春と秋に因美線で運行される「みまさかスローライフ列車」。旧国鉄塗色の車両が里山の風景の中を走り、停車駅ごとではさまざまなおもてなしイベントが行われる観光列車。2022年の秋に久しぶりに乗車したのだが、「男はつらいよ」の「フーテンの寅さん」も乗り込んで賑やかなものだった。
2023年秋の列車は11月11日、12日に運行。12日の便にて、津山から鳥取県に入った那岐までの往復指定席を押さえる。
12日に広島から日帰りするとして、岡山まで新幹線、そして津山線で津山に向かうのが通常のルートだが、そこにちょっとひねりを加えてみることにする。
前日11日夜、テレビのチャンネルを地上波、BS、CSいろいろいじっている中で、BSテレ東で「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」をやっていたのを観る。「みまさかスローライフ列車」ではまた寅さんが乗って来るようだし、またこの第32作は、備中高梁が舞台である。寅さんが坊さんになるというストーリーで、ヒロインは竹下景子さん。舞台となった「蓮台寺」は、備中高梁の薬師院という寺がロケ地になっており、私も中国四十九薬師めぐりで訪ねたことがある。
さて12日当日、広島を早朝の新幹線で出発し、岡山に到着。ひとひねりというのは津山までのアクセスで、いったん伯備線で新見まで行き、新見から姫新線で津山に向かうものである。JR西日本の「e5489」でも、このルートの乗車券を買うことができた。当初から備中高梁を経由するルートを計画しており、そのルートをたどる前日に寅さんの備中高梁が登場した偶然にうなるばかりである。
岡山からは8時05分発の「やくも3号」に乗る。「やくも」だが、来年の新型車両の導入を前に、かつての国鉄~JRの塗色を復活させた編成でも話題になっている。その中で「やくも3号」は現行の「ぐったりはくも」・・・もとい「ゆったりやくも」の塗色で、ある意味もっとも地味なのだが、この381系が走る時間もだんだん少なくなる中、貴重な機会である。
繁忙期でないこともあり指定席も空席が目立つ。倉敷から伯備線に入り快走する。先に触れた備中高梁にも停車する。
9時07分、新見に到着。ここで下車する。次の姫新線津山行きは9時53分発ということで、いったん外に出る。
待合室の一角には、「縄文の祭典 片桐仁×猪風来」というのがあり、縄文式土器をイメージした作品が陳列されている。片桐仁さんはラーメンズで知っているが、猪風来って??というところ。この猪風来(いふうらい)氏は縄文造形家とのことで、新見市内には「猪風来美術館」という、縄文アートを主題にした美術館もあるそうだ。先ほどの「縄文の祭典」は企画展とのことだが、こういうスポットが新見にあるとは初めて知った。駅近くなら行ってみようかと思ったが、美術館があるのは新見市内といっても伯備線の各駅から離れている。
姫新線に乗るために少し早めにホームに向かう。ホームにはその筋の人たちの姿もちらほら見える。姫新線の本数も限られているが、新見からの列車に乗れば津山から「みまさかスローライフ列車」に接続しており、同じように乗り継ぐのかな。
待つうち、米子方面から「やくも8号」が入線してきた。旧国鉄特急色の復刻塗色である。現在の381系の塗色の中でも一番人気である。ここで出会うとは。これから、旧国鉄急行色の復刻塗色の「みまさかスローライフ列車」に乗りに行くが、いつかこの旧国鉄特急・急行色が並ぶことがあればと思う(あったのかもしれないが、どうだろうか)。
津山行きに乗る。キハ120の単行だが、幸いにボックス席を確保する。新見出発時点では20人くらいだったが、半分以上はその筋の人のように見受けられた。事実、「みまさかスローライフ列車」の車内で見かけた人も何人かいた。
中国山地のローカル線といえば芸備線、木次線がクローズアップされることが多いが、姫新線、因美線も決して楽観できる状況ではない。
新見を出発すると山がちな区間。先日、姫新線と並走する中国道をクルマで走ったのだが、山中でカーブも多く、また工事のために対面通行区間が長く、周りに人家がないいため灯りもなく、結構スリルを感じたものだ。
そんなローカル区間、時速25キロの必殺徐行区間も頻繁に現れる。今や各地の路線で行われていることなので、特段驚くほどのこともない。
途中の駅で若干の乗降はあったが、車内が混雑する場面もなく、11時31分、津山に到着。隣のホームにはすでに「みまさかスローライフ列車」が入線している。11時48分の発車まで少し時間があるので、しばらく佇まいを見るとしようか・・・。