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リスク社会の真のリスク

2008-07-22 20:44:10 | 折々の随想
リスク社会という言葉は、1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件から2001年の同時多発テロあたりを境にして、21世紀になってますますこの世を賑わしている言葉です。

このリスク社会とは一体どういう社会なのでしょうか?

リスク社会とは、現代のリスク問題、例えば環境問題や格差問題が、科学技術の進展や近代化の歴史的な流れから引き起こされたものと見なし、リスクをどのようにして、社会の誰に押しつけるかという「リスクの分配」の問題としてウルリヒ・ベックによって提唱され、第3の道のアンソニー・ギデンズやアフォーダンスの理論を提唱したニコラス・ルーマンに引き継がれた概念です。

なぜ、20世紀の末から21世紀になって現れたのかを理解するためには、とりわけルーマンによって強調されているように、リスクは自らが何かを選択し決定したことに伴う不確実性に関連し、それによって生じているということを理解する必要がありそうです。

昔からあった大きな自然災害に遭遇することの「リスク」は、これは自らが選択し決定した結果引き起こされたものではありませんから、危険(Danger)ではありますが、リスクではありません。

現在引き起こされている金融危機も、後で述べるように、このリスク社会のリスクの分配と不確実性が絡んだ問題と捉えることができそうです。

アダム・スミスの「神の見えざる手」や、ヘーゲルの「理性の狡知」といった言葉をお聞きになったことがあるかと思います。このイデオロギーは、マックス・ヴェーバーが言う資本主義を支える精神、つまりプロテスタンティズムの倫理に行き着きます。

誰が救済され、誰が救済されないのかは、全知全能の神が存在して、既に結論を出している、しかし、自分自身が救済されるのかどうかは、この世を生きる個人ははかり知ることができないため、結局は自らの自由な意志で個々の行為を選択していく以外にはない、これがリスク社会以前において、近代資本主義社会の勃興と隆盛を後押しした強力な思想でした。

しかしここには、まだ神の意志が見えざる手として働いており、神が実存していることが含意されております。

ところが、この神の実存が虚構化しそれを喪失した、まさに後期近代期になって初めてリスク社会が到来しました。つまり、近代社会を支えていたいわば「超越的存在」が不在のまま現出したのが、ここ10年あまりのリスク社会という訳です。

このリスク社会においては、特にグローバリズムが提唱される中で、真の意味での自己選択、自己責任が求められております。自分が自由であること、好きなこと、快楽を追求することがいわば強制され、規範にまでなっている社会と言えます。しかも、その規範のレベルが高いのです。

ギデンズは「再帰性」という、近代社会を理解する上での重要な概念を提起しましたが、これは近代社会ではどのような行為もその社会の規範を前提としており、その規範を絶えず反省し乗り越えようとすることが常態化しており、その結果、それまでの規範が不断に参照されつつ修正がなされる社会を意味します。

ところが、社会全体を構成するシステムの再帰性の水準が大きく上昇しているため、リスクの低減のために、そのシステムを変えようとする人間の自由な決定や選択それ自体が、新たなリスクの原因を作り込んでいくのが、現下のリスク社会の特徴と言えます。

「自分にあった好きな仕事で楽しく暮らしたい」、といった強迫観念とも言える考え方が、若者の間で流布しているのも、リスク社会がもたらした現象の1つです。そうは言っても、20歳やそこらの学校を出たての若者が、いきなり自分にあった仕事など見つけられる訳もありません。しかし、リスク社会からのそうした強制は強い。その結果、仕事も恋愛も何もかも、(規範レベルが高い)自分に合った最適の解を見つけようとするあまり、結局はそれが見つからずに大量のモラトリアム人間たるフリーターや未婚者を生み出しているという現実を招いており、それ自体が社会全体の将来リスクを増幅しております。

冒頭に、リスク社会とは「リスクの分配」の問題として、ウルリヒ・ベックによって提唱されていると書きました。これは例えば、環境問題というリスクの解決のために、原発の推進という別のリスクに分配されているという状況を見るとよく理解できます。

