まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

『日本の珍地名』

2010年03月23日 | ブログ

「珍地名」と聞いて思いつくものは、「難読駅名」。特牛とか及位とか、何でそう読めるかな??と思わせるものである。

ただ、本書『日本の珍地名』(竹内正浩著、文春新書)は、本の帯に「こんな名前に誰がした?」とあるように、平成の大合併で誕生した全国津々浦々の「トンデモ地名」を紹介したものである。

9784166606979_2鉄道旅行などで出かけると、「確かここは●●町だったよな」というところが、聞きなれない「××市」に変わっているのに出会うことがある。道路地図とか、旅行記、観光ガイドなどで耳なじんだ名前が、何だか人工臭のする市の名前になっていたり。本書はその「珍地名」を切り口にして、そういう地名を産み出した「平成の大合併」のあり方について検証し、一石を投じた一冊である。

地名変更のパターンはいくつかあるようだが、その主なものは「合併する自治体の漢字一文字をひっつけて新市名にする」「その地域や旧国名に、"東西南北"や"新"とか"州"などをつける」「"さくら"とか"みどり"のような、住宅街にありそうな一般名詞を自治体の名前にする」「地域名、名所旧跡の名前をひらがなで表記する」といったところだろう。

この中で私がうーんとうなったのは、「地名相似」のくだり。例えば、現在伊豆半島には「伊豆市」と「伊豆の国市」というのがある。他には「西伊豆町」「南伊豆町」「東伊豆町」というのがある。ちなみに「伊豆市」は修善寺や土肥、天城湯ヶ島などを含み、「伊豆の国市」は韮山や伊豆長岡のあたりという。筆者はこれを「伊豆の明確な像を結ぶよい町名が揃っているのに、それをあっさり葬るのは何億円もの広告効果をむざむざ失った」とする。

この他には、山梨県の県庁所在地・甲府市に似た地名として「甲州市」「甲斐市」とあり、県名の「山梨市」もあり、「県外の人間には何が何だかわからない」というものとか。

確かに、住んでいる人から見ればブランド力があり、県外の人からも憶えてもらいやすい名前、そしてあまり奇をてらわない名前というのを選びたかったのかなというのはある。ただそれがために同じような地名が誕生して、却って町の個性を埋没させているのではというのは皮肉なものである。

これ以外には、新しい市名を選ぶ段階でお互いが譲らず、ために合併そのものが破談になってしまったりとか、ブランドを期待したが却って失笑を買ったことで有名になったりとか、この地名紹介を通して、「平成の大合併とは一体なんだったのか?」と問いかける。最後には苦しい地方自治体の財政状況にも言及している。

確かに名前の産まれたいきさつを見るに、政治色が強かったりショー的な色合いというのを感じるところはあるのだが、どうだろう、これが10年20年もすると、耳のほうもそれなりになじんでくるのではないかなという気がする。現在当たり前のように使っている市名も元々は自治体の合併による「造語」であるものも多いし。

結局は、その名前が浮いたものにならず地に足がつき、なおかつ実体が名前に勝つくらいの姿があるかということだろう。合併したおかげで行政サービスも向上し、観光へのPRもできた、いろいろとおカネがいいほうに回って地域の活性化にもつながった・・・そういう実効があるかどうかだろう。残念なのは、合併にあたりそういう実効面で大いにプラスになったという評判があまり聞こえてこないことだが。

twitter上でもさまざまな「地域活性化」についてのTLを見ることがあるのだが、その多くの方が「どうすれば??」と苦労していらっしゃるようである。残念ながら、「市町村合併」や「新地名」が地域活性化に大いに貢献したというコメントは見られない。本当の豊かさを実感するには、そこに住む人たちが自分たちのアイデアと力を寄せ合って、自分たちに近いところで活性化につながる試みがどれだけ成功するかなのかなという気がする。そして、それに行政がどのくらい応えているか・・・・。

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