音楽の喜び フルートとともに

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アルルの女のメヌエット

2008-11-12 01:21:06 | 名曲
ビゼーのアルルの女のメヌエットは、フルートの曲を一曲あげるとすると、この曲というほどフルートで有名な曲です。
ドーデの戯曲「風車小屋だより」が原作です。
じつは、ビゼーの友人のギローが組曲に編纂しなおした時に、ビゼーのもう一つの歌劇「美しきパースの娘」の二重唱をフルートの曲に編曲して、第二組曲の間奏曲として組み入れました。

私は、この曲を聴いたら、ゴッホが描いたアルルの黄色い橋が思い浮かぶほどですが、パースは、16世紀スコットランドの首都だそうです。どう聴いてもスコットランドって感じじゃないなぁ。
実は、情景音楽ではなく、公爵がロマの女王を口説く唄で、フルート部分ではなく、対旋律の一部が歌になっています。ロマとは、流浪の民のことです。

アルルの女は、主人公フレデリが闘牛場で見かけた女で、彼が恋焦がれているにも関らず、他の男と駆け落ちしてしまいます。実際には歌劇に一度も出てこず、通り過ぎていく流浪の民の一人だったのかもしれません。

そう思うと、この曲は公爵スコットランドの曲と言うより、ロマの女王の故郷からきた音楽だったのかもしれません。

アルルの女のファランドールはロマの音楽そのもの、この音楽の中、フレデリは正常と狂気の中をさまよい、ついにはアルルの女を追ってバルコニーから飛び降りて死んでしまいます。

ロマの女の音楽とそれを誘惑するスコットランドの公爵の曲を第二組曲に選んだギローはビゼーの音楽の性格を深く理解していたのだと思います。
これは、ビゼーのほかの歌劇を通して、語られている特徴とも通ずるところがあります。
カルメンとホセ、洗濯女と官吏の葛藤。自由に男から男へと放浪するカルメンと、生真面目なホセ。アルルの女でも、フレデリは清純な相手にふさわしい婚約者と、奔放なアルルの女の間を行きつ戻りつします。

ビゼーは、パリの音楽家の両親の息子で、幼い頃から恐ろしいほどの才能があり、パリ音楽院で純粋培養とでもいう環境で育った人でもありましたが、最下層に生きる、ロマの音楽や、流浪に、魅了され、憧れ続けた人でもあったのだと思います。それは、正統派音楽の中で育ちながら、クーデターを起すというほど、当時としては大変なことだったのです。実際カルメンを上演した時はスキャンダルが巻き起こり、不評でした。ところが、すぐにそれは名声に変るのですが、ビゼーはついにその成功を知ることなく、3ヵ月後亡くなっています。