

2004年/南アフリカ・イギリス・イタリア/122分
■2004年アカデミー賞 主演男優賞・助演女優賞・脚本賞ノミネート
■2004年度トロント国際映画祭 観客賞受賞
■2005年度ゴールデン・サテライト賞(ドラマ部門) 作品賞受賞/主演男優賞受賞/オリジナル主題歌賞受賞
有楽町シネカノン 佳作である。
ルワンダは第一次世界大戦まではドイツ、第一次世界大戦以降はベルギーの植民地、
1962年に独立を果たしが、かつての宗主国は少数派民族であるツチ族を優遇、多数派フツ族を冷遇、分裂支配する国家が成立した。抑圧されて来た多数派フツ族を中心とする勢力が1973年にクーデターを起こし、逆にフツ族がツチ族を支配する。こうして1990年10月に内戦が勃発した。
1993年8月和平合意に至ったものの、1994年4月フツ族のハビャリマナ大統領を乗せた飛行機が撃墜されたことに端を発して、フツ族によるツチ族の大量虐殺(ジェノサイド)が始まり、一説には約100日間で国民の10人に1人、少なくとも50万人が虐殺されたとされる。
ソマリア内戦で介入・失敗したアメリカを中心とした国連は、ルワンダへの介入には消極的となり、撤退した。
ルワンダには特別な鉱山資源・石油やダイヤモンドなどがないことから介入しても利益はないと判断したのだ。国際的な対処が遅れたことがこの悲劇を拡大させた。
しかし、根は帝国主義の植民地分割・支配、独立後もその支配力を持続させようとして分断支配した大国の無責任さこそがこの悲劇を引き起こし、拡大させたことは疑いがない。
さて、映画はこの悲劇を極めて抑制して描く、虐殺描写はない。
また主人公のポールの生い立ちや、その家族の歴史にも全くふれない。
ツチ族・フツ族の対立の歴史もふれない。
大統領の乗った飛行機の墜落を機とするフツ族の乱暴が始まる。
言いたいこと・描きたいこと・説明したいことはたくさんあるだろうに、それは触れない。
『白バラの祈り』もそうであったが、説明したいことを描かないで、生起する現実を坦々と描く、そこに迫力と緊迫感がある。
フツ族だけを一方的に悪く描かず、責めることもしない。
内戦終了後ポール達家族はベルギーで生活することになるが、そうした後日談も映像で描かないで、短い文章だけで表現したのも良かった。
映画製作は「南アフリカ・イギリス・イタリア」となり、出演俳優はアメリカ・イギリス他となっている。
どのような経過でこの映画は作られたのだろう。
最後に流れた「歌」は良かった。
「アフリカ合衆国、アフリカキングダムはどうしてできないの?」との問は、アフリカだけでに向けられた問ではない。
だが、使われる言葉が英語、は残念。
水曜日で1000円、約180人くらい。