まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

日本最南端の列車に乗る

2010年05月13日 | 旅行記H・九州

Dscn9391 指宿枕崎線の山川を11時43分に発車。2両編成の列車はボックス席一つに一人ほどの割合の乗車率である。もっともその半分くらいは旅行者や「その筋」とおぼしき乗客である。これから目指すのは日本最南端(沖縄は除く)の終着駅・枕崎である。逆の意味での「最果て」路線である。ちなみに枕崎まで行くのは1日6往復のみで、この列車の前は朝の6時に指宿を出る便というから、列車で行くこと自体が貴重なことである・・・。

周りにイモ畑が広がり、住宅が少し見えるという車窓。山川を出て10分ほどすると車内が何だか落ち着かない雰囲気になる。

11時54分、列車は西大山に到着。

Dscn9395 そう、ここは「日本最南端」の駅(くどいですが沖縄は除く)である。駅そのものはホーム1本きりであるが、ホームの先には日本最南端を示す標識が立ち、その正面には薩摩富士・開門岳がそびえるという、開放的な雰囲気の駅である。

Dscn9394 この駅を見るのは3回目。初めては18年前の指宿枕崎線の乗りつぶしの時。そして2度目はもう10年ほどになるか、薩摩・大隅半島を訪れた際にレンタカー利用で西大山駅に直接乗りつけたことがある。2度目の時は駅周辺を観察する余裕があったが、駅の周りは砂利に覆われた原っぱのようなところで、通学に使うのかホームの横に自転車が無造作に置かれていたのを憶えている。

Dscn9396 それがこの日来てみてどうだろうか。ホームには黒山の人だかり。全てが鉄道に興味があるというわけではなく、ドライブでやってきた観光客も多いことだろう。列車がやってきたというので一斉にカメラを向けて記念撮影を始める。えらい人気、駅が観光地となっている。

Dscn9399 JRのほうもその辺りを心得ているのか、列車行き違いがあるわけでもないのに2分停車というダイヤである(まあ、急いだところでどうなるものでもないし)。車内からも多くの客が一旦降りて「列車、最南端の標識、開門岳」の3点セットの構図での写真を撮る。

原っぱだった駅前はきれいに舗装され、ちゃんとレーンのある駐車場になっていた。確かに珍しさ、「日本最南端」という響きはよく観光客が訪れるところになるのは喜ばしいことなのだろうが、その分最果て路線の風情が少し薄れたような、何とかいう「秘境駅」の大家が見れば「こんなの秘境じゃな~い」とか言って暴れだすであろう雰囲気である。

Dscn9404 しばらくの撮影タイムを終え、またここから乗車してくる人も何人かいて出発。一時の賑わいを見せた西大山を発車すると、後は淡々と枕崎を目指す感じとなる。

快晴の中、イモや大根の植わった畑の中を行く。不思議なことに水田というのを一つも見ない。地質がそうさせるのだろうか。

それにしても、ローカル線らしくよく揺れる。左右に揺れるのはまだわかるが、上下の運動というのも結構きつい。路盤に雑草が生い茂っていたり、左右の雑木林の枝が窓ガラスをたたきつけたり(窓を開けていると結構恐い)結構ハードな路線である。こういう乗り心地も含めたローカル線というものを楽しんでほしいといいたげな感じ。

Dscn9419 山川から1時間、終点・枕崎に到着。かつては立派な駅舎があったのだが現在は取り壊され、再開発のために駅そのものも少しずれている。現在の枕崎駅は駅舎もなく、ホーム一本きりの小ぢんまりした姿。

Dscn9418 それでも日本最南端の終着駅を示すものは多く、ここも記念撮影のスポットには事欠かない。この列車で来た30~40名ほどの客の多くがカメラを構えて駅の風情を写す。

Dscn9422 さて、ここまで来た客の行動パターンは二つ。一つは、30分後の折り返し便で指宿方面に戻る客。そしてもう一つがもう一本後の列車(3時間後)で戻るとして、食事に出る客。今回の私の予定では後者のパターンで指宿経由鹿児島中央に戻るということになっている。せっかく枕崎に来たのだからと、まずは昼食を取ることに。

前日の夜に薩摩の名物をいろいろ味わったものだが、まだだったものがもう一つ。それは枕崎のカツオである。駅前にカツオ料理を食べさせるということで2軒見つけたが、1軒がかなり待つ感じで、結局駅に近い「一福」という料理屋で「座敷の相席でもよければ」ということですぐ案内してくれたのでそちらへ。

座敷では一人の男性が定食の来るのを待っていた。私が腰掛けると「どちらから来られました?」と声をかけられる。聞くところでは大阪からの一人旅とのことで、GWに九州を列車で回っているとのこと。「それにしてもさっきの列車はキツかったな・・・」と言い、「これから3時間もどこで時間つぶしたらええねん」とボヤく。そちらの定食が先に来たので食べ始める。

Dscn9420 私も注文した定食が、カツオのタタキ、はらんぼの天ぷら、酒盗、内臓の煮付けなどの乗った定食。

Dscn9421 そしてオプションで注文したのが、「ビンタ」と呼ばれるカツオの頭部の煮付けである。まさにカツオのオールスターキャスト。一匹のカツオをきちんといただきますよという感触である。これによく冷えた芋焼酎をキュッとやると、暑いくらいの日にカツオの身と合わさって身体に染み渡っていくのが感じられる。ビンタというのも結構身が詰まっており、これを片付けるのにも夢中になる。いつしか相席の男性も先に食事を済ませて行ってしまい、気がつけば1時間を経過していた。

Dscn9427 食後、歩いて15分くらいのところにある漁港に向かう。ここにお魚センターがあり、カツオを中心としたさまざまな海の幸が並ぶ。今回は鉄道の旅ということで大きなものは買えないが、酒盗のビンやら真空パックにされたカツオの加工食品やらを買い求める。

買い物をしているうちにそろそろ時間となり、急いで駅に向かう。え?もう3時間経ったのかと聞かれれば、それはまだ。しかし、先ほどの料理店で時刻表を広げて今後のスケジュールを見るに、「このまま同じ線路を通るより、バスで伊集院へ出て薩摩半島を一周したほうが変化があっていいのでは?」ということで、実は1時間前に出るバスに乗るようにプランを変更したのである。かつて鹿児島本線の伊集院と枕崎の間を結んでいた鹿児島交通の「南薩線」のルートに近いところである。

Dscn9429 14時35分、伊集院行きのバスは私を含め5人の乗客で出発。車内では冷房がきいており、先ほど歩いてきたばかりということでファンをこちらに向ける。いや涼しい。

車内ではAMラジオが流れている(九州の路線バスでこれまで何回かこのようなサービスに出会ったことがあるが、これは九州独特の習慣的なサービスなのだろうか)。ちょうど流れて来たのが、山下達郎の「高気圧ガール」・・・・。こりゃ正に夏の感じがするナンバー。

「2000マイル飛び越えて 僕に囁くのさ "Come With Me" 連れて行っておくれ 今すぐに 高気圧ガール・・・・」

(続く)

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