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打海文三『裸者と裸者(上)』

2007-06-23 15:23:27 | ノンジャンル
 吾妻ひでお氏が「正義感が壮快」と評した、打海文三氏の'04年作品「裸者と裸者(上)」を読みました。
 現在の日本で内乱がぼっ発します。海人(かいと)、恵(めぐ)、隆(りゅう)の兄妹弟は孤児になります。13才の海人は路上でのタバコ売りと食堂で働き、三人の生活費を稼ぎますが、仕事の帰りに誘拐され、少年兵にされてしまいます。脱走して、やはり孤児になった月田桜子と椿子という1歳年上の双子に出会います。家に帰ると恵と隆は生きていましたが、食堂は新人を雇ってしまっていました。海人は以前知り合ったマフィアのファンに自分の店のトイレ掃除の仕事をもらい、他の店も紹介してもらいます。就職祝いだ、と大家の若い女性が海人に初体験をさせてくれます。15才になった海人は久しぶりに月田姉妹に会いますが、二人は昏睡強盗で生計を立てていました。ある日、12才になった恵が高桑一味に誘拐されそうになり、隆はナイフで2人の男を刺し、一旦逃げるのに成功しますが、結局連中に家を壊されてしまいます。家は建て直しますが、高桑は恵たちを殺そうと狙ってるという情報が届きます。ファンは海人に携帯と現金をくれ、何かあったら連絡するように言います。しばらくして、政府の発表で15才以上が徴兵の対象になります。海人は安定した収入を恵と隆に保証してくれると考え、3年の兵役に応じることにし、月田姉妹に恵と隆を高桑の勢力の及んでない水戸に住まわせる手配をしてくれるように頼みます。
 海人が所属する常盤軍は南下を続け、途中の武装勢力、反政府軍を駆逐していきます。給料が止まると、海人は押収したドラッグをファンに送り続けて作っていた資金から、部下に給料を払います。部下が女の子を守るために殺され、弟と数人の孤児が連れていかれます。海人の孤児部隊は弟の奪回に向かいますが、弟は既に殺されていました。海人は犯人の中隊長を射殺し、二人の孤児を救出しましたが、上層部から処分はありませんでした。常盤軍は帰還し、海人はファンから莫大な金を受け取ります。水戸での1年ぶりの妹弟との再会。隆は10才、恵は12才、月田姉妹は17才になっていました。海人は隆の徴兵を逃れるため、ユニバーサル・スクール東京校に恵と隆を入れ、外国人部隊の隊長イリイチの家族が住む東京のマンションに4人を移住させます。
 海人の新たな上司は、中隊長射殺の際、海人を処分しなかった女中尉・白川でした。海人は史上初の16才の小隊長になります。彼は部下に強姦と略奪を禁止し、人身売買を取り締まります。資金はドラッグの押収で調達しました。部下の忠誠心は高く、海人は孤児院までも自費で作ります。そして彼は18才になり正規軍の兵士となりますが、彼は孤児中隊を先鋭化して生き残ることしか考えていませんでした。海人たちは日本のマフィアの常陸TCを殲滅します。月田姉妹は長距離トラックのドライバーになり、恵たちのマンションを出ます。海人たちは磐城軍も殲滅します。女性部隊ンガルガニは負傷者の治療に当たってくれ、海人たちと協力関係を結んでくれます。そして彼女たちから海人の母が海外へ売り飛ばされ、行方を探すのが不可能になったことを知らされます。大家の女性の魚屋の開店に、久しぶりに海人、恵、隆、月田姉妹ら仲間が皆集まり、祝宴をあげる場面で、上巻は終わります。
 とても重い小説です。延々と続く戦闘の記述の中で、主人公たちの清らかな心、ホッとする気持ちの交流が胸を打ちます。登場人物が多すぎるのが難といえば難ですが、海人の存在感の前では、そんな問題は吹き飛んでしまいそうです。
 後半は月田姉妹の話が中心になり、大団円を迎えます。ご期待ください。