8月30日(金曜日・アメリカ側晴れ/カナダ側曇り後雨)
ギリギりまで迷たカナダ行き。
やっぱり行くことにして、生徒にごめんなさいを言うた。
もともとこの週は、夏休み最後の、勤労感謝の日を挟んだ連休になるので、夏の〆の旅行に出かける家族が多い。
そしてこの、勤労感謝の日(レイバーデイ)が終わると、学校の新年度が始まる。
長い長い夏休みを終えて、大人も子どもも皆、ちょいと緊張気味になる。
カナダの、日常とはちょっと隔たりのある山のてっぺんの湖畔はだから、新しい年を前にしての、最後の息抜きになる。
いやもう、充分息抜きしてたやんか、と言われそうやけど、まあそれはそれ、他の世界と完全に遮断された空間で、時間を過ごさせてもらうことにした。
もう秋か?という毎日が続いてたのに、空には夏が弾けてた。
そろそろカナダと国境に近づいてくると、両側の景色が絵はがきの世界に。
カナダの入国管理局が、めちゃ空き!これは記録かも。
今回、検査官の質問がすごかった。
持ち込んだらあかんもんをガンガン聞いてきた。
肉類などの生もの、銃器、マスタードガス……いや、そんなもん持ってへんし、持ってても言わへんし……。
でもって、わたしはパスポートを提示せんでもよくて、グリーンカード一枚で入れてもろた。
モントリオールはいつものごとく渋滞に次ぐ渋滞。
ほんで、なぜかそういう時にハンドルを握ってるのはわたし……。
結局、別にどこにもゆっくり寄ってへんのに、10時間近くかかってしもた。
途中で大雨が降ってきて、洗車終了!
近くのスーパー(名前がIGA?!)で、とりあえず二日分の食材を手に入れ、湖に到着。
湿気が湖畔特有の香りをぎゅっと抱きしめていて、小屋の中はなつかしい匂いが充満してた。
まずは水温チェック。
けっこうあったかい。
泳ごか。
ぐわぁ~ん……水着忘れた。
誰も見てへん、旦那のTシャツ借りて、パンツでジャブン!
今年の水の量はかなり多い。
雨がぎょうさん降ったんかなあ。
骨付豚の香草焼きとサラダ、ほんでもってベイクドポテト。
去年のクリスマスのプレゼントにもろた赤ワインで、無事に着けたお祝いをした。
昨日はろくすっぽ寝てないので、今日はこれでおしまい。
8月31日(土曜日・曇り)
湖畔の家では、音が息を潜めてる。
冷蔵庫が己を冷やすために働いている時と、水を湖から吸い上げるポンプの音が、ここでの物音。
静けさがここまで濃いと、普段は聞こえない自分の呼吸や軽い耳鳴りの音、それから、林の雨のしずくが地面に落ちる音が聞こえる。
思いっきりの曇り
分厚い雲の下でも、湖はやっぱり美しい。
あちこちで魚が跳ねる音が聞こえる。
スタンディングメディテーションを湖に向かってしてたら、背後から、「朝ごはんできたよ~」という旦那の声。
なんという幸せ、なんという贅沢。
これだけでも、ここまで来た甲斐があるというもんです、はい。
夜中にも雨が降った。
朝ご飯の後は日記を書いて、
地面はもうフカフカ。
うまそ~なキノコ。
さて、ここでの生活に欠かせへんお水。
水道の蛇口から出てくるのは湖のお水やから、直接飲んだり生で食べる野菜は洗えへん。
なので、ちょっと離れたとこにある、公共の、山の清水が流れ出てるとこまで行って汲み置きする。
こんなふうに、別の容器に水を汲み、地元の葡萄を洗う。
子どもの頃に遊んだおままごとみたいに。
お茶碗は洗い桶と濯ぎ桶に分けて、チョロチョロの水でていねいに洗う。
では、散歩がてら、お水汲みに出発。
空の容器を両手に、
どんどん歩く。
さらに歩く。
容器をひとまず置いて、ご近所散策。
新しい工事関係のビジネスを始めたらしい、元スーパーマーケットのオーナー。
その隣には、クレープとカフェのお店が。
毎週金曜日の夜に、ビンゴゲームの会場になる、お年寄りのための集会所。
もうあんまり見られようになった公衆電話と一時停止サイン。
今日の朝10時から、カヌーしたり音楽聞いたり、ホットドッグ食べたりするパーティありますよ~。というお知らせらしい……旦那のフランス語読解力を信じたら。
やたらとデカい、ここは行き止まりで、どっちにも行けるでサイン。写真を撮ってたら、近所の人らに笑われた。
郵便と新聞の受け取り場所。
元教会か?と、近づいてよくよく見てみると、まだまだ現役。失礼しました。
ジプシーモスと呼ばれる大きな蛾の巣。木を殺してしまうらしい。
くねくねダンスする道。
我らがシルバーレイク小径への入り口。
表札さえもかっちょいい。
紅葉が始まってる。
山にはいつも、ただここで咲く、静かで可憐な花がいっぱい。
水泥棒!
