平賀緑さんという方が翻訳してくださった『原子力の悪夢』という論文を紹介します。
これは、3月の19日に発表されたものです。
ずいぶん古いものですが、アメリカの原子力産業の状況について語られたもので、今もその状況は全く変わっていません。
昨晩、オバマ大統領が一般教書演説をして、その中に、原子力発電の行く末についても、核についても、エネルギーについてもろくに言及が無く、
やっぱり原発村の親玉、悪の巣窟に、オバマ氏といえど歯が立たないのでしょうか?
それとも、彼は大ウソツキだったのでしょうか?
原子力の悪夢
ラルフ・ネーダー・2011年3月19日
※以下は、米国の環境活動家ラルフ・ネーダーが、福島原発の事故を受けて、米国の原子力産業の状況について書いたものだが、日本の読者にも大いに役立つと思われるので訳出した。【編集部】
[出典]コモン・ドリームズ
日本で進行している複数の原子炉の大惨事は、米国内に104もある原発に対する注意を遅ればせながら呼び起こしている。
米国内の原発の多くは老朽化し、その中の4基が地震断層の近くにある。
西海岸には津波の危険にさらされている原発もあるのだ。
原子力発電所とは、水を沸かして発電用のタービンをまわす蒸気を作る装置だ。
その核燃料サイクルはとほうもなく複雑なもので、ウラン鉱山から始まって、最終的には死の放射性廃棄物へとたどりつく。
そして、廃棄物を、何万年にもわたって永久的に格納できる貯蔵施設は、いまだにないのだ。
米国の電力の20パーセントは、原発で発電されている。
原発産業の推進者、かつ規制者である原子力委員会たちは、40数年前に、
炉心が完全に溶解すれば、ペンシルバニア州[訳注:119,282平方キロメートル。福島県13,783平方キロメートルの8.65倍]もの広さが汚染され、
大量の死傷者を引き起こしかねないと概算した。
さて、納税者のみなさんは、原子力の研究、開発、推進に、当初から何百億ドルもの資金を提供してきた。
米国では、膨大な経費やリスク、様々な原発における危機一髪の事態、
1979年にペンシルバニア州スリーマイル島の原発で起きた部分的な炉心溶融のために、1974年以降は、原発は建設されていない。
とはいえ、いま、原発産業界は、化石燃料を燃やすことで排出される地球温暖化ガスを減らすことに、原発が役立つと主張している。
オバマ大統領やエネルギー省のスティーブン・チュウ(Steven Chu)長官は、長年原子力産業を批判してきた人たちと会見することを拒否し、熱心に推進している。
彼らがいかに、納税者のみなさんの背後で動いているか、次のことからも分かるだろう。
1.ウォール街は、100%の政府債務保証(taxpayer loan guarantee)がなければ、新たな原発建設に融資しようとしない。
リスクが高すぎるからだ。
事故がないと仮定しても、新たな原発一基に120億ドルもかかるのだから、膨大な保証額だ。
オバマや議会は、こんな取り決めで良し、と考えている。
2.原発は、民間の保険市場で保険をかけられない。
リスクがありすぎるのだ。
事故時等の事業者の賠償責任を制限するプライス・アンダーソン法(Price-Anderson Act)の下では、
納税者たちが、炉心溶解の膨大な負担を支払うことになる。
3.原発と放射性廃棄物の輸送は、国土安全保障省(Department of Homeland Security)にとって国家的なセキュリティの悪夢だ。
何千本もの壊れやすい使用済み核燃料棒が、破壊工作にとってどれだけ格好のターゲットになり得るか、考えて欲しい。
4.核廃棄物の最終処分場が許可されたときに、そのツケをいったい誰が支払うかを推測してほしい。
納税者である皆さん、皆さんの子孫、血のつながった子孫へとずっと続くのだ。
原発の巨大な解任コストは、電気利用者の財布から出されるのだ。
5.どこであれ原発の近くに住む人々は、原発事故が起きれば、とりわけ緊急事態のときは、過酷な退避の負担を強いられる。
トラブル続きであるインディアン・ ポイント(Indian Point)原発は、ニューヨーク市の北方42キロにあるが、
そこから避難することをイメージして欲しい。
この地域で働く人々は、午後5時のラッシュアワー に職場から帰宅するだけで、充分大変な思いをしている。
クリントン国務長官が、ニューヨーク州上院議員であった時に、アンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)知事とともに、インディアン・ポイント原発閉鎖を求めた理由のひとつはそこなのだ。
6.原子力発電は、不経済だし、不要なものだ。
コジェネレーション、風力、そして、より効率的で、より素早く、ずっと安全な再生可能な電力などのエネル ギー保護策には、とうてい競争できない。
エイモリー・ロビンス(Amory Lovins)は、この点を説得力を持って主張している。
