山陰線で鳥取からやって来た浜村。駅前は小さな温泉街である。500年ほどの歴史があり、湧出量は山陰でもトップクラスなのだとか。
駅には民謡「貝殻節」の文字があり、その像に「手湯」がある。この貝殻はホタテ貝で、海底から貝を引き上げる重労働のしんどさを紛らわすために唄われた。「何の因果で貝殻こぎなろた 色は黒うなる身はやせる」
温泉街と言っても高級ホテルが林立しているわけではなく、小ぢんまりとした集落である。5分ほど歩いたところにあるのが「浜村温泉館 気多の湯」。日帰り入浴は430円という、町の銭湯価格。受付で「どちらの風呂にされますか?」と訊かれる。展望風呂と内風呂の2種類があり、それぞれフロアが違い、ロッカーも別になるからのようである。名物は展望風呂とのことでそちらを選択。78段の階段を上がり脱衣場に着く。
結構歴史ある感じの造りで、浴室は年季の入った檜風呂がある。そして外の展望風呂からは浜村温泉の集落と、目を転じれば遠くかすかに日本海を見ることができる。まずまずの眺めである。
貼り紙があり、今年の3月いっぱいで営業を一時休止し、設備点検・改装を行うという。カニのシーズンが終わると山陰もしばらくのシーズンオフになるのかな。ただ建物の老朽化というのもあるようだ。
わざわざ銭湯に入るためだけに気動車に揺られたようなものだが、帰りも同じようにキハ47がやって来る。そろそろ日が落ちてきた鳥取駅に戻る。大阪行の特急の発車が近いこともあって、駅もUターン客で賑わっている。青春18利用の私は、17時55分発の智頭行に乗り、行きと同じく智頭急行で上郡に出る。智頭急行の1日乗車券の効力が発揮される。
乗車前に向かったのは駅弁コーナー。ここで事前に予約をしていた駅弁を受け取る。前の記事で「夕食はとある事情で」と書いたが、その事情というのがこれ。別に弁当くらい普通に買えばいいし、多客期ならば数量も用意されているだろうが、お目当ての一品が万が一売り切れていたらということで。これを受け取り智頭行に乗り込む。こちらもキハ47の気動車で、18時前という時間なのにガラガラ。ボックス席にゆっくり座って食事をすることができる。
そのお目当てというのが「とっとりの居酒屋」。一度いただいてその内容にうならされ、その後鳥取を訪れるごとに予約をしていた。あご、イカ、とうふ竹輪、長芋、カニ、ラッキョウなど、鳥取名物がさまざまな形で入っている。この弁当はビールより地酒がよく合うが、それを見越したかのようにイカの猪口も入っているのが最もインパクトがあった。
・・・と、イカの猪口で一杯というのを期待して蓋を開けたが・・・入っていない。これは期待を裏切られた感じである。箱の大きさは変わっていないので、OUT=イカの猪口、IN=○○ということかと帰宅後に確認すると、鳥取牛の煮込みというのがイカの猪口に取って代わったようだ。イカの猪口が案外人気がなく(作るのも手間がかかりそうだし)、肉の一品も入れてほしいという要望でもあったのだろう。ちょっと残念だが、駅弁そのものの美味さが変わるわけではないので美味しくいただく。
締めは「山陰鳥取かにめし」。これは、この数日前に訪れた福井のかにめしとの食べ比べとなった。本格的にカニを食べることはできないが、駅弁という形なら手軽に味わうことができる。越前と鳥取・・・それぞれのカニを食べるというのも駅弁ならではだろう。味は・・・甲乙つけがたい。
また食べ比べということでは、この日は持ち帰っただけで翌日いただいたが、福井と同様、ひもを引いて温めて食べるカニの駅弁がある。「あったかかにしゃぶ弁当」で、カニの棒肉も入っている。しゃぶしゃぶというよりは、肉入りのカニ雑炊という感じだが、玉子が絡んでいるのもよく、私としては鳥取に軍配。
智頭に着いた時には数人の客となり、ここから智頭急行に乗り継ぐ。30分ほど時間があり、智頭急行の駅舎で待機する。「18きっぷ、使われへんねんて」「1日フリーきっぷってあるけど」と話している客もいる。ちょうど智頭急行の運転手らしいのがやって来たが、「1日フリーきっぷは駅員のいる駅で、窓口が開いている時間にしか買えない」と話す。ただ智頭駅の窓口は18時で閉まるし、車内では発売しないので、その客も残念がっている。
もう後はこのまま大阪に戻るだけだが、次の恋山形で行き違い停車。この恋山形、日本に4つある「恋」の名がつく駅ということで、PRのためにホームにピンク色をふんだんに使い、ハート型の駅名標もある。夜のイルミネーションという演出もよく、停車時間を利用して乗客もホームに出て記念撮影。もっとも、この「恋」の字は地元に何か由来があるわけではない。新たに駅を造るに当たり、客よ「来い」という願いを込めるのとともに、字面がいいということで「恋」をつけたとか。果たして駅名で注目され、恋愛のパワースポット?として知られるようになった。クルマでわざわざ来る人もいるようだが・・・。
この後、あわくら温泉、大原でも行き違いや通過待ちで長時間停車。行きや昼間なら楽しみだが、夜になって早く帰りたいところでの長時間停車は結構しんどい。恋山形のようにホームを見る楽しみがあればいいが、それもなければシートでぼんやり、ウトウトするくらいである。
上郡に到着。ここでも山陽線上りまでの待ち時間が長い。その一方で姫路では乗り継ぎが2分しかなかったりと慌ただしい。鳥取からの帰途は結構時間がかかり、結局帰宅したのは日付がもう少しで変わろうかというところ。久しぶりに1日乗り倒した感じであった・・・・。