いえいえ、これは公共のいただきものです。
今年はやっぱり相当雨が降ったみたい。水量がいつもの3倍はある。
このおいしさ、冷たさというたら……。
男は黙って水を運ぶ。
紅葉開始。
木の根っこと共存する茸。
湖畔のベンチに座ってしばらくボォ~ッと。
湿地の美。
ルーとイライザと犬のバートが、モントリオールからやって来た。いっぺんに賑やかになる。
師匠が送ってくれはった、お楽しみ小包から、御薄茶と茶筅と千菓子、ほんでもって両口屋のおちこちを、皆で楽しむ。
カナダ人もアメリカ人も、誰もが「う、うまい、これ」と言う。
足長クモもやってきて、おちこちを食らふ。
旦那も挑戦。上手にできました。
イライザとわたしが座式瞑想を1時間やってるうちに、男たちはボート遊び。
その向こうでは、ちっちゃな女の子がジェットスキーの練習中。
さあ泳ごう!
正統派犬かき。
先に上がってご主人様を見つめる。
ルーのおとうさんテリーが見つけてきた木の根っこ。
どこにでもギターを持ち運ぶ男。
遠くまで泳いでいくイライザをじぃっと見つめるバート。
ざ・けったいなキノコ!
おやつのビスケット。ボクの大好物やねん!
今日は長男くんが、今まで暮らしてたアパートから荷物を出し、新しいアパートの入室可能日までの間、倉庫に預けるために、運転し慣れてない車であちこち走ってるはず。
無事に済みますように。
9月1日(日曜日・晴れったぁ~!)
もちろん朝一番の水遊び!
これがボクちんのタオル。
晴れの日の湖。
野生のブルーベリー。
バートお気に入りの穴(もちろんバート作)。
チップモンクを追いかけたいバート。
やっと会えたルーンの夫婦。この湖の主。
家の入り口で見っけた茸。
泳いで、本読んで、ルーたちが持ってきてくれた野菜パイを食べ、また本を読み、散歩に出かける。
近所の、手作りの小屋で、馬と鶏とうずらと七面鳥を飼ってる人がいると、イライザが教えてくれた。
産みたての卵を、1週間に2回、売ってくれるらしい。
めっちゃきれいな馬さんたち。
食事中やったけど、バートを見つけて見学に来る。
初めての森の中に。
ちびっこい蛙くん。もう少しで踏んでしまうとこやった。
森から出たところにある家の庭は、まだ森の中みたい。
産みたて卵の販売は、電柱の卵ボードが下がってる時だけやそうで、今日はお休み……残念!
泳いで、本を読んで、ワインを飲みながら政治や芸術の話をして、男たちが作ってくれた夕飯をいただく。
今夜でイライザたちとはお別れ。
また、旦那とふたりっきりになる。
し~ん……。
お互いに、夜中に何度も目が覚めてしまうので、やっぱり同じベッドで寝るのはしんどい。
なので、わたしが主賓室のベッドを独占させてもらい、旦那は一人用のベッドを居間に持ち込み、とりあえず隣同士で寝ることにした。
夜中に大雨が降る。
雨粒が屋根に当たると、葉っぱが濡れていく音とは対象的な、パタパタと乾いた優しい音がする。
やっぱり夜中に目が覚めて、次から次へと、考えても仕方が無いことが、自分を指名してくれとばかりに「はい、はい」と手を上げている。
9月2日(月曜日・勤労感謝の日・曇り)
朝一番の湖へのおはようを言いに行ったら、ルーンくんがツツゥ~っと泳いでた。
昨晩の大雨を降らした雲が、別の分厚い雲に追いやられ、透明で巨大な風の刷毛が、湖面に模様を作る。
ルーが置いてってくれたラジオで、天気予報を聞こうとスィッチをつけたら、福島第一の海洋汚染についてのニュースが流れてきた。
田中委員長が、
今日一日曇り時々雨、という予報なので、雨が降る前に長い長い散歩に出かける。
またまた発見!けったいな茸。
お食事中。
ザ・アザミ!
人の庭でくつろぐバンビちゃんたち。
あざやか~!
こちらもお食事中。
紅葉が日一日と進んでく。
すずらんの実。
あと二日分のお水汲みをして戻る。
天気予報の前のニュースで、福島の海水汚染のニュースが流れてきた。今や世界中が知ってる、地球規模の汚染犯罪。
昼から山の麓の町まで降りて、インターネットが使える場所を見つけてみよかどうしよか……。
せっかくの休暇なので、たまには外食しようと、やっぱり町まで降りた。
必ず行くフレンチカフェで、キノコとほうれん草のキッシュをいただく。
このコーヒー豆煎り器が、店の入り口にデンと構えてる。
隣の教会が今日はにぎやか。
ラテン音楽バクレツ♪
スキーリフトが並ぶ山も霧で霞んでる。
いつも利用させてもろてたネットカフェが消えてた。
あちこち探して入った店で、慌ててメールの確認だけをする。
そのために、お腹いっぱいやのに、このフライドポテトの上にチーズとソースをぶっかけた(名前忘れた)、次男くんの好物を注文する。
たまたまその短い時間の中で確認できた数件のメールの中に、ひどい中傷のコメントがあって、胸の奥にざわざわとした不快感が広がった。
目の動きや息づかいで、旦那はなにかあったことに気づき、わたしに漢方を処方してくれたのやけど、
そのコメントに対する負の感情がなかなか取り払えず、なんとも残念な思いでいっぱいになった。
夕方また、強い雨と雷が鳴り、そして虹が出た。
すぐに雲に隠れて、
湖の上にも夕焼け雲が映ってた。
眺めるものは自然だけ。
雨が上がると気温がぐっと下がったので、薪ストーブに火を焼べる旦那。
パチパチといういい音をたてながら、どんどん勢いを増す炎。
わたしのいやな気分も一緒に燃えてしまえ!