今日も今日とて、ダリル指揮によるお稽古があり、高校に行ってきた。
その高校は、前にも話した事があるけれど、スペシャルズの子供達のための高校で、心身のどちらかに障害のある生徒達が通っている。
障害と言ってもその度合いはバラバラ、種類も内容もそれぞれで、オーディションを受けて入ってきている合唱クラスの子達は非常に軽い。
男性合唱のテノールとバリトンパートに、デイビッドとジェイソンという、とてもハンサムな黒人の双子の兄弟がいる。
体もがっしりしていて、とてもおだやか。ダリルの理不尽な攻撃も適当にあしらえる。
怒りを調整できなくなる子や多動症の子、どうしても集中できずに、ついついおしゃべりしてしまう子がいる中で、彼らはいったいどんなことが問題になっているのだろうと、わたしはいつも首をかしげていた。
問題は、彼らがバラバラに練習室に入ってきて、わたしに挨拶してくれる時、顔見知りになってもう3年が経つというのに、どちらがどちらなのかいまだにわからなくて、「ハイ!うぅ~……」と唸っていると、「ハハハ!ジェイソンだよ」とか「デイビッド」とか言われてしまうこと。
アメリカ人は、小さい時から、人の名前を覚えることにかけてはすごい情熱をかける。
「ハ~イ、◯◯!」と、挨拶の直後はもちろんのこと、話の後に、話している相手の名前をいきなり挿入する、なんてのは日常茶飯事。
はじめはそれが耳に障って気になって仕方が無かったのだけど、一度なんらかのきっかけで話をした相手の名前は記憶し、また会った時にはきちんと名前で呼ぶのが礼儀、というか常識らしいこの国で生きていくには、そうやっていちいち名前を声に出して呼ぶことで覚える努力をしているのだろう。
そんなわけで、わたしはこの国の大人としては、怠慢でアホな部類に入っている。
日本に居た頃から、人の名前を覚えるのがとっても苦手だったのに、こっちの人の名前なんてもう……おまけにグループで40人とかになった日にゃ~!
ところがどうしてだか今日は、どうしても、デイビッドとジェイソンの見分けがつくようになりたくなってしまった。
それで、先に部屋に入って来たデイビッドに、「いったいみんなはどうやって見分けてるの?」と聞いた。
「う~ん、外から見た感じかな?」
ひょえ~!ますますわからんちんじゃ~!
そこにジェイソンが入ってきた。
するとダリルがいきなり「おい、デイビッド、ジェイソン、起立!」と言って、他の生徒達が勢揃いして座っている中、ふたりを立たせて並べた。
「俺にはどっちがどっちかすぐわかる。ほれ、ジェイソンの方がちょいとだけおっきくてほがらか。デイビッドは根暗、あ、言い方悪かったな、真面目」
そうダリルが言った時、デイビッドの唇がキュッと閉まった。目に怒りともあきらめともつかない暗い光が宿り、心にサッとカーテンが引かれた。
ごめんデイビッド。
あんたはきっと、今までにもう数えきれないほど、こうやって人にじろじろ見られた挙げ句、ジェイソンといろんなことで比べられてきたんだよね。
わたしが軽く言ったことで、またその回数が増えてしまった。そして傷つけてしまった。
ごめん、ほんとにごめんな。
その高校は、前にも話した事があるけれど、スペシャルズの子供達のための高校で、心身のどちらかに障害のある生徒達が通っている。
障害と言ってもその度合いはバラバラ、種類も内容もそれぞれで、オーディションを受けて入ってきている合唱クラスの子達は非常に軽い。
男性合唱のテノールとバリトンパートに、デイビッドとジェイソンという、とてもハンサムな黒人の双子の兄弟がいる。
体もがっしりしていて、とてもおだやか。ダリルの理不尽な攻撃も適当にあしらえる。
怒りを調整できなくなる子や多動症の子、どうしても集中できずに、ついついおしゃべりしてしまう子がいる中で、彼らはいったいどんなことが問題になっているのだろうと、わたしはいつも首をかしげていた。
問題は、彼らがバラバラに練習室に入ってきて、わたしに挨拶してくれる時、顔見知りになってもう3年が経つというのに、どちらがどちらなのかいまだにわからなくて、「ハイ!うぅ~……」と唸っていると、「ハハハ!ジェイソンだよ」とか「デイビッド」とか言われてしまうこと。
アメリカ人は、小さい時から、人の名前を覚えることにかけてはすごい情熱をかける。
「ハ~イ、◯◯!」と、挨拶の直後はもちろんのこと、話の後に、話している相手の名前をいきなり挿入する、なんてのは日常茶飯事。
はじめはそれが耳に障って気になって仕方が無かったのだけど、一度なんらかのきっかけで話をした相手の名前は記憶し、また会った時にはきちんと名前で呼ぶのが礼儀、というか常識らしいこの国で生きていくには、そうやっていちいち名前を声に出して呼ぶことで覚える努力をしているのだろう。
そんなわけで、わたしはこの国の大人としては、怠慢でアホな部類に入っている。
日本に居た頃から、人の名前を覚えるのがとっても苦手だったのに、こっちの人の名前なんてもう……おまけにグループで40人とかになった日にゃ~!
ところがどうしてだか今日は、どうしても、デイビッドとジェイソンの見分けがつくようになりたくなってしまった。
それで、先に部屋に入って来たデイビッドに、「いったいみんなはどうやって見分けてるの?」と聞いた。
「う~ん、外から見た感じかな?」
ひょえ~!ますますわからんちんじゃ~!
そこにジェイソンが入ってきた。
するとダリルがいきなり「おい、デイビッド、ジェイソン、起立!」と言って、他の生徒達が勢揃いして座っている中、ふたりを立たせて並べた。
「俺にはどっちがどっちかすぐわかる。ほれ、ジェイソンの方がちょいとだけおっきくてほがらか。デイビッドは根暗、あ、言い方悪かったな、真面目」
そうダリルが言った時、デイビッドの唇がキュッと閉まった。目に怒りともあきらめともつかない暗い光が宿り、心にサッとカーテンが引かれた。
ごめんデイビッド。
あんたはきっと、今までにもう数えきれないほど、こうやって人にじろじろ見られた挙げ句、ジェイソンといろんなことで比べられてきたんだよね。
わたしが軽く言ったことで、またその回数が増えてしまった。そして傷つけてしまった。
ごめん、ほんとにごめんな。