郡家から若桜鉄道の1両の気動車に乗る。特急から乗り継いだのは私だけで、車内には男性の乗り鉄1名と、地元の人らしい親子連れが一組いるだけ。そんな車内だが車掌も乗務している。普段はワンマン運転なのだろうが、正月だからだろうか。
そしてもう一人、運転台の後に立っている。ボランティアガイドの名札がある。これも正月のサービスだろう。この後終点の若桜までいろいろと沿線のガイドをしてくれて面白かったが、数人の客では張り合いが少なかったかな。
甲子園にもたまに出場する八頭高校の横を通る。ガイドによれば野球だけでなく、ホッケーが強いとのことで、卒業生の中にはオリンピックのメンバーもいるそうだ。
次の因幡船岡ではかかしがお出迎え。地元の人たちの発案で、若桜鉄道の活性化の一環で「ふるさとの駅づくり」を行っている。何でも、同じ鳥取県の西にある境港や同地を走る境線が、(先日逝去した)水木しげる氏ゆかりということで妖怪を前面に出しているのに対抗して、「西の妖怪、東のかかし」というPRである。この後あちこちの駅でかかしが登場する。
次の隼。木造の駅舎が残る。ホームの横には電気機関車と1両の客車。かつて「ムーンライト高知」等として走っていたのを譲渡されたもので、「ムーンライトはやぶさ」というプレートがつけられている。
この隼、ライダーには有名なスポットである。バイクのことはよく知らないのだが、同じ名前の名車があり、その愛好家たちが訪れる。はやぶさに乗って隼駅に集うイベントも行われたそうだ。
安部駅はホーム1面だけの駅だが、ホームのベンチにもかかしがいる。ガイドが「どこかで見た姿ではないですか」と話す。そう、寅さん。映画 「男はつらいよ」のロケがこの駅で行われたのだとか。因美線の美作滝尾駅もこの映画のロケ地の一つだか、ローカル線の木造駅舎というのが寅さんの世界にはよく合うのだろう。木造駅舎というのも希少価値がある。カネがあれば新しい駅舎に建て替わるし、カネがなければ壊されて簡易なものになる(中には貨車を改造した駅舎などというものがある)。木造駅舎が残った事情はいろいろあるだろうが(大切に残そうというものもあれば、壊すカネがもったいないからと放置されていたものもあるだろう)、ここまで来ればこれからも大切に残してほしいと思う。
それはさておき、まだ若桜鉄道の切符を買っていない。終点で精算かなと思っていると、車掌が声をかけてきた。1日乗車券もあるという。往復するだけでも割安になるので買おうとすると、「どれにしますか?」とサンプルを出す。今は珍しい硬券で、しかも図柄は5種類。鉄道ファンを多分に意識した商品である。もちろん買ったのは1枚だけだが、中には全種類集めるという強者もいるだろう。
終点若桜に到着。こちらはかかしだけでなく人間の駅員も総出でお出迎え。ガイドのお兄さんもお疲れ様。
若桜鉄道の大きな売りはこの構内にある。ただ間近で見るには、乗車券とは別に300円の入場券が必要である。まあ、維持費に充てられるということでうなずけるし、鉄道ではなくクルマで来る人についてはなにがしかは取ってもいいだろう。
それが蒸気機関車。以前来た時には構内運転として若桜駅内を走っていた。この時に運転台に乗り、動く蒸気機関車を初めて直に感じることができた。今は冬で運転は行われておらず構内で休んでいるが、この機関車を若桜鉄道線内で本格的に復活させようという動きもある。実際の線路で試運転もされている。
そのSLに続いて並ぶのはディーゼル機関車。これは初めて見た。リアルタイムに乗っていないSLとはまた違い、ディーゼル機関車は実際に客車列車に乗ったことがあるぶん、個人的には親しみと懐かしさをより感じられる。
若桜駅構内には機関車だけでなく、客車も新たに留置されている。これもSLに客車を牽引させて走らせるためのものだろう。いつの日になるかだが、これは楽しみだ。
もう少し時間があるので、駅前を歩く。若狭は関西と鳥取を結ぶ因幡街道の宿場町である。駅前に昔ながらの町並みがある。蔵通り、寺通りという看板も出ている。表通りを一つ入ったところは、同じ鳥取にある倉吉をコンパクトにしたようなイメージが浮かぶ。若桜は結構古い町並みの穴場、若桜鉄道とセットするとよりレトロ風情が満喫できるところだ。
