ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

ケイタイが増えるということ

2009年06月16日 | ひとりごと
昨日、急にまた鮭の南蛮漬けが食べたくなって、玉ねぎと人参を鬼のように千切りしながら、片栗粉をまぶした鮭の切り身を揚げました。
南蛮タレに揚げたての鮭を入れると、ジュウ~ッという美味しそうな音が微かにして、それがまた食欲をそそります。
お味噌汁も丁度出来上がり、旦那も丁度仕事から戻ってきて、さあいただこう、ほれ、食器を出して用意するの手伝って!とKに言いました。
一枚~二枚~、出したかと思うと、携帯メールの着信音。素早くチェック。そして返信。
ちょっと、ご飯を三人分ついでよ!と言うと、一つついではまた着信、そしてチェック、そして返信。

あのさあ、こういう時ぐらい、個人的なことやめられへんの?と、かなりキレてきたわたし。
すると、元ガールフレンドに家族問題があがり、その報告メールなんだとK。
お腹が空いているところに、普段からの彼に対するイライラも加わり、早く揃って食べたい欲求の方が勝って、
「これからご飯やから、また後で話そうって言うてよ!」と言ってしまいました。
Kはあまり食欲がないからと言って、鮭も数切れしか口に入れず、けれども別に怒っている様子もなく、穏やかに普通に夕飯を食べました。
夕飯の片付けをしながら、事情が事情やったのに、あんな言い方はないよなあ、と反省。でも……。

その後、最近仲良くなった日本人おかあさんとアメリカ人おとうさんの娘Mちゃんと逢う約束があるからと出かけたK。
今夜は彼女をうちに連れてくるけど、めちゃくちゃ恥ずかしがり屋なので、いつもの調子でイジメないように、と釘をさされました。
やって来たMちゃんと少しだけ英語で話をして、そしてふたりはまた一緒に出かけて行きました。

こちらに来てしばらくはまだ、携帯電話や携帯プレイヤーをあまり見かけなかったこの国でも、今ではもう、かなり多くの人が耳にイヤホンを入れて歩いています。
たまに、耳にはめ込む携帯電話を使っている人が、いきなり一人芝居でも演じているように手振りを加えながら大きな声で話し出して、びっくりすることがあります。
道を歩く時、ジョギングをする時、電車に乗っている時、車を運転している時、それだけじゃなくて、起きている間中ずっと、着信と送信を繰り返す人達。
そんなふうに、いつでも誰かとつながっていたら、いったいいつ、自分のことを見つめたり考えたりできるのでしょう。
いや、それよりも、いったいいつ、頭も心も空っぽにして、ゆっくり休むことができるのでしょう。

旦那とわたしが携帯電話を使い出したのは四年前のことです。いよいよ仕事上必要になったからですが、わたしもそれに便乗させてもらいました。
旦那はその電話をとりあえず身近に置いていますが、自分が休もうとしている時や食事中、あるいは夜遅過ぎたりした時は、かけてきている人のナンバーを確認して出たり出なかったりします。
わたしが「もしそれが患者さんの緊急電話やったらどうするのよ!」と言っても、「すぐにメッセージを確認するんやからそれで充分」と涼しい顔です。
直接話せばお互いもっと簡単に済むものを、どうしてどんな手間のかかることをするのか。
随分経ってからやっと気がつきました。自分の世界に浸ることを優先しているということなのでした。
食べている。話をしている。会議に参加している。電車に乗っている。車を運転している。食事の用意をしている。用事をしている。歩いている。
人は起きている間中何かをしています。自分も他人も、みんな何かをしながら起きています。
それを邪魔しちゃいけないな。邪魔されたくないな。そんなふうに思ったら、携帯社会がもう少し成熟するんじゃないかなあ、と思いました。


それはさておき、昨日のわたしの言い方はやっぱり良くありませんでした。なのでちゃんと謝ろうと思いました。
昨日残った鮭が、今朝起きたらすっかり無くなっていたので、「なあ、あれいつ食べたん?」とKに聞きました。
「あ、夜中に食べた」
「またまた、あんなもん夜中に食べて」
「しゃあないやん、夕飯の時には食欲無かってんもん」
「え、ガールフレンドを紹介しようと思てたから?」
「ちゃうわ!D(元ガールフレンド)のことが心配やったからや!」

いろんな人の相談を受けるK。その話によっては、彼も一緒に落ち込んだり弱ったり、それはもう親身になって聞くので、横で見ていて時々心配になります。
その分携帯が鳴ることが人より多いK。僕はいつだってここにいるよ。そういうサインを送り続けているK。

旦那流とK流。それぞれのケイタイ模様なのでした。


コメント (4)
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