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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

ありえないほどの悲しみ

2012-05-04 15:39:48 | 好きな本

なんとなく悲しいときや、なんとなく淋しい気持ちのとき。
自分のことではないけれど、自分だったらどうしよう、と思い浮かべることが
できるとき。

心が揺れて、涙という形になって溢れだし、でも、泣いたことで
揺れは収まっていく、ということはよくあります。

逆に。

本物の悲しさに直面したとき、気持ちはただの1ミリも動かず、
凍りついたように固まったままなので、十分に息を吸うことも、ためてあった空気を
吐き出すこともできず、詰まったままの重い心を、ただ持っていることしかできません。



3月の初めに、映画を観て、その後に、原作を読みました。

本は、まず、表紙がとってもCOOL‥かっこいいと思いました。
そして、図書館から順番が回ってきて、手にしてみたら、その厚さにびっくり。
2週間という期限の中で、読み終えられるか心配でしたが、やってみたらば、それは杞憂
だったとわかりました。



悲しみが世代を越えて、国を越えて、時を越えて、ぎっしりと
詰まっています。


第2次世界大戦中のドレスデン、広島に投下された原子爆弾、
2001年9月11日2つのタワーに突っ込んだ旅客機ー。

原作は、ビジュアルブックになっていて‥はさみこまれた写真や、文中の文字への
赤ペンでの書き込みや、ドア越しに聞える会話は、聞き取れなったところだけ
スペースが空いていたり‥新しい文学の試みなのでしょう。
私はCOOL、と思いました。

歴史的なこと、時代的なこと、個人の力ではどうすることもできないこと。
圧倒的な力や数字の前では、ひとりひとりはとても無力ですが、そのひとり
ひとりに、必ず両親が居て、愛する人がいて、大切な日常があるのです。

力のある人もない人も、大人も子どもも、自分だけのやり方で、自分だけの
悲しみと向き合って、受け入れていくしか、前に進む方法はないのだと
あらためて思います。
100人いたら、100通り。1000人いたら、1000通り‥。

ある日突然、崩れたビルと共に父親を失ったオスカー。
偶然見つけた鍵の、「鍵穴」を探すことにしたのは、オスカーの1通り。



映画は、もうすぐDVDとなって発売されるようですが、主人公オスカー役の少年は
原作の、私が抱いたイメージよりは、さらにエキセントリック度が強調されているように
感じ、少年の両親役は、トム・ハンクスとサンドラ・ブロック以外、ありえないと思えるほど
ぴったりだと感じています。

原作がしっかりしているものの映画作品を観たとき、ほとんど必ず、原作のほうが
いいなあと思うのですが、今回は、この原作を元に、とても似ている別の作品を
作ったのでは、と思うほど、映画のシナリオもよかったです。(フォレストガンプ、
ベンジャミンバトンの脚本を書いた人と知って納得しました)
登場人物を少し整理し、話をわかりやすくしているところもよかったし、オスカーの
部屋や、オスカーが作った作品を、目で見られたところにもすごく価値があると
思います。




*余談ですが、この映画の監督はスティーブン・ダルドリーで、前作は
 『愛を読むひと』、前々作は『めぐりあう時間たち』。
 そんなに多くの映画を観ない私が、偶然にも両方とも映画館で観ていたのです。
 なんかとっても個人的ですが(笑)、不思議な気持ちです。


コメント
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