まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第20回中国観音霊場めぐり~第32番「観音院」

2021年06月10日 | 中国観音霊場

明けて5月30日、この日の鳥取も晴天である。2年がかりとなった中国観音霊場めぐりの残り2つの札所も午前中で回ることにする。

コロナ対策としてチェックイン時に朝食の時間を選択することになっており、第1陣の6時半からを予約していた。この日はゆっくり出ればいいのだが、このところは休日でもそのくらいの時間には食事をとっている。部屋から朝日を眺め、大浴場に浸かった後に食事会場に向かう。

早々に食事とした後も部屋でゆっくりとして、チェックアウトは8時半すぎ。まず向かうのは第32番の観音院。鳥取駅から公共交通機関利用なら、市内循環バス「くる梨」の赤コースで、山の手会館前、または上町下車が最寄りのようだ。駅から徒歩で行けないこともない。ただ今回は、広島からクルマで来ることを選択したこともあり、この2ヶ所もクルマで回ってしまうことにする。

古くからの住宅が並ぶ一角に観音院がある。他に参詣の人もおらず、静かなたたずまいである。まずは本堂の前で手を合わせ、お勤めである。

観音院は江戸時代初期、岡山から鳥取に国替えとなった池田氏に伴って移った宣伝という僧の手で開かれた。当初は別の地に開かれたが、そこが御用地になったために現在地に移った。池田氏の祈願所の一つとして保護され、合わせて傾斜地形を活かした庭園が造られた。現在の観光情報では「観音院庭園」という名前で紹介されることが多い。

せっかく来たのだからと、納経所で庭の拝観をお願いする。靴を脱いで上がると、「中でお参りされますか?」と言われる。先ほどは本堂の外からだったが、これはありがたい。

本尊は聖観音で、そのお前立ちがお出迎えである。ここでもう一度お勤めとする。

庭園を見る書院に向かうと、ちょうど縁側の戸を全開にしているところ。緑豊かな庭園が目の前に広がる。

縁側のテーブルに抹茶が置かれている。一服しながらの庭園鑑賞。ちょうど案内の放送も流れてくる。寺の人が横についてガイドしていただくより気楽だ。朱印・墨書が入った納経帳も受け取る。

正面に広い池があり、対岸に築山、また後ろの山も借景としている。寺院の庭というと石の配置などで仏像や仏の教えを象徴することがあるが、ここ観音院ではそうしたことなく、明朗でわだかまりがない書院の池庭であることを強調している。

サンダルがあり、庭園の中も散策できる。池には鴨、鯉、亀が悠々と泳いでいる。池の水に周囲の緑がよく映えている。

片隅に何やら石が置かれている。門前に案内板があった「キリシタン灯籠」である。上部のふくらみは十字架を表したもので、中央には人の形が彫られている。鳥取市内に5基現存する灯籠の一つというが、藩の祈願所の境内にあるとは妙なものだ。鳥取藩がかくれキリシタンを容認していたのか。仮にキリスト教の禁令が解けた後にどこかから移したとしても、なぜここにあるのかなと思う。

静かな一時である。鳥取市内では知る人ぞ知るスポットなのだろうが、私としては中国観音霊場の一つだったから初めて知り、こうして訪ねることができた。これも観音さんのご縁かな。

庭園を辞去する。次はいよいよ結願の大雲院。カーナビではものの数分で着く・・・。

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