田中優の“持続する志” 優さんメルマガ 第109号 2012.1.7 発行 より転載させていただきます。
◆田中優より◆
「新年の憂うつ」
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新年、あけましておめでとうございます。
しかし今年は「おめでとう」と言いにくいという賀状もたくさんありましたね。
でも新たな年を生きて迎えられたことを喜ぶ意図でしょうから、おめでとうございます。
でも新年早々、うれしくない話です。
「収束宣言」なるものが、まともにモノを考えていない人たちから発表されていました。
細野原発担当大臣は、「住民が追加で避難しなければならない事態はもう絶対起こらない」と言ったそうです。
一方で東京電力西沢社長の年頭あいさつは、
「(昨年は)天地がひっくり返った1年だった」と述べたそうです。
「あんたが言うな!」と思うんですよね。
交通事故の加害者が、「天地がひっくり返った」とは言わないでしょ?
しかも
東京電力は、除染についても「ボランティアで協力したい」「お手伝いしたい」と言っているのです。
「誰のせいだよ!」と突っ込みたくなります。
要は責任を取らなきゃいけない加害者だという意識がないんです。
これって日本によくあることですね。
戦争責任にしたって、誰もが「その時代には反対できなかった」とか、「せざるを得なかった」とか言って、
誰もが主体的に動いていなかったと責任を逃れています。
いや、違いますね、
主体的に判断しなかったことが犯罪なんです。
原発を推進してきた人たちの大半もまた、こんな無責任な人たちですね。
安全委員の長だった斑目氏は、ばりばり業界から寄付金を受け取っておいて、
ばれると「私は変な使い方をしていないから、みなさんに判断してもらえばいい」と言ってます。
いや、もらうこと自体が問題なんですよ。
みなさんの判断じゃなくて、あなたの無責任極まりない行動が問題なんです。
そして収束宣言して「避難は絶対起こらない」と言った直後の元旦、関東を地震が襲ったわけです。
地震はわずか震度4、日本じゃさほど驚かないレベルです。
ところがそこから、福島第一4号炉の冷却水の漏れが始まったわけです。
これ、政府は「最も核燃料の溶融が懸念された4号機について耐震補強工事を施すなどし、こうした(危機的な)事態は回避された」と言っていたんです。
今回の冷却水漏れは、4号炉が地震で傾いたことが原因と見られています。
「耐震補強工事を施し、危機は回避された」んじゃないんですか?
また「想定外」なんでしょうか。
そっちは想定外でも、「最も核燃料の溶融が懸念された4号機」であることは変わらないわけですよね。
みなさん覚えていますか?
4号炉が爆発したとき、この原発は稼働していなかったんです。
原子炉の隣にある「使用済み核燃料のプール」に置いてあった、冷却中の使用済み核燃料が水を失って熱くなり、
燃料棒を覆っているジルコニウムが溶けて水素を発生させたんです。
それで爆発したんです。
その冷却水が今、漏れているんです。
爆発して、どこまで核燃料が溶けたのか、まだ分からないままです。
しかもその位置は、原子炉の高さと同じ高さにあります。
この4号炉が崩れ落ちたら、核燃料がそこらに散らばってしまいます。
誰ももう冷却できません。
メルトダウンして、チャイナシンドロームになるのは避けられないじゃないですか。
それが
「最も核燃料の溶融が懸念された4号機」なんです。
それを管理しているのが「絶対起こらない」という政府の細野原発担当大臣と、自分の責任だと思っていない東京電力なんです。
危険だと思いませんか?
「耐震補強工事を施した」と言われても、震度4で影響が出ちゃう対策ってどんなもんなんですか?
近所のボロ家だって傾いてないっすよ。
これが怖いんです。
あなたたちが信頼できないんです。
言ってる端から
ボロが出てるじゃないですか。
ジンクスで言うなら、「住民が追加で避難しなければならない事態」はきっと起こるでしょう。
毎回裏目に出ていますから。
ぼくは2011年3月15日朝に流したように、もう一度「できるだけ避難を」というメールを残念ながら流さなければならなくなるかもしれません。
今すぐではないですが、準備をしておいてほしいと思います。
日本は地震の極めて多い国です。
しかもその地震の数は、2000年以降は桁外れに多くなっています。
震度4で傾いて水漏れする原発が、今後も無事であると予想するほうが難しいです。
しかも
使用済み核燃料の束は、1,331体もあるんです。
こいつが頭から降ってきたら、もう無理ではないですか?