ロビンズは物理学者なのだが、「原子力発電は地球温暖化防止に役立たないし、むしろ遅らせる」と断言する。
その理由は、原発に投資されている何百億ドルもの予算を、効率的で再生可能なエネルギーにシフトさせれば、
1ドルあたり、はるかに多くの二酸化炭素を削減できるというものだ。
米国は、老朽化し、地震の脅威が高い原発から始めて、原発の閉鎖に向けて動くべきだ。
元原子力規制委員会(NRC: Nuclear Regulatory Commission)のピーター・ブラッドフォード(Peter Bradford)委員長も、経済性と安全性から、原発に強く反対を主張している。
原発の近くに暮らす電気利用者(ratepayers)、納税者(taxpayers)、そして家族たちが知るべき事は、さらに多くある。
ここから、皆さんが何を始めるべきかのヒントを述べよう。
1.まず、原発がある地域では、その地区の国会議員か原子力規制委員会に、公開ヒアリングを開くことを要求し、
事実、リスク、避難プラン計画を明確にさせよう。
皆さんやメディアの前で、原発批判者と推進派に、お互い厳しく詰問させるよう要求しよう。
2.もし、あなたが保守派ならば、なぜ原発がこれほど多量の税金や保証を必要とし、適切な民間保険に入れないのかを考えてみて欲しい。
もしあなたが小さな事業を行っており、その事業はリスクが高すぎて保険に入れないならば、あなたはその事業を止めるだろう。
3.もし、あなたが自然保護派ならば、なぜ、原発が、省エネや再生可能エネルギーへの投資に対する費用対効率の市場テストを、無視することが出来るのかを考えてみて欲しい。
4.交通渋滞を理解している人ならば、原発周囲16キロに住んだり働いたりしている人々の、実質的な避難訓練を要求してみて欲しい(少なくとも、40キロ避難すべきだと考えている科学者もいる)。
原発推進派は、口ごもって言葉を濁すだろう。
単にお湯を沸かすために設計された危険な技術のせいで、いま、北日本の人々は、土地、住居、親類、そして、友人すらも失ってしまうかもしれない。
だが、蒸気を作るにはもっと良い方法があるのだ。
問題の日本の原発のように、
インディアン・ポイント原発や
南カリフォルニア州のサン・オノフレ(San Onofre)とディアブロ・キャノン(Diablo Canyon)にある4基の原発は、
地震断層の近くに位置している。
地震学者たちは、今後30年以内に94%の確率で、カリフォルニアに大地震が来ることに同意している。
米国民にロシアン・ルーレットの危険な賭をさせることを、オバマ大統領やチュウ長官、そして、強力な原子力産業たちに許してはならない!
[翻訳:平賀緑]
上記の、地震断層の近くに位置している古い原発インディアン・ポイント原発が、うちから60キロの所にある原発です。
廃炉運動に参加し始めてはじめて、近辺に暮らしている方々に健康の被害が出ていることを知りました。
そして、定期点検がもうすぐ終わり、寿命を迎えていたはずなのに、20年もの延長が許可されかけていて、
それを運動家の人達、近所に暮らす人達、我々有志の人間が、デモをしたり、集会を設けたり、Facebookなどで訴えかけたりしながら、
延長をなんとか阻止し、廃炉に持ち込もうと頑張っています。
どこも同じなのです。
原発という核狂いの連中によって作られた建物は、やつらによって巧みに、そして頑丈に組み立てられたシステムの中で、今も放射能を吐き出しています。
世界に訴えてもだめ。
IAEAもWHOも、原発狂団の手下みたいなもんです。
原発狂主の手のひらの上で転がされているだけです。
だから、ここアメリカでも、我々市民が踏ん張らなければなりません。
大きな事故が起ころうが、テロに巻き込まれようが、それでも原発はやめたくないのです。
到底、まともな心も常識も、そして人間らしさも持っているとは思えません。
わたし達は、腹をくくって、こんなどうしようもない連中を相手に、そしてそんな連中がコツコツ悪知恵を集めて作り上げたシステムと、長い年月をかけて闘い続けなければなりません。
その闘いがまた、どこかの世代で途切れてしまわないように、子供達にもきちんと話していかなければなりません。
ほとほとうんざりしますが、仕方がありません、たまたまそういう時期に巡り会ったのだから。
でも、歴史の流れを動かした大人として、後々の人達の記憶にとどまることは、なかなか楽しいことではないか、とも思っています。
これは、3月の19日に発表されたものです。
ずいぶん古いものですが、アメリカの原子力産業の状況について語られたもので、今もその状況は全く変わっていません。
昨晩、オバマ大統領が一般教書演説をして、その中に、原子力発電の行く末についても、核についても、エネルギーについてもろくに言及が無く、
やっぱり原発村の親玉、悪の巣窟に、オバマ氏といえど歯が立たないのでしょうか?