実は、環境問題が真に人類を危機に陥れるかどうかに関しては、未だに科学的に厳密な論証はありません。環境問題など存在しないと主張する学派も存在するくらいです。しかしこれまでの世界中での多くの議論を経て、概ね地球温暖化がもたらす災厄は将来あり得るとの認識に至っております。この環境問題の解決を、従来の近代社会型の民主主義的ルールで行うことは、実は、全くの無効となります。何故なら、環境問題が真に存在するなら、そのための解決策を「多数決」により中庸なものを実行しても効果はありません。もし存在しないなら、ましてやそのような中途半端な対策を行うのは無駄になります。

そこで、環境問題は概ね存在するという立場にたって、地球環境の壊滅的な悪化を防ぐために、例えば純粋に科学的な見地から、原子力による解決を図るという処方箋が採られたとすると、地球環境問題が、今度は原子力の安全性確保という面での新たなリスクに「分配」(=分散)されたことになります。風力発電の場合は、アメリカの1つの州に相当するほどの土地が、アメリカ1国のために必要となるリスクに分配(分散)されたことになります。更に、これにより食糧生産のための耕地が少なくなるという連鎖リスクにも分配(分散)されていきます。

今回のアメリカ発の金融危機のやっかいなところは、まさにこのようなリスク社会に潜む真のリスクを乗り越える「超越的存在者」が不在のところに、規範レベルを必要以上に上げてリスクを分配=分散してしまったことで、今のリスク社会のリスクそのものを図らずも正確に体現してしまったところにあります。

神の見えざる手や理性の狡知が不在であることを逆手に取って、金融テクノロジーや格付の神話に依拠し、実態経済規模を無視してレバレッジを上げて、10%を超えるような高いリターン(規範)を証券化手法で「リスクを分散=分配しながら、全ての金融世界の参加者が利益を追い求めた結果、それらの手法が本来は虚構であったが故に、そのリターン(規範)を乗り越え続けることが出来なくなったという現実に直面し、そのあまりに強い現実からのしっぺ返しを受けつつあるのが、今の世界の金融危機の実態だと思うのです。

このように後期近代社会に初めて登場したリスク社会の申し子である金融危機、超越的存在が不在の今、そうした認識がない(であろう)虚構の裏側のリアリティが見えないバーナンキやポールソンの手に負えるものとはとても思えません。

もしこうしたリアリティが見えていれば、そしていくばくかの「倫理」を未だ持っていたとすれば、ここまで住宅公社問題を意図的に放置できた筈はありません。
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明日のモニタリング銘柄(7.23.08)

2008-07-22 20:04:13 | 明日のモニタリング銘柄
日経先物のイーブニングセッションでは、大証終値比で-60円。NYダウの先物は東京時間で下げている以上には変化無し。ワコビアの決算を控えての様子見のようです。

さて、切り返し気配が漂う東京市場ですが、新興市場の元気のなさが目立ちます。テクニカルにもだらしなく下げておりますので、もうしばらくは低迷が続くのかも知れません。

TAIYOやアクセルマークの下方修正など、成長余地が大きいはずの新規公開銘柄がこうでは、まるで上場した時がピークで後は下降するばかりとなると、入学した時がピークで後は脱落するのみという近頃の大学の新入生並です。

明日のモニタリング銘柄です。

1.2167ウェブマネー
 ざっと登録の200銘柄ほどを眺めましたが、どう見ても新興市場が売られすぎです。出来高が少なかろうと何だろうが、まずはこれを。OSCは23%、RSIは19%です。

2.1412チャイナボーチー
 これもOSC23%、RSIは4日連続シングル%で、今日は8%です。あまりに売られすぎ。

3.3811ビットアイル
 これも136Kまで6月5日には付けたのですが、今日はOSCを-10%の21%まで落としての86K終了です。もっともこの株64500円あたりまで付けたことがありますので、まだまだ下落余地あると言うことか?

