交流戦の残り半分が始まる。オリックス・バファローズは甲子園での阪神戦。交流戦も10年目となるが、いわゆる「関西ダービー」を生で観戦したことがなかった。ましてや甲子園球場では。
その甲子園での初戦となった6日の試合、「とあるご厚意」をいただいて、一塁寄りのネット裏指定席で観戦することとなった。個人であれば絶対に入ることのない甲子園の阪神側。それだけに貴重な経験だし、新鮮な感じがする。甲子園での野球観戦といえば、3年前の東日本大震災の影響で仙台での試合ができなくなった楽天が、代替地として甲子園でオリックス戦を開催した時以来である。
平日の試合のことでプレーボール直前は外野席でも空席が見られるが、オリックスファンはといえば、この位置。ビジター応援席を限定するのはトラブル防止のためには仕方ないのだろうが、ちょっと少なくないか?同じ「関西ダービー」と言いながらもやはり「阪神の上から目線」という現実を感じてしまう。雨の中大変であるが、人口密度が高い分、ファンの思いは熱くなることである。
先発は阪神・能見、オリックス・金子の両エースである。これだけでも見に来た甲斐があるといものだ。ローテーションや登板間隔から行けば金子は7日の第4戦かなと予想されていたが、あえて中5日、能見との投げ合いを金子が志願したとか。
まず能見。先頭のヘルマンのバットをへし折る内野ゴロに始まり、平野がヒットを放つものの糸井、ペーニャと連続三振。
一方の金子。雨の影響か、中5日の影響か、立ち上がりちょっと制球が定まらない。先頭の上本に四球を出し、その後二死二塁で4番・ゴメス。前回の試合はノーヒットで9回を投げ切ったが、久しぶりに打たれたヒットが先制のタイムリーとなった。これで早くも阪神ファンのボルテージが上がる。後でネット記事を見ると、金子の連続無失点が21イニングで途切れたという。逆に、21イニングも無失点だったんやなあと改めて感心してしまう。
これで今の元気がない打線はどうなるか。2回はT-岡田、縞田が連続三振。3回は平野の強烈なピッチャー返しの内野安打もあり二死一・三塁のチャンスを迎えるも糸井が凡退。う~ん、またズルズルと、エース見殺しでいってしまうのか。
3回には鳥谷がライトへのホームランで2対0となる。まだソロだったからよかったものの、やはりどうもいつもの金子とは違う。この時点で正直この試合は厳しいなと思った。この頃にはソフトバンクがカープ相手に大量リード。とうとうパ・リーグ首位陥落ということになるのか・・・。
オリックス打線もチャンスがなかったわけではない。6回には平野がヒット、糸井三振もペーニャが四球を選ぶ。しかし坂口、T-岡田が2者連続での見逃し三振。打線の不甲斐なさを嘆くも、ここは能見の投球を褒めるしかない。
7回裏の甲子園名物の風船飛ばし。改めてナマで見るとものすごい光景である。金子は6回で降板。調子の悪い中、よく2点で抑えたというところ。ただ7回は代わった中山から鳥谷が2打点目となる二塁打を放ち、ダメ押しの3対0となる。こうなれば能見が完封するのか、何個三振を取るのか。オリックスはせめて1点でも返してくれるのかというところ。
そして運命の8回表。ここまで奪三振ショーを見せていた能見が先頭のヘルマンに対して珍しくストレートの四球。そして暴投。平野がこの日4安打目となるライト前ヒットで無死一・三塁と最後のチャンスを作る。ここでここまでピリッとしなかった糸井。無死なら、何らかの形で1点は入るだろう・・・果たして、ボテボテの内野ゴロとなりその間に1点返す。やれやれ、完封は逃れた。
ここで阪神ベンチが動く。能見交代である。球数か、あるいは右のペーニャを迎えたからか。それでもここまでの好投にはスタンドから大きな拍手が送られる。登場したのは福原。どうなのかな、ペーニャ一人だけに投げて、坂口、T-岡田には加藤あたりをぶつけるのかな。同時にキャッチャーもルーキー梅野から清水に交代。
さあペーニャ、ドカンと一発・・・とはいかず凡退。福原はそのまま続投で、坂口が粘って四球を選ぶ。ここでT-岡田。ここで一発なら逆転、凡退ならもうそのままジ・エンドである。
そして振り抜いた打球は・・・見事に右中間の一番深いところへ。甲子園のスタンドの歓声が一気に悲鳴に変わる。私を含め、周りで拍手していた人は5人くらいいたかもしれないが、それ以上に容赦のないヤジが飛ぶ。打たれた福原は仕方ないとしても、和田監督の采配に対して。
8回裏、逆にオリックスの勝ちパターンとなりまずは佐藤達が登場。ただここは甲子園、1点差。先ほどのT-岡田のこともあるから気は抜けないのだが、何とか無失点に切り抜ける。もう時間もだいぶ経っていたのだが、ここでまた強い雨が降ってきた。それを潮にスタンドを後にする人も多かった。
9回は平野佳が登板。ゴメスに四球を出したが、次のマートンは死球の影響もあってか退いており、代打関本。これを難なく三振に切って取り試合終了。4時間近い熱戦は、T-岡田の逆転本塁打といういいものを見せていただいて大満足。本当に、このような試合を観戦させてもらうご厚意、機会をいただいたことにも感謝してます。
雨の中、レフトスタンドで熱い声援を送り続けたファンの皆さんもお疲れ様でした(何か、屋根の下でぬくぬくと観ていた者からすれば頭下がります)。
さて大観衆が向かうは甲子園駅。中には和田采配や福原の投球への不満で荒れた様子の方もいたが、ほとんどはぐったりお疲れモード。本当は私も大声で歓声を挙げたいところだが、余計なトラブルになってもいけないのでそこは抑えて満員の阪神電車に乗り込む。でも傍から見れば思いっきりニヤついて怪しい表情になっていたかもしれない。
帰宅は遅くなったが、夜のスポーツニュースでは両エースの投げ合い、そしてT-岡田の見事な本塁打を伝えてくれた。それを見て満足である。
・・・ただ一つ苦言。この記事を書きながら某朝日放送の朝の番組を見たのだが、「関西ダービー」などと言っておきながら主語は全て「阪神」。さすが「虎バン主義」を名乗るだけのことはあるが、関西の放送が関西の球団を一番ないがしろにしていた。これが阪神が能見でそのまま勝利したのなら何も言わないが、オリックスが勝ったらそちらを称える報道があってもいいのではないかな。挙句の果てに最後は「今日は阪神、勝ってください」と締めるアナウンサー。そらあかんやろ・・・(嫌なら見なければいいだけのことだが、あまりにもこの局の姿勢には目に余るものがあるので、蛇足ながら書いておく)。