まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

『杉村春子 女優として、おんなとして』

2016-04-26 09:28:30 | 

花だ緑だと追いかけているうちにどんどん忘れて行って焦っています。
すごくいい本だったので。

 

なぜ今ごろ杉村春子さんかと。

録画しておいたデジタル版の『晩春』を観て、生き生きと演じている杉村さんがとても素敵だったので。
晩春は若いころにも見ているのにその時は杉村さんには目がいかなかった。それがこの度観て。
円覚寺の階段前でお財布を拾ったという場面
嫁入り衣装を着た原節子さんが部屋を出て行った後、くるりとひとまわりしてそれから出ていく場面。
私なんかが言うのもなんだけれどとても印象的だったのよ。

その前にもBSテレビ 「2時間散歩」で江守徹さんが四谷付近を散歩しているとき文学座が近くにあるということから、
杉村さんのお話をしていて(内容は覚えていないれど尊敬の念溢れていた)それもどこかに残っていたの。

で、図書館に行ったら飛び込んできたのが『杉村春子 女優としておんなとして』
これは読めということね、と早速借りた次第。
引っくり返って読むにはあまりに分厚く重かったけれど、面白かったので一気呵成に読破。

いやあ、杉村さんってほんと壮絶な人なのね。
それこそ女優としても女としても。
ごめんなさい、画面からどこか小意地が悪そうな感じは受けていたけれどほんと凄まじい。
(そして再度ごめんなさい、その印象は消えなかったわ)
もう凄いとしか言いようがない。

杉村さんのことはあれだけ有名な方だから私ごときがおこがましくて。
が、作者の中丸美繪さんにはとても興味を持った。

足し算も引き算もなくひたすら資料からインタビューから杉村さんに近づいて行って。

そこから客観的に冷静に切り込んでいって、実にくっきりとした杉村春子像が浮かび上がってきて。
そこには中丸さんご自身の内なる感情がひとつも見えない、ひたすら証言と真実のみ。
中丸さんが杉村さんをどのように思っているのかすら読み取れない。
それが小気味よくて読み終わった後、その時その場所で杉村さんが話している言葉や動きが目の前に見えて
動いているように感じられ、ちょっと感激して息を吐き出したくなるようだった次第でして。

 

中丸さんのコメントです。 

2005年秋、フジテレビ「女の一代記」シリーズで、女優米倉涼子によって、稀代の女優杉村春子が演じられた。
杉村はまだ女性の社会的立場が弱かった時代に、女優となり70年にわたって演じ続けた。
彼女の生涯を書くにあたって、私は6年の歳月を要したが、彼女の知られざる前半生について証言してくれた人々は、
単行本が文庫になったときには、多くが亡くなられていた。
単行本のために、取材に東奔西走していた頃が、生身の杉村を知る最後のチャンスだったのかもしれない。
直接に杉村を知り、いっしょに演じた関係者と出会い、貴重な証言を得られた幸運を心底有難いと思う。
杉村の生涯は女優という「魔」にとりつかれた一生だった。
いまや日本の演劇界、映画界、芸能界はかつてのそれでなく、俳優たちの成り立ちも質も激変した。杉村は伝説の女優となっていくだろうが、そのときこの本が、稀有な女優の生きた道その時代の演劇界を伝える一助となればと考える。 

コメント
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