おすすめ度 ☆☆☆
問題提起のある良作だが、何しろ長い。3時間48分。長尺映画二本分。
各国の映画祭で高い評価を受けるフィリピンの鬼才ラブ・ディアス監督が第73回ベネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞した作品。
クローズアップや説明的な描写を排除し、フォーカスもコントラストも鮮明なモノクロのヴィジュアルは、とりわけ夜間シーンに絶大な魔力的効果を発揮する。
殺人の罪で30年間投獄されていた無実の女ホラシアが出所した。事件の真の黒幕で、彼女を陥れたかつての恋人ロドリゴに復讐するため、ホラシアは孤独な旅に出る。そんな彼女の前に、困っている者、弱い者たちが現れる。貧しい卵売りの男、物乞いの女、心と身体に傷を抱えた謎の女、彼らに手を差し伸べ、惜しみなく愛を注ぐホラシア。そんな彼女を慕う者たちの助けにより、ホラシアは復讐のターゲットとの距離を次第に縮めていく。
フィリッピンで誘拐事件が多発した1997年を起点とする本作は、無実が証明されて出所した元教師の主人公ホラシアが、かつての自宅に立ち寄ったのち、憎き元恋人ロドリゴが住む街へとたどり着くまでを、厳密な固定カメラの長回しショットを連ねて映し出す。
ゲイや障碍者といった社会のメインストリームから零れ落ちた人々の苦境をリアリスティックに表出し、冤罪によって一家離散に追い込まれてしまった女の禍々しくもあり、哀しくももある行動をミステリアスに紡いだ作品。
ラストは、行方不明の息子を探すビラに埋もれてさまよう。
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