宮島のシンボルである弥山、広島新四国八十八ヶ所の結願となる第88番は弥山本堂である。先ほど大聖院にいたため、そのまま境内横から大聖院コースをたどることにする。前回弥山に登った時もこのコースからだった。
まずは鳥居をくぐり、石仏も並ぶ坂道を歩く。確か弥山の山頂までは二十四丁の距離、およそ2.6キロメートルといったところだ。まずはゆるやかな坂道。
このコースでまず目指すのは白糸川から流れる白糸の瀧。その途中、瀧不動堂、瀧宮神社を通る。ちょうど行楽シーズンということもあり、外国人を含め、下りの参詣者とよくすれ違う。紅葉谷コース、あるいはロープウェーで頂上まで行き、下山は大聖院コースというところだろう。
瀧宮神社を過ぎると石段が続く。山頂まで続くその数は2000段以上という。前回登った時は登山口にあった木の杖を借り、ロープウェー乗り場で返したように思うが、今回は自宅からトレッキングポールを持参している。関西の札所めぐり用として買ったのはいいが、これまで実際に使用したのは1~2回ほどで、久しぶりの出番である。今回、このポールがなかったら大変なことになったかもしれなかったのだが、それはもう少し後の話。やはり年を取っての4年ぶりというのは大きく、また日常の運動もそう多いわけではないので、同じ石段でも前回よりきつく感じる。一応、前の人をペースメーカーにして遅れないようついて行くのだが・・。
六丁のところにある里見茶屋で休憩。この先、再び廿日市市宮島町からの放送が入り、高潮のため参拝を停止していた厳島神社が再開したとのこと。帰りに参拝するかどうかはまたその時に考えよう。
賽の河原に到着。岩の下が洞窟になっており、いくつもの石仏が並ぶ。弥山というところはさまざまな奇岩が存在し、それが修行の場としてふさわしいと昔の人は考えたことだろう。
1号砂防堰堤に到着。2005年9月の台風で発生した土石流のため登山道の一部も崩れたが、再発防止ということで建造されたもの。世界遺産の景観に配慮して、宮島桟橋や宮島航路からは見えないように計画され、またコンクリートや鋼材が目立たないよう、外部を現地で採取した石で覆うよう造られている。
また元の道に戻り、上りきったところで十字路に出る。駒ヶ林の分岐点で、ここまでちょうど1時間。思ったほどペースは落ちていなかったようだ。
十字路にある仁王門をくぐってからがもうひと踏ん張りである。山頂に近づくにつれ、さまざまな奇岩が現れるようになる。
そして、紅葉谷コースから見れば裏側から着く形で535メートルの山頂に到達。大聖院を出発して1時間15分、標準ペースより少し早いくらいか。ここまで歩いたのも久しぶりのことだ。さすが行楽シーズン、岩場や展望台に腰掛けて山頂の雰囲気を楽しむ人が多い。
展望台にも上がってみる。元より天気予報は曇りなので周囲の島々の姿を見ることはできないが・・。
私も展望台の休憩スペースでしばらく休む。ちょうど昼食の時間帯だが、手元にあるのはカロリーメイトとかチョコレートといった、どちらかといえば非常食の類。周りを見ると圧倒的に多いのがおにぎり、おむすび。やはり登山の後のおにぎりは格別なもので、宮島桟橋のコンビニで買って来ればよかったなと思う。
登山といえば、このところ「低山登山」がブームというのを目にするようになっている。アクセスがしやすい、初心者でも楽しめるという元々の要素があるのに加え、最近ではかつて高山を目指した中高年層が押し寄せるようになったのも大きいという。NHKの「にっぽん百低山」で、あの酒場詩人・吉田類さんがナビゲーターとして全国の低山を目指し、登山の後の一献を披露しているのも一役買っていそうだ。