それとも、彼は大ウソツキだったのでしょうか?
原子力の悪夢
ラルフ・ネーダー・2011年3月19日
※以下は、米国の環境活動家ラルフ・ネーダーが、福島原発の事故を受けて、米国の原子力産業の状況について書いたものだが、日本の読者にも大いに役立つと思われるので訳出した。【編集部】
[出典]コモン・ドリームズ
日本で進行している複数の原子炉の大惨事は、米国内に104もある原発に対する注意を遅ればせながら呼び起こしている。
米国内の原発の多くは老朽化し、その中の4基が地震断層の近くにある。
西海岸には津波の危険にさらされている原発もあるのだ。
原子力発電所とは、水を沸かして発電用のタービンをまわす蒸気を作る装置だ。
その核燃料サイクルはとほうもなく複雑なもので、ウラン鉱山から始まって、最終的には死の放射性廃棄物へとたどりつく。
そして、廃棄物を、何万年にもわたって永久的に格納できる貯蔵施設は、いまだにないのだ。
米国の電力の20パーセントは、原発で発電されている。
原発産業の推進者、かつ規制者である原子力委員会たちは、40数年前に、
炉心が完全に溶解すれば、ペンシルバニア州[訳注:119,282平方キロメートル。福島県13,783平方キロメートルの8.65倍]もの広さが汚染され、
大量の死傷者を引き起こしかねないと概算した。
さて、納税者のみなさんは、原子力の研究、開発、推進に、当初から何百億ドルもの資金を提供してきた。
米国では、膨大な経費やリスク、様々な原発における危機一髪の事態、
1979年にペンシルバニア州スリーマイル島の原発で起きた部分的な炉心溶融のために、1974年以降は、原発は建設されていない。
とはいえ、いま、原発産業界は、化石燃料を燃やすことで排出される地球温暖化ガスを減らすことに、原発が役立つと主張している。
オバマ大統領やエネルギー省のスティーブン・チュウ(Steven Chu)長官は、長年原子力産業を批判してきた人たちと会見することを拒否し、熱心に推進している。
彼らがいかに、納税者のみなさんの背後で動いているか、次のことからも分かるだろう。
1.ウォール街は、100%の政府債務保証(taxpayer loan guarantee)がなければ、新たな原発建設に融資しようとしない。
リスクが高すぎるからだ。
事故がないと仮定しても、新たな原発一基に120億ドルもかかるのだから、膨大な保証額だ。
オバマや議会は、こんな取り決めで良し、と考えている。
2.原発は、民間の保険市場で保険をかけられない。
リスクがありすぎるのだ。
事故時等の事業者の賠償責任を制限するプライス・アンダーソン法(Price-Anderson Act)の下では、
納税者たちが、炉心溶解の膨大な負担を支払うことになる。
3.原発と放射性廃棄物の輸送は、国土安全保障省(Department of Homeland Security)にとって国家的なセキュリティの悪夢だ。
何千本もの壊れやすい使用済み核燃料棒が、破壊工作にとってどれだけ格好のターゲットになり得るか、考えて欲しい。
4.核廃棄物の最終処分場が許可されたときに、そのツケをいったい誰が支払うかを推測してほしい。
納税者である皆さん、皆さんの子孫、血のつながった子孫へとずっと続くのだ。
原発の巨大な解任コストは、電気利用者の財布から出されるのだ。
5.どこであれ原発の近くに住む人々は、原発事故が起きれば、とりわけ緊急事態のときは、過酷な退避の負担を強いられる。
トラブル続きであるインディアン・ ポイント(Indian Point)原発は、ニューヨーク市の北方42キロにあるが、
そこから避難することをイメージして欲しい。
この地域で働く人々は、午後5時のラッシュアワー に職場から帰宅するだけで、充分大変な思いをしている。
クリントン国務長官が、ニューヨーク州上院議員であった時に、アンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)知事とともに、インディアン・ポイント原発閉鎖を求めた理由のひとつはそこなのだ。
6.原子力発電は、不経済だし、不要なものだ。
コジェネレーション、風力、そして、より効率的で、より素早く、ずっと安全な再生可能な電力などのエネル ギー保護策には、とうてい競争できない。
エイモリー・ロビンス(Amory Lovins)は、この点を説得力を持って主張している。