日本の中だけで避難しても足りないかもしれません。
運が悪ければ、核爆発するほどの量です。
1月5日の夜には、福島県の中通りのほうに震度4の地震がありました。
かすってるじゃないですか。
原発のある浜通りまであと少しです。
この使用済み核燃料を、一体ずつ抜き取って、別な場所に、安全に管理しなければならないと思います。
収束宣言は、それからにしてください。
核燃料がどうなっているのかわからないのに、収束宣言するのはばかげています。
もっと責任感を持って、もっと真剣に考えてください。
日本は原発を建てたときから、地震と津波に関しては保険を掛けられませんでした。
確率が高すぎるからです。
しかも今回の事故を「津波のせい」にしようとしてます。
「千年に一度の津波」だと。
でもそれもウソですね。
IAEA(国際原子力機関)に報告した津波高は「14~15メートル」ですが、それは水が上がった「侵入高」でしょ?
津波は波の高さである「津波高」で言うことになっているんです。
今回の津波高は7メートル程度です。
昭和8年にも同程度の津波が東北に来ているじゃないですか。
百年も経っていないんです。
それでも「千年に一度」ですか?
ぼくらの将来をなくすのは、政府や東電のような「無責任と不真面目さ」のおかげだと思います。
しかし私たちも反省すべき点があります。
「自分で判断してこなかったこと」です。
考えるのをあきらめて、どっかの無責任な専門家を信じて、自分の生命に対して無責任な態度をとってきたことです。
とりあえず避難できる準備をしてください。
仕事も学校も家も何も捨て去る準備を。
今の福島第一4号炉の状態は、それほど危ういと思います。
続いて、1月8日に、東京新聞に掲載された、4号機タンクの水位低下についての記事を転載します。
【福島第一原発の現状】4号機タンクの水位低下
『1月1~7日の1週間、福島第一原発では、
1日午後に、4号機の使用済み核燃料プールに隣接したタンクの水位が急に下がった。
直前に、東北や関東で震度4を記録した地震の影響とみられる。
タンクの水は蒸発で減るが、この時は
通常時の約5倍のペースで低下。
当初、東京電力は水漏れを疑った。
その後の調査で、
水漏れはなく、地震の影響により、プールからタンクに流れ込む水が一時的に止まっていただけの可能性が高いと分かった。
一方、高濃度汚染水を処理した水が流れるホースに、雑草のチガヤが刺さり、小さな穴から水漏れを起こす現象に現場は悩まされてきた。
東電が集計したところ、昨年7月以降、22件もあった。
原子炉への循環式注水は、長期にわたって続ける必要があり、こうした小さな問題は早いうちに解決しておくことが重要。
東電は対応策を練っている』
さて、専門家でもないわたしには、タンクの水位が急に下がった本当の理由など、つきとめられる知恵も術も無いけど、
この4号機の危険度は、どうも政府や東電が思いたい程度のものではなさそうやということだけは、世界各地からの情報でわかる。
水漏れがあろうとなかろうと、たった震度4(こんなふうに思てしまう自分が怖い)程度の地震で、
今度こそほんまに、とりかえしのつかん、致命的な事態を招くかもしれんほどに壊れてしもてる原発があるということ、
これがかなん……ほんまにかなん……。
そんな恐ろしいもんを人に任せっきりで、これ以上避難せなあかんようなことは絶対起こらんやの、収束したやの、自分らの責任ちゃうやの、
無責任極まりない、不真面目な連中が、責任者面して好き放題言うてるのを、なんの迷いも無く垂れ流してる新聞やテレビ。
これもかなん……ほんまにかなん……。
よう噛んで、早寝早起きして、なんぼ健康に気ぃつけてたかて、空から核物質がワラワラと降ってきたらどうにもしゃあない。
原発をホイホイ増やしてきたあんたら、現職引退してようがしてまいが、自分らの欲得を満たしてきてくれた核燃料や、かわいいやろ?
ひとり一本ずつ引っこ抜いて、ようよう注意して、ここやったら安全やという場所教えてもろて、そこに家と管理小屋建てて暮らしたらええやん。
こんなこと言うてもしゃあないと思ててもつい言うてしまう。
このあほらしさと一日も早う決別したい。