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梶山季之『せどり男爵数奇譚』

2010-01-25 18:42:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、梶山季之さんの'74年作品「せどり男爵数奇譚」を読みました。作家である私が出会った古書収集家の「せどり男爵」が語ったエピソード集です。
 学生時代に信州に療養しに行った時、「謡曲百番」という古書に出会い、未亡人から探していた端本を譲ってもらった話、仙台のクズ屋で初版が発禁になった「ふたんす物語」を見つけ、蔵書票を剥がすと持ち主が子孫に残した財産の隠れ場所が書いてあったのですが、現場にはマンションが建ってしまっていたという話、ソウルに古書を探しに行って、資産家に稀観本を箱5つ分も貰った話、シェークスピアの初版本を手に入れるため、裁判まで起こした占領軍士官の夫人の話、キリシタン本を手に入れるため、放火・殺人を犯した大学教授の話、装丁に凝るあまり人皮に手を伸ばし、最後には自分の性器の皮で本を装丁する装丁家の話からなっています。
 圧倒的にすごいのはやはり最後のエピソードで、「黒髪」という本には髪の毛がついた状態の若い女性の頭皮を使ったり、「愛の乳房」という本には表紙と裏表紙に本物の乳首がついていたりという猟奇的な話で、このエピソードだけが突出していました。全体としては19世紀的な小説でしたが、文体が読みやすかったことで最後まで読めたのだと思います。本をめぐる奇妙な話を読んでみたい方にはオススメです。