新しくなった松山駅の見物と気晴らしのため、広島からわざわざ柳井まで移動し、三津浜までの防予フェリーに乗船する。8時50分の出航で、乗船したのは20人くらいだろうか。本州と四国を結ぶ貴重なルートではあるが、ローカル航路である。
船内にはさまざまなタイプの客室がある。前方を向いたゆったりしたシートが基本だが、ソファータイプ、ごろ寝ができる桟敷、そしてデッキでの椅子席など。高浜までの所要時間は2時間半ほどだが、それぞれでゆったりすることができる。
外に出ると、小型漁船が行き交う一帯。その向こうを山陽線の黄色の電車が駆け抜けていく。海から見る電車というのも新鮮な景色である。こうした位置から列車の写真を撮るというのもなかなかないのでは。朝の瀬戸内を走る下関行きの「WEST EXPRESS銀河」・・はフェリーの時間と合わないようだが。
大島大橋をくぐる。先ほど、この橋の歩道にて多くの撮り鉄の姿を認めたのだが、この時は誰もいなくなっていた。
その後は周防大島と周囲の島々の景色を見つつ、時には桟敷に横になったり、かと思えばまた外に出たり・・。これが夜行のフェリーだったり、太平洋や日本海を航行するフェリーなら多少進んでも景色が変わらないので船内でゆったりするのだが、車窓ならぬ船窓が入れ替わる瀬戸内の島々、いろいろ見てみたい。
意外に落ち着けるのが、左前方の喫煙スペース。ガラス越しながら前方の景色も見えるし、側方は潮風を受けながら航海気分を味わえる。
左に島が見え、そこから小さな島が点在している。奥が柱島だろうか。柱島といえば、太平洋戦争中、島の沖合に停泊していた戦艦陸奥が爆発、沈没するという出来事があった。その原因は人為的なものとしつつも、現在にいたるまで特定できていないという。この陸奥関連の展示施設が周防大島にもある。
この大島、前回の広島勤務時代だからもう20年以上前に一度クルマで回ったくらいだが、他にもさまざまな歴史があり、見どころも多いところ。何なら、島を一周する周防大島八十八ヶ所もあるぞ・・。久しぶりに一周してみようかな。
右手の周防大島、そして左手の情島が前方で少しずつ近づく。どうやらこの間を抜けるようだ。その距離、300~400メートルくらいだろうか。ちょうど山口と愛媛の県境で、ここを抜けると少し海が広く見える。
ここでようやく外の景色も落ち着き、しばらく桟敷にて横になる。桟敷は2区画あるのだがそれぞれ2~3人ずつで広々と使うことができる。
いつしかフェリーは二神島、遠くに中島、そして興居島という愛媛側の島々。一つ一つは小さいのだが、これもある意味「しまなみ海道」といっていいだろう。
そして四国本土。遠くには今度は伊予鉄道のオレンジ色の電車が見える。あちらは高浜、松山観光港を結ぶ路線でちょうど梅津寺に停車したところ。瀬戸内色~黄色~オレンジ色と、鉄道車両の見比べもよいものである。四国に来た実感がする。
三津浜に入港する。古くは「古事記」の時代から登場する港町で、近世では松山藩の海の玄関口となった。明治以降、大型船舶が入港できるように高浜の港が整備されたので玄関口の座はそちら(松山観光港)に譲ることになったが、その後も三津浜は地元密着の港、あるいは漁港として現在も機能している。
ここから伊予鉄道の三津駅まで歩く。以前に四国八十八ヶ所めぐりで柳井から三津浜に向かうルートを取り、三津駅近くのホテルAZに宿泊したことがある。この時は翌日、第52番・太山寺、第53番・円明寺と歩き、JR予讃線の伊予和気に到着というミニコースだった。ちなみに三津から太山寺に向かう途中には、地元出身のプロゴルフの松山英樹選手の父親が経営し、松山選手も幼少の頃からゴルフの腕を磨いた練習場がある。
以前のことを思い出しつつ、三津浜の昔ながらの港町を歩きながら駅に向かう。
さまざまな観光スポットがある松山だが、ここ三津浜も個性的な建物、商店があり、興味のある方にとってはじっくり観て回るに値するところである。
三津駅に到着。ちょうど昼時ということで「三津浜焼き」をいただこう。お好み焼の一種で、広島のお好み焼の元になったとも言われている。前回の四国八十八ヶ所めぐりの時にも訪ねた「日の出」という店に向かう。小ぶりな店だし、予約注文の客もいるので少し待つことに(事前のメニュー確認や、出来上がりの一品以外の店内撮影禁止など、以前訪ねた時と比べて店員の口調含めピリピリした様子が気になるのだが・・)。その間に伊予鉄の電車やら港の景色など眺める。
当初の時間よりも早く呼ばれ、店内に入る。三津浜焼きの特徴として、「台付」としてそばもトッピングするが、広島とは違って紅白のかまぼこ、牛肉、牛脂が加わり、魚粉が隠し味で使われる。また焼き方も、広島の場合は生地の上にキャベツや具材を乗せ、後で別に焼いた麺の上に重ねるのだが、三津浜だと生地の上に先に麺を乗せ、その上に具材を乗せる。どちらが正解というものではないが、焼くスペースということで考えれば三津浜のほうが少なくて済むのかな(その意味で昔風ということで)。
鉄板から直接ヘラで、普通からピリ辛まで複数あるソースとかけながら熱々をいただく。・・・この一品を見たらということで、無条件で瓶ビールを注文する。
このまま港に戻り、柳井まで再びのんびりした航路をたどるのも休日の贅沢かと思ったが・・・ここは当初の目的通り、松山駅を目指すことにする。三津駅に着き、高浜線の電車に揺られて大手町で下車。