評価が微妙に難しい作品です。
1956年10月23日、ハンガリー蜂起を知った東ドイツの高校生の一クラスが授業前にその蜂起に共感し2分
間の黙祷をします。高校当局、政府、秘密警察による執拗な捜査が始まります。この映画の背景はハンガリー
蜂起ですが、その経過や評価などが直接のテーマではありません。様々で巨大な権威・権力が市民・個人・家族・
祖先を監視し、脅迫するサスペンスです。この点からの映画はよくできているのですが、高校生の内面の苦悩
の描き方が一面的過ぎるのです。もっともそれはこの映画の直接のテーマではありませんが。高校生を演じた
俳優がどう見ても高校生には見えないのが一番の難点でした。頑強に見える恐怖のシステムは、いつかは崩壊
せざるを得ないと予感させます。
時代は、本格的な冷戦が開始されます。当時の社会主義社会は「希望という名の列車」でした。ハンガリー市
民の民主主義を求める蜂起に、「希望であったソ連」の戦車が介入し、市民を虐殺します。この出来事は、世界に
大きな衝撃を与え、日本では「反スターリニズム」と日本共産党の批判勢力、いわゆる「新左翼」が生まれ、また、
ベルリンの壁が作られる遠因の一つになりました。
ベルリンの壁が作られたのはこの蜂起の5年後1961年、その壁が崩壊したのは約30年後の1989年、東西ドイ
ツ統一はなんとその1年後でした。当時のベルリンの東西を分ける壁はまだなく、比較的自由にその往来がで
きました。このクラスの生徒の多くが、警備が緩やかになるクリスマス休暇で列車に乗って西ベルリンに脱出
しました。
今、世界は大きく揺れています。「希望であったEU」、香港と中国、北朝鮮、そしてアメリカ合衆国などなど。
【11月11日】