まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

客番「清水寺」~新西国三十三所めぐり・2(大阪にもある清水の舞台と音羽の滝)

2016年01月25日 | 新西国三十三所
四天王寺を出て谷町筋を渡る。この夕陽ヶ丘は閑静な住宅街が広がるとともに、浄土宗を中心とした寺院の多いところである。

そんな一角に、新西国の「客番」という清水寺がある。パンフレットには四天王寺の支院とある。客番というのは、西国の「番外」とはちょっと意味合いが違うようで、どうなんだろう。投票で次点になったとか、高校野球の21世紀枠とか、そんな扱いなのかな。

古くは有栖寺という寺があったとされていたが、江戸時代に延海阿闍梨が十一面千手観音を本尊として祀り中興したという。清水寺というのは、観音像を京都の清水寺から移したからとされている。京都の清水寺といえば世界的にも有名な寺院だが、西国ではもう一つ播州清水寺というのがあった。そして、大阪にも清水寺が出てきた。

その清水寺、こうして石碑は立っているが、寺らしい建物はない。写真の左側の小道を進むと、左側に柵で仕切られた空き地、そして右側に墓地が広がる。左側の空き地には「本堂建設予定地」とある。ただ実際に工事をやっているわけでもなく、空き地も長く放置されているような感じだ。

一方で墓地は整備されており、今でも新規分譲を受け付けている様子。やはりここも「和宗」ということで、宗派問わずいろいろな墓が並んでいる。

その先に広場があり、その名も「清水寺舞台」とある。ちょうど上町台地の端に当たるということで展望が開けている。ここに立てば難波、通天閣、あべのハルカスもきれいに見渡すことができる。元々は京都の清水寺や、同じような造りの長谷寺のように、舞台のすぐそばに本堂があったのだろう。それが全て墓地になってしまったのはいわれがあるのかな(失礼ながら、墓地にしたほうが儲かるとか・・?)。

では本尊はどこにあるかというところで、階段を下りた先の建物の2階が仮本堂である。古い食堂のような建物の扉を開け、靴を脱いで2階に上がる。

仮といっても一応は本尊のいる本堂だから、仏像や仏具などはきれいに並べられている。いやそれでも、本堂というよりはどこか田舎の屋敷の仏間に上げていただいたような気持ちで、寺という感じが薄い。

お勤めをした後、仮本堂の奥にある玉出の滝(パンフレットでは玉手の滝)に向かう。四天王寺の金堂下にある青竜池から流れ出る霊水がここで滝になって出ているものだ。大阪市内で唯一の天然の滝という。

この造りを見て、「どこかで見た」とお気づきの方もいらっしゃるのでは。清水寺にある音羽の滝によく似ている。長い柄杓を差し出して、落ちてくる滝の水を飲むというアレである。

こちらの玉出の滝も飲めるのだろうが、長い柄杓がないのでそれはちょっとできない。ただ、時折この滝に打たれる修行をする人がいるそうだ。脱衣場もある。

舞台と滝・・・ということで、ここ清水寺が、京都の清水寺を模して建立されたことがはっきりする。こういうことからネットでは「大阪らしい珍スポット」として紹介しているものもあるが、寺伝によればこれは清水寺をパクッたのではなく、観音のお告げに従う形で最初から建立したのだという(観音のお告げというのが後付けではないかと言われればそれまでだが)。

仮本堂の1階が納経所になっており、こちらで新西国のご朱印をいただく。号は「清水観音」。書いていただいている間に、窓に貼られた過去の新聞記事の切り抜きを見る。やはり「大阪に清水寺そっくりの寺がある」という書き方である。

それはそうと、これで西国・新西国で清水寺が3つ出てきたわけだが、その記事によれば「清水寺(きよみずでら・せいすいじ)」という名の寺院は、全国におよそ90ほどあるという。そして、京都の清水寺の呼びかけで「全国清水寺ネットワーク会議」というものを立ち上げて活動もしている。寺の成り立ちもそれぞれだが、「水が清らかなところにある」ということで名がついたものもあれば、京都の清水寺と同じく観音を本尊とすることからあやかってその名をいただいたとか、「清水寺ブランド」というのがあるのだろう。

小ぢんまりしているがなかなか味のあるところだった清水寺。で、次にどこに行くかということだが、ここで出てくるのは西国と同じく「くじ引き」と「サイコロ」である。スマホに変えてみて、それぞれアプリがあるだろうと調べてみると、すぐに見つかった。くじ引きアプリは、くじの中身、そして一度に引く回数を端末で設定できる。新西国について各エリアをくじにしてみた。

再び清水寺舞台に上がって、くじ引き。そして出揃ったのは・・・

1.鞍馬(鞍馬寺)

2.御坊(道成寺)

3.長岡京(楊谷寺)

4.大阪市内(太融寺、鶴満寺)

5.太子町・竹ノ内街道(西方院、叡福寺、当麻寺)

6.加西(酒見寺)

京都、和歌山、大阪、兵庫とバランスよく出揃った。そしてサイコロアプリ(こちらも立体的な動きをするようになった)で出たのは・・・・「6」。加西の酒見寺(さがみじ)である。いきなり、西に飛ぶことになった。

ここに鉄道で行くには、北条鉄道利用となる。・・・となるとローカル線の旅も含めて「こういうプランで行こうか」というのが頭に浮かぶ。ただこの通り行くにはタイミングが必要で、新西国はその折を見てというわけで、しばらく間が空くことになる・・・。

清水寺横の坂を下り、再び階段を上がったところにあるのが安居神社。菅原道真が大宰府に流される時に一時休憩したことから天満宮として信仰を集めている。ただそれよりもここが知られているのは、大坂夏の陣で真田幸村が戦死した場所とされていること。真田幸村といえば今年の大河ドラマの主人公であり、昨今の武将ブームとも相まって人気が高い。そのPRの幟も立てられている。

境内には幸村戦没の地の石碑と、幸村の像がある。夏の陣の奮戦で家康を後一歩のところまで追いつめたが、結局家康を討つことはできなかった。戦いの疲労でこの神社で休んでいるところを相手方の武将に見つかり、最後は「自分の首を取って手柄にせよ」と言ったとされている。この像はその時の姿をイメージしたものだそうで、家康を打ち取れなかった無念さと、それでも「やるだけのことはやった」という満足のような表情が見える。こちらはちらほらと参拝者の姿もあり、「幸村像の刀に手を触れるとパワーをいただける」というようなことを言っている人もいた。

これで新西国の第1回、四天王寺シリーズは終了。次の酒見寺に行くのはいつのことになるか・・・?
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