個くらいのプラスチックの
カップが、順に大きいものにしまうことができて、反対に重ねて遊ぶこともできるというもので‥。
そしてカップの底には穴があいていて‥たとえば一番大きい赤いカップは小さな穴が全体に。
次の青のは、真ん中にひとつだけ少し大きい穴、といった具合に‥。
おもにお風呂で遊ぶものだったと思うのですが、「入れ子式」を連想したときに
すぐに思い浮かんだのが、このおもちゃだったのです。

ひとつの話が、別の話の中に入っているのだけれど、穴があいているので
底から水がぽたぽた、あるいは、ちょろちょろと、漏れてくる感じ、です。

1章を読んでいるときは、ああこれがいしいワールドだな、と実感でき、サクサク
進みそうだったのに、2章に入ったら、日に2ページ読むのがやっというのが続き、
結局は1カ月くらいかかってしまいました。
なぜか、読み始めると、眠くなってしかたがなく、それは疲労と怠惰のせいも
もちろんありますが、こももさんも書いていたように、この物語が眠りの要素を
持っているのではないかと、思えるほど、眠くなってしまって困りました。

それでも最後まで読みとおすことができたのは、3章で描かれていた幾つかの
場所の中に、ニューヨークが入っていたからなのと、1章からつづいているキーワード
‥ジューイやコポリや帳やノースリーブのおかげです。


読後が、さっぱりするとか、気持ちが軽くなるとか、しみじみするとか、嬉しくなるとか
そういうのの、まるで反対に位置する気持ちなのに(笑)、でもその感情を
ネガティブな言葉で表すのは違っているというふうに感じる、不思議な本です。
最初はどんなふうだったかなと、もう一度、1章に戻って読みたくなるけれど、
いやいやしばらくはよしておこうと、もう一人の私が言ってます。

フンダンに、あきれるほど出てくる水、人の口から溢れてくる水。
すこしも苦しげでなく、どこまでも清らかで、そして「軽い」感じがする水。
そんな水がたてる音が、コポリ、です。






コメント (2)
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