風そよぐ部屋

ウォーキングと映画の無味感想ノート

白バラの祈り

2006年02月20日 | 映画
『白バラの祈り』サブタイトル~ゾフィー・ショル、最期の日々~
2005年第55回ベルリン国際映画祭にて最優秀監督賞、最優秀女優賞、エキュメニカル審査員賞を受賞。
佳作だ。


銀座『シャンテ・シネ』。見たのは2月9日水曜だった。
女性デーと言うこともあってか客席はほぼ満席(85%)だった。
行く前はアメリカ映画で英語だったら興ざめだなと思っていたが、ドイツ語のドイツ映画で良かった。

ほぼ二時間セリフが飛び交う。
印象的なこと二点。
・ゾフィー達の処刑の場面で、ギロチンの刃が落ち、その後、真っ黒な場面がかなり長い間30秒ほどの長い時が、2回か3回続いた。
とても重要なシーンと思った。
これほど長い時間無言で黒の画面を続けるのはとても勇気がいることだと思うが、それは映像や、文字や、音などの説明以上にとても効果的と、思えた。
・判決の法廷で傍聴者や看守の表情が最後にはゾフィー達の言動に好意的だったように感じた。
 取り調べの検事も最後には無言ではあったが、そのような態度に変わっていたと思う。

この映画に緊張感を持たせ、成功させたのは、大学構内で「反ナチ」のビラまき(というかビラの放置)前後から処刑までのわずかな時間(逮捕後一週間で死刑)だけを映像に納めたことだ。
それ以前の出来事、例えば彼女たちの生い立ちや家族関係、戦争の現状、ナチスの犯罪、戦争の悲惨さ、逮捕後の彼女の家族達・大学などについて、いっさいと言って良いほどふれない(説明しない)で、逮捕後一週間だけを映し出す。
もちろん彼女のロマンスや、他のセンチメンタリズムもない、余分なものは全て削いでいる。
一週間、取り立てての劇的出来事や事件は起きない。

彼女たちの行動はレジスタンスというにはあまりにもつたなく、幼い。
大学内でビラをまくにしても、周到に調査・準備したとも思えないし、逮捕後への対策なども十分注意したとは思えない、また事件が発覚した現場でビラ配布をすぐ認めて逮捕されてしまったり、と。
また、ナチス下の警察が言論だけの取り調べで拷問をしないなどの疑問も残る。

戦前ドイツ共産党は大きな力を持ち、ナチスと拮抗していたが、ナチスの国会放火事件の謀略などで次第に力を失いほぼ壊滅させられ、多くの国民もナチスに熱狂した。
しかし、この映画の背景・ゾフィーたちに行動を促した「ドイツのソ連侵攻の失敗=ドイツ兵の大量の死」など、ドイツ国民も次第にヒトラーナチスへの幻滅や疑問が浮かんできていた。そうした時代の雰囲気が法廷・検事・看守たちのゾフィー達を見る態度への微妙な変化に表れたと感じた。

映画の最後のシーン=連合国軍の飛行機が「白バラ団についてのビラ」を大量にまく。私にはこのシーンは蛇足に思われた。
それまでのシーンが暗く緊張の連続、最後だけは希望に満ちて明るく、って感じで安っぽく感じた。
暗い画面、無音で、ただ「ビラがまかれた」とコピーを入れる方が良かったと思う。
これまで「白バラ団」のことは知らなかった。
白バラ団が、ヒトラーが蜂起で失敗した地、ミュンヘンで活動したことは、歴史のめぐりあわせなのか。




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