12月13日の宇野港。11時50分発の高松行きに乗る。13日から最終の15日は混雑のため片道乗船券のみ発売するという。見渡す限り満杯で乗れないということはないが、往年、あるいは今でも多客時は常にこれぐらいの数の乗船客や車両はあったのだろうかと思う。
早くも歩行者の乗船口に列ができる。そこに高松からの折り返し便が入港する。少しずつ近づく船体に一斉にカメラやスマホが向けられる。
前方の口が開き、歩行者やクルマ、トラックがぞろぞろ出てくる。高松からお別れ乗船の客も多い。最後には原付、自転車も出てくる。歩行者は鉄道を利用すればよいのだろうが、瀬戸大橋を渡れない原付や自転車は困るだろう。まあ、どのくらいの需要があるかだが、これからは直島、または小豆島の航路を乗り継いで行くことになる。
船内に入る。中央にはロングシート、両側と前方にはリクライニングシートが並ぶ。この便に使われる「第一しょうどしま丸」は、2000年に高松~土庄便に就航して、後に宇高航路に転属となった船である。
早速売店にはうどんを求める行列ができる。その中で「とろろわかめうどん」をいただく。売店前には円卓状のうどん用座席があるが、後部のデッキに持ち出す。本当は船が走り出してから食べるほうが美味しいのだろうが、もう出航前にぺろりといただく。いりこの出汁がよく効いている。他にもデッキや上部甲板に出てうどんをすする光景が広がる。
確か前回乗った時は春の強風で上部甲板の立ち入りができなかった。今回は穏やかな、海もベタ凪な天候で、デッキに出ても気持ちよい。出航時には多くの人がフェンスに寄り添って景色を眺める。ちょうど地元テレビ局の腕章をつけた取材陣も乗っていて、うどんコーナーの様子を撮影したり、デッキにいる人にインタビューをしていた。
瀬戸内海を横断して本州と四国を結ぶ航路は他にもあった。この辺りだと下津井~丸亀(それこそ瀬戸大橋ともろ被り)や福山~多度津というのもあった。宇高航路は国鉄連絡の役割が強かったが、丸亀や多度津に着くのは金比羅参りのアクセスにもなっていた。ただ時代は変わっている。本州~四国は神戸~高松のジャンボフェリー、和歌山~徳島の南海フェリー、大阪・神戸~新居浜・東予のオレンジフェリー、広島・呉~松山の石崎汽船、柳井~松山の防予フェリーといったところはまだまだ健在だし、島伝いに渡るルートもまだいくつかある。四国八十八所めぐりで利用した航路もあり、バスや鉄道とは違ったアクセスもあるということでこれからも頑張ってほしい。
青い空、青い海が目の前にあると、やはりこうしたものがほしくなる。平日の昼間だが休暇ということで・・。売店の方からは「クルマの運転はないですね」とだけ確認されたが、まあこれも宇高航路へのお別れの杯である(と理由をつける)。
航路が中盤になると右手に円錐を浮かべたような大槌島が見える。島の中央に岡山と香川の県境がある珍しい島である。島の周囲が良好な漁場で、その昔備前と讃岐の漁師たちが漁場をめぐって藩どうしも巻き込む争いになり、幕府の裁定で島の真ん中に境界を引いて決着した歴史があるそうだ。
その遥か向こうに瀬戸大橋の姿が見える。「大槌島の上に橋を架けようかという話しもあったんじゃ」という会話も聞こえたが、本当だろうか。
香川県に入り、高松の街並みが少しずつ近づいてきた。船で近づくと駅前のサンポートが高松のランドマークであり、四国の玄関口に見える。四国の玄関口といっても交通手段がいろいろあるが、やはり高松駅が玄関口というイメージを持つ方もいるのではないかと思う。ただ、宇高航路がなくなるとそのイメージも後退してしまいそうだ。
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さて、乗船券は片道のみの発売だったが、今からでもきっぷ売り場に行けば折り返し便には十分間に合う。実際にそうする人もいるようだし、私も宇高航路の乗り納めが目的なら、このまま宇野に戻ってもよい。ただ、往復まではいいかなと思った。そこまでの気持ちの入れ込みがないのは申し訳ないが、単純な往復よりは変化をつけたいのも私の性である。
今朝から高松に来るに当たり、帰りをどうするかいろいろ考えていた。宇野にとんぼ返りするのも選択肢の一つだが、青春18きっぷなのだから四国内の鉄道に乗ることも考えていた。高松周辺をめぐってマリンライナーで岡山に戻るのもありだし、徳島まで高徳線、もしくは徳島線で出て、南海フェリーで帰るのも面白そうだ。帰りに高速バスを使えば四国の滞在時間も長くなる(先ほどの宇高航路とは真逆のことを言ってるなあ)。
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