駅には民謡「貝殻節」の文字があり、その像に「手湯」がある。この貝殻はホタテ貝で、海底から貝を引き上げる重労働のしんどさを紛らわすために唄われた。「何の因果で貝殻こぎなろた 色は黒うなる身はやせる」
温泉街と言っても高級ホテルが林立しているわけではなく、小ぢんまりとした集落である。5分ほど歩いたところにあるのが「浜村温泉館 気多の湯」。日帰り入浴は430円という、町の銭湯価格。受付で「どちらの風呂にされますか?」と訊かれる。展望風呂と内風呂の2種類があり、それぞれフロアが違い、ロッカーも別になるからのようである。名物は展望風呂とのことでそちらを選択。78段の階段を上がり脱衣場に着く。
結構歴史ある感じの造りで、浴室は年季の入った檜風呂がある。そして外の展望風呂からは浜村温泉の集落と、目を転じれば遠くかすかに日本海を見ることができる。まずまずの眺めである。
貼り紙があり、今年の3月いっぱいで営業を一時休止し、設備点検・改装を行うという。カニのシーズンが終わると山陰もしばらくのシーズンオフになるのかな。ただ建物の老朽化というのもあるようだ。
わざわざ銭湯に入るためだけに気動車に揺られたようなものだが、帰りも同じようにキハ47がやって来る。そろそろ日が落ちてきた鳥取駅に戻る。大阪行の特急の発車が近いこともあって、駅もUターン客で賑わっている。青春18利用の私は、17時55分発の智頭行に乗り、行きと同じく智頭急行で上郡に出る。智頭急行の1日乗車券の効力が発揮される。
乗車前に向かったのは駅弁コーナー。ここで事前に予約をしていた駅弁を受け取る。前の記事で「夕食はとある事情で」と書いたが、その事情というのがこれ。別に弁当くらい普通に買えばいいし、多客期ならば数量も用意されているだろうが、お目当ての一品が万が一売り切れていたらということで。これを受け取り智頭行に乗り込む。こちらもキハ47の気動車で、18時前という時間なのにガラガラ。ボックス席にゆっくり座って食事をすることができる。
そのお目当てというのが「とっとりの居酒屋」。一度いただいてその内容にうならされ、その後鳥取を訪れるごとに予約をしていた。あご、イカ、とうふ竹輪、長芋、カニ、ラッキョウなど、鳥取名物がさまざまな形で入っている。この弁当はビールより地酒がよく合うが、それを見越したかのようにイカの猪口も入っているのが最もインパクトがあった。
・・・と、イカの猪口で一杯というのを期待して蓋を開けたが・・・入っていない。これは期待を裏切られた感じである。箱の大きさは変わっていないので、OUT=イカの猪口、IN=○○ということかと帰宅後に確認すると、鳥取牛の煮込みというのがイカの猪口に取って代わったようだ。イカの猪口が案外人気がなく(作るのも手間がかかりそうだし)、肉の一品も入れてほしいという要望でもあったのだろう。ちょっと残念だが、駅弁そのものの美味さが変わるわけではないので美味しくいただく。
締めは「山陰鳥取かにめし」。これは、この数日前に訪れた福井のかにめしとの食べ比べとなった。本格的にカニを食べることはできないが、駅弁という形なら手軽に味わうことができる。越前と鳥取・・・それぞれのカニを食べるというのも駅弁ならではだろう。味は・・・甲乙つけがたい。
また食べ比べということでは、この日は持ち帰っただけで翌日いただいたが、福井と同様、ひもを引いて温めて食べるカニの駅弁がある。「あったかかにしゃぶ弁当」で、カニの棒肉も入っている。しゃぶしゃぶというよりは、肉入りのカニ雑炊という感じだが、玉子が絡んでいるのもよく、私としては鳥取に軍配。
智頭に着いた時には数人の客となり、ここから智頭急行に乗り継ぐ。30分ほど時間があり、智頭急行の駅舎で待機する。「18きっぷ、使われへんねんて」「1日フリーきっぷってあるけど」と話している客もいる。ちょうど智頭急行の運転手らしいのがやって来たが、「1日フリーきっぷは駅員のいる駅で、窓口が開いている時間にしか買えない」と話す。ただ智頭駅の窓口は18時で閉まるし、車内では発売しないので、その客も残念がっている。
もう後はこのまま大阪に戻るだけだが、次の恋山形で行き違い停車。この恋山形、日本に4つある「恋」の名がつく駅ということで、PRのためにホームにピンク色をふんだんに使い、ハート型の駅名標もある。夜のイルミネーションという演出もよく、停車時間を利用して乗客もホームに出て記念撮影。もっとも、この「恋」の字は地元に何か由来があるわけではない。新たに駅を造るに当たり、客よ「来い」という願いを込めるのとともに、字面がいいということで「恋」をつけたとか。果たして駅名で注目され、恋愛のパワースポット?として知られるようになった。クルマでわざわざ来る人もいるようだが・・・。
この後、あわくら温泉、大原でも行き違いや通過待ちで長時間停車。行きや昼間なら楽しみだが、夜になって早く帰りたいところでの長時間停車は結構しんどい。恋山形のようにホームを見る楽しみがあればいいが、それもなければシートでぼんやり、ウトウトするくらいである。
上郡に到着。ここでも山陽線上りまでの待ち時間が長い。その一方で姫路では乗り継ぎが2分しかなかったりと慌ただしい。鳥取からの帰途は結構時間がかかり、結局帰宅したのは日付がもう少しで変わろうかというところ。久しぶりに1日乗り倒した感じであった・・・・。