まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第11回四国八十八所めぐり~第41番「龍光寺」

2017年08月27日 | 四国八十八ヶ所
仏木寺から「逆打ち」の形でやって来た龍光寺。境内横手の山道から墓地の中を通って石段に出る。ここは札所の山門に相当する建物が見当たらない。

正面に向かう。石段の途中にフロアがある感じで、左手に本堂、そして右手に大師堂がある。ここまではよいのだが、石段の上を見ると赤い鳥居がある。上に建つのが稲荷社で、あちらが本家で本堂、大師堂を見下ろすかのようだ。

これは、かつての神仏習合の歴史を今に残す貴重な姿と言われている。寺の開創は弘法大師とされており、かつてこの地を訪ねた時、白髪の老人に出会った。弘法大師はこれを五穀大明神の化身と悟り、稲荷明神像を彫り安置した。さらに、その本地仏である十一面観音を彫り、他に不動明王や毘沙門天などと合わせて寺を開いたとされている。かつてはもっとも上が本堂だったのが、明治の神仏分離で十一面観音が中腹に下ろされる形で、新しく建てられた今の本堂に入り、昔の本堂は稲荷社となった。地元の人たちは「龍光寺」というよりは「三間のお稲荷さん」として親しんでいるようだ。大師像や地蔵像があるかと思えば、狐や狛犬がいる。神仏習合の歴史を持つ札所はこれまでにもいくつか出会ったが、神社と寺が離れていたり、道を隔てていたりというのがほとんどで、ここまで一体化しているというのも珍しいと思う。

境内からは三間町の田園風景を見ることができる。先ほどの仏木寺と同じように、里山の札所という感じである。

朱印をいただき、本来とは逆の動きだが石段を下りる。石段の下には石の鳥居があり、こちらから来ると神社に来た感じがより一層強かったかなと思う。

その鳥居の横に「長命水」という看板の店がある。長命水とは弘法大師の御加持水とされたもので、この店はその水を使ったうどんなどを出す食堂である。四国八十八所を歩いた菅直人元首相が訪ねた店としても、四国めぐりの中では知られているそうだ。私も菅元首相の遍路紀行を読んだことがあるが、その時は「遍路旅の中にはそうした出会いもあるだろうな」というくらいで特に意識していなかったので、現地に来てやっと気づいたものである。

当初のバス~歩き~予土線乗り継ぎならば、龍光寺でも時間は結構あったはずだったが、前の記事にもあるように、道を誤っての30分のロスタイムがある。次の予土線は伊予宮野下を14時11分発で、ここから歩いても間に合うが、「長命水」をのぞくだけの時間は厳しい。後になってネットで店の画像を見るとなかなか面白そうなスポットで、今回予土線を気にしてパスしたのが残念である。四国の2巡目というのがあるかどうかわからないが、もし次に龍光寺に来ることがあれば入ってみよう。

この時は駅に向けて歩く。三間町の中心部の古い町並みを抜け、三間高校の横を過ぎると寺から20分あまりで伊予宮野下に着く。元々は宇和島鉄道の駅として大正時代な始めに開業したところで、建物はかつては駅員がいて、出札口もあったかと思われる。今は全部取り払われてベンチしか残っていないが、地元の人たちが手入れをしている感じである。竹で作った風鈴がホームでカラカラと鳴っている。

やって来たのはもちろん1両の気動車。まずは1キロ先の務田に停まり、北宇和島に向けて峠越えである。前の席から運転台を見ると、時速は30キロとゆっくり走る。カーブも多いし、線路脇に伸びる木や雑草を払うかのような走りだ。

宇和島に到着。宇和島を出て4時間弱で戻る形になった。時刻は15時前だが、コインロッカーからキャリーバッグを出して、駅近くの宇和島グランドホテルにチェックイン。16時からなら近くの本館にあたる宇和島国際ホテルの大浴場が利用できるそうだが、ここまでで大汗である。部屋のユニットバスのシャワーでよいのでまずは浴びる。どうせ16時にはまた外出するのだから。

少し涼んだ後で着替えて、また金剛杖を手に部屋を出る。近くのコンビニで飲食物を仕入れ、いよいよアイランドリーグ観戦に向かう。ただその前に、「ちょっと寄って行かん?」という感じで、ある寺が私を出迎えるのであった・・・。
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