今年も残すところ半月となった。否が応でも年末の慌ただしさという雰囲気になってくる。
さてそのような中、前週に続いて西国四十九薬師めぐりである。こちらの今後めぐる札所を決めるサイコロの出目によっては、年末年始休みに青春18きっぷを利用する行き先にも影響が出る可能性がある。例えば三重県の山の中とか、北のほうなら舞鶴、さらには城崎・香住というところもある。もし城崎・香住というのが出れば、完全に温泉がついてくるし、冬ならば高いのは承知でカニ料理もいただけないかとか、そうした楽しみも出てくる(こうした現世利益も願っています)。
10ヶ所目となる今回の札所は、海南にある禅林寺を目指す。せっかく海南まで行った後どうするかというのもちょっと考えた。12月初め、青春18きっぷはまだ利用できない期間だが、もう少し足を延ばして湯浅や御坊といったあたりを目指すか。あるいは和歌山マリーナシティで温泉とマグロ料理もありかなとか。ただ、札所めぐりのついでということで、西国三十三所の3巡目として紀三井寺に行くことにする。ルートとしてはまず海南に昼前に着き、禅林寺をお参りした後は紀勢線または路線バスで紀三井寺に来て、和歌山に戻る。JR和歌山駅の近くに昼飲みができる大衆酒場があったはずで、これを楽しむのもいいだろう。
12月1日、まずは天王寺から9時台の関空・紀州路快速に乗る。好天に恵まれ、まずは紀伊山地を抜けて和歌山県に入る。
和歌山からはすぐの乗り継ぎで御坊行きに乗り換える。隣の和歌山線ホームには、先日105系と全面的に入れ替えとなった227系も停まっている。まだこの車両には乗ったことはないが、そのうち紀勢線のワンマン運転区間にも投入されるそうで、次に紀伊半島一周や那智山に行く機会があればその時には出会えるかもしれない。
11時に海南の高架ホームに到着。禅林寺に向かうのはもちろん初めてだが、こういう形でこの駅に降り立つのも初めてである。この辺りは漆器の生産が盛んで、改札に続く階段には徳川吉宗を描いた大きな皿もあるし、コンコースの物産展示にも作品が並ぶ。また土産物として購入することもできる。
さて禅林寺へのアクセスだが、海南駅から大十オレンジバスがある。バスで5分ほどの幡川という停留所があり、そこから歩いて10分ほどとある。バスは日中は1時間に1本の運転のようだが、バスの時間に合わせてもいいし、そのくらいの距離なら歩いても行ける範囲だなということで時間を見るうちに、「これは歩いたほうが面白そうだ」ということが出てきた。
その昔、海南から登山口まで野上電鉄というのが走っていた。もっとも廃線されたのが1994年だから、私もそれまでに乗ろうと思えば乗れた路線である。同じようなことをどこかの時に書いたかもしれないが、やはり当時は乗り鉄といってもJRの乗りつぶしにばかり意識が向いていたということがあったからだと思う。その野上電鉄は紀勢線よりも歴史が古く、野上町(現在の紀美野町)から物資を港がある海南に運ぶことを目的として敷かれた。ちなみに終点の登山口という駅名は、ススキで有名な生石高原への上り口にあたる場所から来ている。
現在結んでいる大十オレンジバスいうのは、飲料や食品などのトラック運送を担っていた大十という物流会社が、バス・タクシー事業にも進出して現在は子会社として運営している。登山口までの他に、季節限定でマリーナシティから海南駅を経て高野山奥の院への路線バスも出している。
駅を出て少し和歌山方向に向かったところに空き地がある。将来は住宅が建つのかもしれないが、この辺りに野上電鉄の始発駅である日方駅があったそうだ。後から開通してできた海南駅とは「連絡口」という駅で連絡していた。
少し進むと健康ロードというのに出る。ここが野上電鉄の廃線跡で、途中の沖野々まで6キロあまりが歩行者、自転車用に整備されている。今回は前半約2キロの幡川駅跡まで歩くことにする。
鉄道の跡ということでほぼ直線である。花壇も設けられているし、歩行者や自転車の通行もそれなりにある。正装する県道より安全だろう。ひょっとしたら、この「線路」の上を行き来する人の数は、鉄道が走っていた当時よりも圧倒的に多かったりして。
地元の海南高校や中学校の美術部による絵のパネルも雰囲気を出している。その中に電車の絵がある。ここが春日前駅跡。駅名標をモチーフにした案内板や休憩のベンチがある。ちょっと段があるのはホームの跡に見えなくもないが、どうだろうか。
阪和自動車道の高架をくぐる。禅林寺は高架沿いに少し南に行くルートだが、それは後ほどとしてもう少し歩く。健康遊具や公衆トイレがある一角に出た。ここが幡川駅跡である。健康ロードだけに、歩く途中にここでストレッチしましょうということか。歩き始めてから20分ほどでここまで来た。
ここで折り返して禅林寺に向かうが、先に昼食にしよう。幡川駅跡の向かいにラーメン店があるが、その名は「長浜らーめん」。和歌山ラーメンが近隣のあちらこちらにある中、あえて福岡の長浜流で勝負するというところだ。滋賀の長浜で長浜ラーメンに出会ったのと似ているようで気合いの入れ方は違うなという、ガチの長浜ラーメンである。食べ終わって店を出ると待ち客の烈もできていた。
ラーメンの味は申し分なく、普通に美味かった。セットのチャーハンもしっかりした味。ただ、やはり和歌山に来たならあのこってりした味に、はや寿司とゆで玉子のつまみ食いではないかなという思いも少し出てきた。
さて、相変わらず寺までの道のりが長い紀行文だが、目指すは禅林寺・・・。