4.3823アクロディア
 昨年9月18日の167Kまで見えてきました。OSCは27%(-3%)、指数値は上場来最低値。7月5日のOSC27%と今日は同値で、ギリギリ粘ってはおります。

5.2371カカクコム
 新興市場並に売られたのがこの株。OSCは29%にまで落としました。明日は、252Kの安値を意識しながらの押し目狙い。

以上です。ほとんどが売られすぎの新興市場銘柄となりました。

一部市場では、4617中国塗料、6269三井海洋開発、6277ホソカワミクロンあたりとなりますが、今日の地合で上がらなかった一部市場の株です。何かすねに傷を持っている可能性が大です。しかし、今日の日本農薬のように、火事場の馬鹿力を発揮するかも知れません。
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市場概況(7.22.08)

2008-07-22 15:32:14 | 市場概況
テクニカル用語の簡単解説

7月22日(火)の市場概況です。赤字部は23日朝更新

・日経先物:OSC48%(+8%)7月16日の36%から切り返し中。
・日経平均:OSC48%(+9%)7月16日の32%から切り返し中。
・TOPIX:OSC42%(+8%)7月16日の29%から切り返し中。
・マザーズ指数:OSC35%(-3%)7月18日の38%から反落中。
・ヘラクレス指数:OSC32%(-1%)7月17日の33%から反落中。
・国債先物:OSC42%(-3%)83銭安。7月16日の47%から反落に転じる。
・日経先物イーブニングセッション:13140円(大証終値比-60円)
・シカゴCME日経先物:13335円(大証終値比+135円)更新
・NYダウ:11602ドル(+135ドル)OSC63%(+4%)4月23日以来の高値更新。ここからの上げは限定的か?更新
・ドル円:107.31円(88銭円安)OSC59%(+7%)7月8日の62%に次高さ。107.7円以上になれば抜くか?更新

いやはや、国債先物のシステムが途中から回復はしましたが、その後、日経先物が14時ちょうどから思わぬ上昇を演じました。新興市場を除いてはチョイと上げすぎの嫌いがあります。

多分、何らかのニュースに反応したものと思われますが、今のところ未確認です。債券システムの回復とともに、債券売り、株式買いの動きが顕在化したという話もありますが、それが本当のところかも知れません。

出し抜かれたとはこのことです。2時までは全くの心停止状態。眠気をこらえるのに苦労しておりました。朝方上げていた株も、ポロポロと利確の動きでじり安でしたが、2時を過ぎてからの活の入り方は半端ではありませんでしたね。

この上げすぎの状態と、NYダウは下降トレンドを示唆していることから、持ち越しも出来ず、飛びつき買いにも失敗し、やむを得ず引け際の乱戦で、8113ユニチャームを少し取っただけ。

今日は、国債先物のシステムが14時前まで不能でしたので、まさに先物案内人を失った感じでした。取り逃しはやむを得ません。羅針盤がないのに大海原に乗り出す訳にはいきませんでした。

-------23日朝のコメント-------

原油が大きく下落(127.95ドル)し、株式相場に資金が戻ったようです。もともと原油のチャートは崩れておりましたから、こうなるのはある程度は予見できたところ。ところで、市場が終わった後に発表された米最大の貯蓄貸付期間、ワシントンミューチュアルの第二四半期決算で、1株あたりの利益が予想の-1.02ドルを大きく超え、-6.58ドルとなっております。

シカゴCMEは高く返ってきておりますが、この決算でダウの今晩の下落を見込んで、寄り付きは多少安く始まるかと思います。その後もCME価格を抜けるかどうかが1つの目安。下値は13155円という7月11日のSQ値あたり。
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言葉を失う相場

2008-07-22 11:14:28 | 株に出会う
朝のチョイ高からのこの値動きを、何と形容して良いのか全く言葉を失いました。

国債先物はどういう訳か、9時21分以来取引が成立しておりません。何が起こっているのか不明。こんなことは初めてですが、単なるシステム上のトラブルなら良いのですが、チョイと不可解。

新興市場はゼファー倒産からの不動産株の下落につられるように、大きく下落しております。今日から値幅が変に細かくなっているのも効いているのかも知れません。

周りに蠅がブンブンと飛んでいるような目障りな数字ですね。

一体誰がこれを考え出したのか?

100万円以上が千円刻みになったのは、機関投資家の裁定取引での鞘抜き防止のようです。では、10万円台はどういう意図があるのか?新興市場は概ね、10万円以上、20万円から30万円程度の銘柄の値動きの良さが1つの売り物でした。

その良さがなくなってしまったのです。今日から。しかもゼファーの倒産に合わせて。

とにかく上がるのか下がるのかさっぱり不明の相場が前場です。

下で指す以外になく、前場は何も約定無し。

蠅がブンブンと飛んでいる新興市場へは行きたくないし、さて後場はどうしたものだろう。前場は朝寝でもしていた方がよかった。
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