関東遠征2日目の14日。この日の東京は風がやや冷たいものの空はくっきりと晴れ渡り、どこかに行くには申し分ない天候である。
この日の午後からはミューザ川崎シンフォニーホールで行われる「第6回ジェントルハートコンサート」を観に行くのだが(実はオリックス・バファローズがオープン戦で横浜に来ていたのでそちらにも行きたい気持ちもあり・・・何でこうイベントが重なるかね)、それまでの間をどう過ごすか。
五反田のホテルを出てから一度品川へ。帰りの新幹線はここから乗車するので荷物をロッカーに預け、再び山手線で向かったのは恵比寿。電車を降り、ヱビスビールのCM曲である「第三の男」のテーマソングの発信音を聞くと、「ああ、ヱビスビールが飲みたい!」と思わせる。
とはいうものの、恵比寿駅のホームには福山雅治がCM出演する「アサヒスーパードライ」の大看板が飾っていたりする。CMから私が受けるかっこよさでいえば、私の中学生・高校生時代に出演していた落合信彦氏みたいに、「ビシッと仕事を終えた後の一杯、デキる男の一杯」という感じのCMが続いていたスーパードライのほうが好みなのだが・・・・。
それはさておき、動く歩道にて恵比寿ガーデンプレイスへ向かう。ここで訪れたのは東京都写真美術館。東京在住時代にはついぞ訪れることのなかったスポットである。東京の北東部に住んでいたこともあり、鉄道沿線の雰囲気もガラリと変わる山手線の南西部というのはなかなか行くことがなかったということもある。
この日の企画展示は、「森村泰昌・なにものかへのレクイエム~戦場の頂上の芸術~」である。実は今回訪れてみようと思ったのが、森村泰昌氏がアインシュタインやレーニン、毛沢東などに自らが扮して「20世紀」というものを表現しようというのをNHKのニュースで紹介していたのを見たことから。もっとも、知らなかったのは私だけのようで、彼のその自らが「なる」」という変身型セルフポートレイトというのは80年代からずっと続けてきた表現手法というもののようだ。
この展示では「20世紀」を写真の世紀、あるいは戦争の世紀として表現しており、上記のアインシュタインやら毛沢東のほかに、三島由紀夫が自衛隊に蜂起をうながした市ヶ谷での演説を動画で再現したり、社会党・浅沼委員長の刺殺事件(生々しい報道写真で有名)を写真で再現したり、ナチスのヒットラーおよび映画「独裁者」でそれを表現したチャップリンの真似をしてみたり(物真似タレントみたいに、独特のノリツッコミがちりばめられているのが思わず笑けるところ)、ピカソやチェ・ゲバラも出てきたり。レーニンの演説では、大阪は西成・釜ヶ崎の労働者をソ連の労働者に扮しさせるという芸の細かさ(写真の群集の中には、「新喜劇よりオモロイやんけ」と言っている人が絶対おるはずやと思うんですが・・・)。
最後は、20世紀のターニング・ポイントである1945年をテーマにした「戦場の頂上の旗」ということで、森村氏が敗残兵とマリリン・モンロー似の女性の二役を演じ、最後に頂上に旗を立てるという映像作品もあった。もっとも、鑑賞している人の中には、森村氏が女優から敗残兵に衣装替えをするシーンを見て「何だ、オカマか」と舌打ちして立ち去る人もおり・・・。
全体として、鑑賞するに「オモロイなあ」と笑える作品もあれば、「ものまね王座決定戦」に見えるものもあれば、難解で「どうなの??」という一枚もあり。ただここで大切なのは、似ている似ていないではなく、現在の21世紀に直接つながる過去としての20世紀をどのように描くか、過ぎ去り失われていく「何か」に対してどのように敬意を表するかということ。
帰りには荷物になるが図録を購入。ブログに画像を掲載できないのが残念だが、改めてじっくりと眺めてみることにしよう。そうすることで「20世紀」の位置づけというものを自分なりに多少は感じることができるだろうから・・・・。