まだ半月前のことをウダウダと綴っています・・・。
さて5月4日、鹿児島市内に滞在中。この日の朝はホテル内の天然温泉で朝風呂を使う。朝食もホテル内のレストランで済ませ、私の旅行としては結構ゆったりしたモードである。
この日の午前中は鹿児島中央駅近くで過ごすことにしている。2泊したホテルをチェックアウトし、大きな荷物を宅配便で出した後にやってきたのはナポリ通り。イタリアのナポリがベスビオ火山、鹿児島が桜島とそれぞれ火山を前にした港町ということで姉妹都市の関係があり、そのためについた名前という。ナポリ通りにナポリタンを出す店があってもいいかなと思うが、どうだろうか。
やってきたのは「維新ふるさと館」。薩摩といえば明治維新の中心的な役割を果たした藩である。その幕末から明治にかけての激動の時代に焦点を当て、薩摩の英雄たちのことを紹介しようというところである。
とはいうものの史料ばかりを集めた堅苦しい雰囲気ではなく、ビジュアル面やハイテクを駆使した展示がされているという。鹿児島の博物館といえば鶴丸城内にある黎明館があり、以前に鹿児島を訪れた際に入館したこともあり結構充実しているなという感があったが、現在観光客向けに大きくPRしているのはこちら「維新ふるさと館」のようである。
中に入る。1階では明治維新を成功させた薩摩藩の動きについて紹介されている。2年前だったかの大河ドラマで注目された篤姫に関するコーナーや(主演の宮崎あおいさんが撮影で着た衣装も展示されていた)、西郷隆盛と大久保利通の徹底比較などがある。
西郷と大久保・・・同じ町内の生まれで志を同じくして維新に力を尽くしたが、その後の政策面での対立もあり最後は西南戦争で激突、西郷はここで自刃する。そして大久保もその翌年に東京で暗殺される。それぞれに激動の人生を歩んだわけだが、歴史上の人物の人気の面から両者を見るとダントツで西郷のほうが圧倒的人気もあり、ものの本によれば地元・鹿児島ですら大久保に対する評価は冷たいもので、いや鹿児島だからこそ「あいつはダメだ」というボロクソの悪評になったのだろう。最近までその差というのは露骨なまでのものがあったという。
ところがここに来て、政治家として日本を近代国家に導こうとして取り組んだ大久保の業績も少しずつ評価されているという。この「維新ふるさと館」でも二人をほぼ同列に扱い、比較することで西郷の人間性を称える一方で、実務家としての大久保の評価もしようという姿勢が見えた。このような正反対の二人だったから薩摩が強い力を発揮して維新の大きな原動力になったともいえるだろう。また二人もそのような持ち分をよくわかって認め合っていたからこそ力が出せたのだろう。
「維新ふるさと館」ではこんな二人も生まれ育った「郷中教育」にも焦点を置いている。子どもの頃から先輩が後輩に武士の心構えを教え導くという薩摩の伝統で、そこで教え継がれた武士道が維新の原動力の一つになったというものである。コーナーでは自分が郷士の一人になって藩校で学んだり同世代の(将来の)英雄たちと出会いながら、シュミレーション方式で郷中教育の様子を学べるゲームがあった。時間も限られているので少し触っただけだが、展示コーナーだけではなく、実際のパソコンソフトなどで売られていれば購入してプレーしてもいいかなと思わせるほど。
さて地階に下りる。ここでは「維新への道」ということで、維新の前後での薩摩藩、そして志士たちの生き様を映像と人形で20分ほどのストーリーで上映される。西郷、大久保のほかに村田新八、坂本龍馬、勝海舟の人形が場面場面で登場し、演出効果を引き出す。この手の上映、その時はムードと演出にうならされるのだが、終わってしばらくすると「あれは結構難しかったかな」と思わせることが多い。
このシアターの外では人形やスライドなどで維新前後の紹介がされており、解説の音声と目の前の人形などでコンパクトにまとめられているために結構わかりやすい。子どもや若いカップルもこういう演出には結構引かれるもので、史料ばかりが並ぶ博物館より親しみやすく学べるのではないかと思う。
2時間あまりをここで過ごした。「維新ふるさと館」のある辺り、加治屋町あたりは薩摩藩時代は下級武士の家のあるエリアだった。実際に当時の家屋を復元したものもある。
そしてこの辺りは西郷隆盛・従道兄弟を初めとして明治時代に政治・軍事の面で活躍した人たちの生家跡が多いところ。それだけ、明治維新、近代国家への足がかりは下級武士がつくったということが余計にわかる。
さて、2日の夜から過ごした鹿児島ともそろそろお別れとなる。鹿児島中央駅で早めの昼食を取った後、都城行きの普通列車で鹿児島の街を後にする。また錦江湾沿いに走るが、この日も黄砂の影響か、桜島は本当に薄く薄くしか車窓に映らない。ちょっと残念な気もしたが気持ちを落ち着けて隼人着。
これから、またまた肥薩線に乗ることにする・・・・。(まだ続く)