そんな中、こんな看板を見る。こういうところの看板はキリスト教に関するものが多いイメージがあるが、そこには「貧しく維持出来ない土蔵群を 豊かな自治労は暗いものにするな!」と書かれている。これを見てその時は何が言いたいのかわからなかった。帰宅後にネットで検索すると、所謂古い町並みがある自治体の悩みがあるのかなと窺えた。
昔ながらの町並みというのは、その町にとっては貴重な観光資源。当然、その維持に力が入る。中には建物に手を入れること自体がハードルになっている町もある。観光資源は維持しなければならない、だから地元の方々にはちょっと負担していただいて・・・というところだが、それも限度があるだろう。若桜の場合は、どうにかこうにか町並みは維持しているが、そこに自治労という名の力が変に働いていないかという危惧があるようだ。
こう書かれると、古い町並みの風情というのを普通に楽しむのに少しずつ罪悪感を覚える。そこに住んでいる人たちは貧しく苦しい生活を送っているのに、訪れる人たちは上から目線で見せ物を楽しみ、根本のところでは田舎を嘲笑っていると。本音はそうなんだろう。その上で、町起こしだなんだと言っても、所詮は権力とズブズブの自治労だけが潤うと。
これは若桜に限らずあちこちで問題になっていることだろう。これが現実なわけだが、何だかなあ・・・。
古い町並みを観光気分で見物する、というのは、きれいごとのように見えて、既存勢力とか、結局は地元の大地主にしかカネが回らないことなのか。そういう現実の中、のほほんと「風情ありますなあ」と見て回る私ってアホ丸出しやね・・・。
それなら、貧しい田舎は徹底して貧しくなって滅んだほうが、それが現実ということでいいのではないか?いや、滅んでしまえ。根本のところで外から来た人間をバカにするのなら。
さて若桜の折り返し時間もあっという間に過ぎ、出発する。因美線に乗り入れる鳥取行には来た時よりも乗客があり、ローカル線と言えども賑わう。先ほどの景色を巻き戻す形で走る中、沿線では布団を干す家もある。正月で子ども一家が里帰りするのか、あるいはたまたま天気がいいからか。こんな光景が見られるだけ穏やかな天候である。冬の山陰とは思えない。何でもこの日の鳥取の最高気温は17度まで上がったという。
そんな中、駅ごとに少しずつ乗車があり、因美線に入ると立ち客も出る。高架の鳥取に到着。時刻は12時過ぎ、これからしばらく、穏やかな山陰の風情をしばし楽しむことに・・・。
そしてもう一人、運転台の後に立っている。ボランティアガイドの名札がある。これも正月のサービスだろう。この後終点の若桜までいろいろと沿線のガイドをしてくれて面白かったが、数人の客では張り合いが少なかったかな。
甲子園にもたまに出場する八頭高校の横を通る。ガイドによれば野球だけでなく、ホッケーが強いとのことで、卒業生の中にはオリンピックのメンバーもいるそうだ。
次の因幡船岡ではかかしがお出迎え。地元の人たちの発案で、若桜鉄道の活性化の一環で「ふるさとの駅づくり」を行っている。何でも、同じ鳥取県の西にある境港や同地を走る境線が、(先日逝去した)水木しげる氏ゆかりということで妖怪を前面に出しているのに対抗して、「西の妖怪、東のかかし」というPRである。この後あちこちの駅でかかしが登場する。
次の隼。木造の駅舎が残る。ホームの横には電気機関車と1両の客車。かつて「ムーンライト高知」等として走っていたのを譲渡されたもので、「ムーンライトはやぶさ」というプレートがつけられている。
この隼、ライダーには有名なスポットである。バイクのことはよく知らないのだが、同じ名前の名車があり、その愛好家たちが訪れる。はやぶさに乗って隼駅に集うイベントも行われたそうだ。
安部駅はホーム1面だけの駅だが、ホームのベンチにもかかしがいる。ガイドが「どこかで見た姿ではないですか」と話す。そう、寅さん。映画 「男はつらいよ」のロケがこの駅で行われたのだとか。因美線の美作滝尾駅もこの映画のロケ地の一つだか、ローカル線の木造駅舎というのが寅さんの世界にはよく合うのだろう。木造駅舎というのも希少価値がある。カネがあれば新しい駅舎に建て替わるし、カネがなければ壊されて簡易なものになる(中には貨車を改造した駅舎などというものがある)。木造駅舎が残った事情はいろいろあるだろうが(大切に残そうというものもあれば、壊すカネがもったいないからと放置されていたものもあるだろう)、ここまで来ればこれからも大切に残してほしいと思う。