ロビンズは物理学者なのだが、「原子力発電は地球温暖化防止に役立たないし、むしろ遅らせる」と断言する。
その理由は、原発に投資されている何百億ドルもの予算を、効率的で再生可能なエネルギーにシフトさせれば、
1ドルあたり、はるかに多くの二酸化炭素を削減できるというものだ。
米国は、老朽化し、地震の脅威が高い原発から始めて、原発の閉鎖に向けて動くべきだ。
元原子力規制委員会(NRC: Nuclear Regulatory Commission)のピーター・ブラッドフォード(Peter Bradford)委員長も、経済性と安全性から、原発に強く反対を主張している。
原発の近くに暮らす電気利用者(ratepayers)、納税者(taxpayers)、そして家族たちが知るべき事は、さらに多くある。
ここから、皆さんが何を始めるべきかのヒントを述べよう。
1.まず、原発がある地域では、その地区の国会議員か原子力規制委員会に、公開ヒアリングを開くことを要求し、
事実、リスク、避難プラン計画を明確にさせよう。
皆さんやメディアの前で、原発批判者と推進派に、お互い厳しく詰問させるよう要求しよう。
2.もし、あなたが保守派ならば、なぜ原発がこれほど多量の税金や保証を必要とし、適切な民間保険に入れないのかを考えてみて欲しい。
もしあなたが小さな事業を行っており、その事業はリスクが高すぎて保険に入れないならば、あなたはその事業を止めるだろう。
3.もし、あなたが自然保護派ならば、なぜ、原発が、省エネや再生可能エネルギーへの投資に対する費用対効率の市場テストを、無視することが出来るのかを考えてみて欲しい。
4.交通渋滞を理解している人ならば、原発周囲16キロに住んだり働いたりしている人々の、実質的な避難訓練を要求してみて欲しい(少なくとも、40キロ避難すべきだと考えている科学者もいる)。
原発推進派は、口ごもって言葉を濁すだろう。
単にお湯を沸かすために設計された危険な技術のせいで、いま、北日本の人々は、土地、住居、親類、そして、友人すらも失ってしまうかもしれない。
だが、蒸気を作るにはもっと良い方法があるのだ。
問題の日本の原発のように、
インディアン・ポイント原発や
南カリフォルニア州のサン・オノフレ(San Onofre)とディアブロ・キャノン(Diablo Canyon)にある4基の原発は、
地震断層の近くに位置している。
地震学者たちは、今後30年以内に94%の確率で、カリフォルニアに大地震が来ることに同意している。
米国民にロシアン・ルーレットの危険な賭をさせることを、オバマ大統領やチュウ長官、そして、強力な原子力産業たちに許してはならない!
[翻訳:平賀緑]
上記の、地震断層の近くに位置している古い原発インディアン・ポイント原発が、うちから60キロの所にある原発です。
廃炉運動に参加し始めてはじめて、近辺に暮らしている方々に健康の被害が出ていることを知りました。
そして、定期点検がもうすぐ終わり、寿命を迎えていたはずなのに、20年もの延長が許可されかけていて、
それを運動家の人達、近所に暮らす人達、我々有志の人間が、デモをしたり、集会を設けたり、Facebookなどで訴えかけたりしながら、
延長をなんとか阻止し、廃炉に持ち込もうと頑張っています。
どこも同じなのです。
原発という核狂いの連中によって作られた建物は、やつらによって巧みに、そして頑丈に組み立てられたシステムの中で、今も放射能を吐き出しています。
世界に訴えてもだめ。
IAEAもWHOも、原発狂団の手下みたいなもんです。
原発狂主の手のひらの上で転がされているだけです。
だから、ここアメリカでも、我々市民が踏ん張らなければなりません。
大きな事故が起ころうが、テロに巻き込まれようが、それでも原発はやめたくないのです。
到底、まともな心も常識も、そして人間らしさも持っているとは思えません。
わたし達は、腹をくくって、こんなどうしようもない連中を相手に、そしてそんな連中がコツコツ悪知恵を集めて作り上げたシステムと、長い年月をかけて闘い続けなければなりません。
その闘いがまた、どこかの世代で途切れてしまわないように、子供達にもきちんと話していかなければなりません。
ほとほとうんざりしますが、仕方がありません、たまたまそういう時期に巡り会ったのだから。
でも、歴史の流れを動かした大人として、後々の人達の記憶にとどまることは、なかなか楽しいことではないか、とも思っています。