まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第17番「楊谷寺」~新西国三十三所めぐり・22(め組のひと)

2016年12月13日 | 新西国三十三所
楊谷寺の山門をくぐる。山門といえば両側に仁王像がそびえて・・・というイメージがあるが、ここでは門の両側にいるのは風神と雷神。これは珍しいのではないだろうか。

山門をくぐると正面に本堂がある。まず手水を使って本堂の前に立つが、「靴のままお上がりください」という貼り札がある。正面の障子が閉じられているが、そう書かれているのなら中に入ってもいいのかなと思い、障子を開けてみる。

すると、中は特別なスペースではなく、普通に賽銭箱の前に立ってお参りすることができる。両側には「十一面観音」と書かれた提灯がいろいろとぶら下がっている。まずはここでお勤めを行う。本尊の厨子の扉は毎月17日のみ開くということで、この日はそれが叶うことはなかったが、多くの人たちの長年の信仰がうかがえる。

本堂の中で、履物を脱いでそのまま本堂を抜けて奥の院に行くことができるとの貼り紙がある。靴はビニール袋に入れて、寒いので足下が冷える中を上がる。本尊の厨子の裏側も見た後で、廊下から奥に向かう。

本堂の裏には庭園が広がっている。浄土苑という京都府の名勝にも指定されている庭園で、配置された石には十三仏が祀られているとされている。小ぶりな庭園であるが、寺の本堂の裏にこうしたものが広がっているのが奥ゆかしい。

さらに奥に進むと、上書院というのがある。この書院から見下ろす庭園というのが見事だそうだが、これも毎月17日限定での公開という。普通の日は扉が閉ざされている。うーん、こういうことなら、今月でなくてもどこかの月の17日を狙ってくるのがいろいろと見ることができてよかったかなと思う、

その上書院の裏に、水琴窟がある。楊谷寺では「心琴窟」という名前がある。視覚が不自由な人にも、寺や庭園の雰囲気を感じてほしいということで設けられたものである。視覚が不自由な人がここまでたどり着くのも一苦労だと思うが、手水を地面に落とし、竹筒を地面に当てて耳をつけると、水琴窟独特の音が響いてくる。寺の雰囲気と言われるとどこまで感じることができるのかなと思うが、耳を澄ませて心を研ぎ澄ませるのが良いのだろう。

視覚が不自由な人と書いたが、この楊谷寺は昔から眼病平癒のご利益があるとされている。これも弘法大師が絡む伝説なのだが、ある時、寺のそばの溜まり水で、一匹の猿が子猿のつぶれた眼を一心不乱に洗っている姿を見た。そこで祈祷を行ったところ、子猿の眼が開いた。弘法大師はこの不思議な水にさらに祈祷を行い、眼病に悩む人たちのための霊水にしたという。

上書院から階段はさらに上に続いており、そのまま渡り廊下で奥の院とつながっている。この奥の院は江戸時代に中御門天皇により観音像が祀られたのが由来である。こちらは安産のご利益があるとされている。本尊の左には観音の眷属二十八武衆が祀られており、山門にいた風神雷神もこの中に含まれている。

この奥の院には本堂から上書院を経て渡り廊下で来ることもできるが、もちろん外の坂道を通って来ることもできる。坂道の途中からは本堂を中心とした境内を見下ろすこともできる。なかなか堂々とした境内だと思う。

坂を下り、いったん本堂の前を通り過ぎて境内の反対側に行く。こちらには先ほど書いた弘法大師の霊水「独鈷水(おこうずい)」が湧いている。江戸時代にもこの水で眼病が治癒したということがあったそうで、明治に至るまでこの水は天皇家に献上されていたという。今は参詣者が自由に汲むことができる。木の蓋を取ると湧水がたまっており、これを備え付けのコップに注いで口に含む。果たして眼病に効くか。子どもの頃から近視で眼鏡が手放せなく、そのくせ最近では近くの細かな字を見るのが少しずつしんどくなってきた私(年のせいとか、スマホの見過ぎのせいとかいうのは置いておくとして)、こうした霊水というのもありがたいなと思う。もっとも、帰宅後に見た楊谷寺のホームページによれば、この水は飲むというより、「観音様にお祈りしながら目を洗ってください」とある。うーん、持参のペットボトルに水がまだあるからと、ここで汲んで帰らなかったのだが、飲むのではなく目を洗うのなら、ペットボトルに入れて持ち帰ればよかったかなと思う。

ここまでお参りすると楊谷寺の見どころは一通り回ったということで、朱印をいただく。待っている間にお守りその他の品物を見るが、やはり目に関係するものが多い。「眼力」と書かれたお守りもあるし、目にやさしいという飴やお茶もある。飴はブルーベリー味なのだが、「め」の文字があしらわれているのを見ると、「粋な事件(こと)起こりそうだぜ めッ!」というラッツ&スターの「め組のひと」のフレーズが頭によぎる。

さて、時間はまだ10時半前だが、ここで次の行き先を決めるくじ引きとサイコロ。

1.高槻(安岡寺、神峯山寺)

2.太子町(西方院、叡福寺、当麻寺)

3.貝塚(水間寺)

4.大阪市内(太融寺、鶴満寺)

5.龍野(斑鳩寺)

6.京都市内(誓願寺、大報恩寺)

今回は6つのうち4つが大阪府内。くじ引きの選択肢がだんだん少なくなる中、大阪はまだまだ残っている。そして出たのは・・・「2」。当麻寺は奈良県だが、太子町とは隣接している。いずれも自宅から近いエリアであり、朝ゆっくりの出発でも十分回れるところである。次回はもう少しコンパクトな記事になるだろう。

さて、これで楊谷寺の参詣は終わるが、この後で向かうのは西国20番の善峯寺である。公共交通機関で行くなら、来た道を奥海印寺まで戻り、バスで長岡天神に出る。その後で阪急で2駅の東向日まで移動して、善峯寺へのバスに乗る。バスはいずれも1時間に1本のペースであり、乗り継ぎが上手くいくかどうかであるが、行けないことはない。

ただここで、前の記事にも書いたように、この日はトレッキングポールを持ってきていることを改めて書いてみる。これを活用する場面ということだが、これからやってみるのが、楊谷寺と善峯寺の間を徒歩で結ぼうというのである。もちろん平坦な道ではなく、西山の山道を歩くものである。この道は「西山古道」と呼ばれており、両方の寺の間は4.5キロほどある。最近までは荒れていたそうだが、地元のNPOの人たちの尽力により、西山三山を回るハイキングコースとして整備された。せっかくなので、歩いてこの両寺を結んでみようというのである。まだ午前中だし、時間はたっぷりある。善峯寺まで歩いた後で、そこから東向日に向かうバスに乗ればいいことである。

そのハイキングコースだが、まずは何とも物々しい感じで出発することに・・・・。
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