gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

小川勝己『あなたまにあ』

2007-06-16 18:05:12 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が面白かったという小川勝己氏の「あなたまにあ」を読みました。7つの短編からなる本です。
 第一話し「蝦蟇蛙(がまがえる)」は、都会から田舎に引っ越して来た垢抜けた少女は蛙が苦手なのを知って、蝦蟇蛙を捕まえて目の前に出すと、驚いた彼女の口の中に蛙が入り込み、しばらくして会った彼女に声をかけると、眼球が飛び出し、大きく口を開け、その目の穴と口の穴の中にはこちらをじっと見つめる無数のガマ蛙が私をじっと見つめていた、という話。
 第二話「聖夜」は、高校を卒業した時、結婚してほしい、と言った彼女に煮え切らない態度で接した僕に愛想をつかした彼女はスカウトされて東京に出て、一旦はスターになるも、落ちぶれて故郷に帰って来ます。そして僕と再会した彼女は、僕にずっと会いたかったと言い、僕らは結婚します。そして結婚して僕は彼女の相談に乗ってあげることもしなくなり、僕の父の介護に疲れ果てた彼女は父を殺す、という話。
 第三話「春巻き」は、学生のころは美沙に弱い自分を守ってもらっていた夏子は、今ではずうずうしいおばさんになり、美沙が憧れていた編集者にまでなって、美沙の家に昼を御馳走してもらいにしばしば来ます。美沙はうっとうしくてたまりません。ある日、夫が夏子の写真を見て自慰をしているのを見て、美沙は夫を殺し、死体を解体し、警察に捜索願を出します。そして夏子に夫の肉で作った春巻きを食べさせ、いつまでも友達でいようね、と言う、という話。
 第四話「壁紙」は、離婚した妻と息子のためにお金が必要だった俺は殺しを引き受け、12年服役する。12年後、妻は会ってくれない。しばらくすると、妻から電話で入院したので500万を貸してくれと言われ、俺はまた殺しを引き受ける。標的を待っているとき、チンピラにからまれ、ナイフで首を刺される。薄れ行く意識の中で、家族に迷惑がかからぬよう、携帯の待ち受けに使っていた息子の写真を拳銃で撃つ、という話。
 第五話「諧謔の屍」は、教師の三上は教え子の篠原に久しぶりに会いたいので、遊びに来てくれと言われる。行くと、篠原は三上が以前殴った子が精神に異常を来たし、今だ直らず、三上の妻と子どもの生首の写真を見せられる。と、「ドッキリカメラで~す」とビデオカメラをかついだ大関教諭と何人かの生徒が出て来た。学園祭の出し物にするのだと言う。三上は大関に踊りかかり、篠原を殺してしまう。三上は刑事からすべて夢だったのだ、というが納得できない。三上は次第に狂気の世界へ入っていく、という話。
 第六話「蘆薈(ろかい)」は、女性が生理的に嫌いな私は、少女と仲良くなるが、久しぶりに会った彼女が「女」になっているのに失望し、彼女を殺します。大切な部分だけ切り取りアロエの鉢に埋め、他の肉体は捨て、彼女の肉体の栄養を吸っているアロエを食べると幸福になります。しばらくして刑事が家宅捜索に入り、アロエの鉢に埋められた白骨化した死体を見つけますが、頭蓋骨にはアロエの根がびっしりとからみついていたのでした、という話。
 第七話「あなたまにあ」は、小二の佐奈は空想が好きですが、高校生ぐらいのお兄ちゃんが「今物語りはどうなってるの?」と聞いて来て、教えてあげると、佐奈の想像通りのの動きをしてくれます。それから加奈はお兄ちゃんと遊ぶようになり、ある日、お兄ちゃんちで遊ぶ事になります。お兄ちゃんちには、佐奈が捨てたガム、髪の毛、加奈が使った紙コップやストローやティッシュペーパー、爪、佐奈の家のゴミ袋から持ち出した歯ブラシ、靴下、下着までがありました。佐奈のすべてを手に入れたいが、殺したくはないので、佐奈を作った母と父の睾丸を手に入れた、と言います。佐奈が家に帰ると、家の電気はついていませんでした、という話。
 どれも救いのない話で、異常な人間、無気味な人間、不幸な人間のオンパレード。話は猟奇的なものが多く、そういう趣味を持っている人は楽しめるのでしょうが、私は気持ち悪いだけでした。猟奇殺人、それに類するものがお好きな方にはオススメです。