それはさておき、まだ若桜鉄道の切符を買っていない。終点で精算かなと思っていると、車掌が声をかけてきた。1日乗車券もあるという。往復するだけでも割安になるので買おうとすると、「どれにしますか?」とサンプルを出す。今は珍しい硬券で、しかも図柄は5種類。鉄道ファンを多分に意識した商品である。もちろん買ったのは1枚だけだが、中には全種類集めるという強者もいるだろう。
終点若桜に到着。こちらはかかしだけでなく人間の駅員も総出でお出迎え。ガイドのお兄さんもお疲れ様。
若桜鉄道の大きな売りはこの構内にある。ただ間近で見るには、乗車券とは別に300円の入場券が必要である。まあ、維持費に充てられるということでうなずけるし、鉄道ではなくクルマで来る人についてはなにがしかは取ってもいいだろう。
それが蒸気機関車。以前来た時には構内運転として若桜駅内を走っていた。この時に運転台に乗り、動く蒸気機関車を初めて直に感じることができた。今は冬で運転は行われておらず構内で休んでいるが、この機関車を若桜鉄道線内で本格的に復活させようという動きもある。実際の線路で試運転もされている。
そのSLに続いて並ぶのはディーゼル機関車。これは初めて見た。リアルタイムに乗っていないSLとはまた違い、ディーゼル機関車は実際に客車列車に乗ったことがあるぶん、個人的には親しみと懐かしさをより感じられる。
若桜駅構内には機関車だけでなく、客車も新たに留置されている。これもSLに客車を牽引させて走らせるためのものだろう。いつの日になるかだが、これは楽しみだ。
もう少し時間があるので、駅前を歩く。若狭は関西と鳥取を結ぶ因幡街道の宿場町である。駅前に昔ながらの町並みがある。蔵通り、寺通りという看板も出ている。表通りを一つ入ったところは、同じ鳥取にある倉吉をコンパクトにしたようなイメージが浮かぶ。若桜は結構古い町並みの穴場、若桜鉄道とセットするとよりレトロ風情が満喫できるところだ。
そんな中、こんな看板を見る。こういうところの看板はキリスト教に関するものが多いイメージがあるが、そこには「貧しく維持出来ない土蔵群を 豊かな自治労は暗いものにするな!」と書かれている。これを見てその時は何が言いたいのかわからなかった。帰宅後にネットで検索すると、所謂古い町並みがある自治体の悩みがあるのかなと窺えた。
昔ながらの町並みというのは、その町にとっては貴重な観光資源。当然、その維持に力が入る。中には建物に手を入れること自体がハードルになっている町もある。観光資源は維持しなければならない、だから地元の方々にはちょっと負担していただいて・・・というところだが、それも限度があるだろう。若桜の場合は、どうにかこうにか町並みは維持しているが、そこに自治労という名の力が変に働いていないかという危惧があるようだ。
こう書かれると、古い町並みの風情というのを普通に楽しむのに少しずつ罪悪感を覚える。そこに住んでいる人たちは貧しく苦しい生活を送っているのに、訪れる人たちは上から目線で見せ物を楽しみ、根本のところでは田舎を嘲笑っていると。本音はそうなんだろう。その上で、町起こしだなんだと言っても、所詮は権力とズブズブの自治労だけが潤うと。
これは若桜に限らずあちこちで問題になっていることだろう。これが現実なわけだが、何だかなあ・・・。
古い町並みを観光気分で見物する、というのは、きれいごとのように見えて、既存勢力とか、結局は地元の大地主にしかカネが回らないことなのか。そういう現実の中、のほほんと「風情ありますなあ」と見て回る私ってアホ丸出しやね・・・。
それなら、貧しい田舎は徹底して貧しくなって滅んだほうが、それが現実ということでいいのではないか?いや、滅んでしまえ。根本のところで外から来た人間をバカにするのなら。
さて若桜の折り返し時間もあっという間に過ぎ、出発する。因美線に乗り入れる鳥取行には来た時よりも乗客があり、ローカル線と言えども賑わう。先ほどの景色を巻き戻す形で走る中、沿線では布団を干す家もある。正月で子ども一家が里帰りするのか、あるいはたまたま天気がいいからか。こんな光景が見られるだけ穏やかな天候である。冬の山陰とは思えない。何でもこの日の鳥取の最高気温は17度まで上がったという。
そんな中、駅ごとに少しずつ乗車があり、因美線に入ると立ち客も出る。高架の鳥取に到着。時刻は12時過ぎ、これからしばらく、穏やかな山陰の風情をしばし楽しむことに・・・。