さて、恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。
まず9月22日に掲載された「酸ヶ湯首相の1年」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「2020年2月、北海道雪見市の救命救急センターで、ひとりの患者が急死した。彼は中国の団体客を専門に運ぶ観光バスの運転手だった。
同じころ、横浜港に停泊したクルーズ船ダイヤモンド・ダスト号の船内でも異変が起きていた。一報は官邸にも届けられるが、安保(あぼ)幸三首相はたるみきっていた。「なんか、コロナって嫌いなんだよね。さっさと済ませてくれないかなあ」
以上、海堂尊『コロナ黙示録』(昨年7月刊)の一節。20年2月~5月の第一波のドタバタぶりを描いた小説で、フィクションなのに随所で笑いが引きつった。
今月発売の『コロナ狂騒録』はその続編。20年9月、安保首相が辞意を表明したところから物語ははじまり、酸ヶ湯儀平政権の発足と第三波、五輪開催直前の21年7月までを追っている。
今度は登場人物も多士済々だ。ワクチン担当として派手に登場するも見かけ倒しの豪間大臣。GoToトラベルに固執する自保党の煮貝幹事長。政治と医療の板挟みになるアドバイザーリーボードの近江座長。肩かな用語で煙に巻く東京都の小日向知事。都構想の住民投票で医療を崩壊させた浪速府の鵜飼知事。
小説は酸ヶ湯首相の茫然自失(ぼうぜんじしつ)した姿で終わりのだけど、ふと現実に戻ると一年前とそっくりの光景が! 現実とフィクションの区別がもうつかないよ。」
また、9月29日に掲載された「脱新自由主義」と題された斎藤さんのコラム。
「どうせ今日のメディアは自民党総裁選一色に染まるだろうから、あえて野党のことを書く。
衆院選を前に立憲民主党が27日に発表した経済政策は、けっこう思いきったものだった。特にスゴイのは「年収1千万円程度以下の所得税実質免除」だろう。5%の消費減税も「時限的」の制限つきながら導入。気になる財源は当面は国債で賄い、長期的には「富裕層や超大企業への優遇措置の是正で捻出」。
共産党が22日に発表した経済政策も魅力的だ。コロナ危機下での生活困窮者に一律十万円の特別給付金を支給。最低賃金を全国一律1500円に引き上げ。生活保護を「社会保障制度」に改め必要な人がすべて利用できる制度に改革。
両党の方向性はおおむね一致していると見てよいだろう。要は格差を広げる新自由主義からの脱却だ。社民党とれいえ新選組を加えた野党4党が合意した経済政策もこの路線に沿っている。
「絵に描いたアニメじゃないの?」と思う人もいるでしょうね。だが自民党はと見れば、こちらの総裁4候補もこぞって一定の財政出動を匂(にお)わせている。コロナ禍で緊縮財政の人気は急落中だ。
総裁選は米大統領選でいえば予備選みたいなもの。本番はもちろん総選挙である。へらへらと新総裁へのご祝儀報道をやってる場合ではない。どちらが本気か。論戦はこれからだ。」
そして、9月26日に掲載された「安倍前首相の暗い影」と題された前川さんのコラム。
「退陣後一年を経てなお安倍前首相の暗い影を感じる報道が続いている。森友学園問題で安倍昭恵氏らの名が記載された決裁文書を改竄(かいざん)させられ自殺した赤木俊夫さん。妻雅子さんが開示を求めた公務災害認定報告書のうち、赤木さんの業務内容などを人事院が不開示にしたのは違法だと、総務省の審査会が16日に答申した。人事院はなぜ赤木さんの業務内容を隠そうとするのか?
22日に警察庁長官に就任した中村格(いたる)氏は2015年、安倍氏と親しい山口敬之氏に対する準強姦(ごうかん)容疑でのp逮捕を中止させた。これについて会見で問われた中村氏は「法と証拠に基づき捜査を尽くした」と答えた。捜査を尽くすなら逮捕すべきだったのではないか?
またジャパンライフの山口隆祥元会長は同日の東京地裁の初公判で詐欺罪の起訴内容を認めた。彼は安倍首相からの「桜を見る会」への招待状で被害者を信用させていた。そこには60という首相推薦枠を示す番号があった。安倍氏は山口被告とどういう関係なのか?
さらに同日、自民党の柴山幹事長代理は2019年参院選で買収を行った河井克行・案里夫婦からの報告を根拠に、党本部が供与した1億5千万円が買収原資ではなかったと説明した。買収した本人の報告では根拠にならない。資金供与の最終責任者だった安倍氏はなぜ説明しないのか?」
どれも一読の価値がある文章だと思いました。
まず9月22日に掲載された「酸ヶ湯首相の1年」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「2020年2月、北海道雪見市の救命救急センターで、ひとりの患者が急死した。彼は中国の団体客を専門に運ぶ観光バスの運転手だった。
同じころ、横浜港に停泊したクルーズ船ダイヤモンド・ダスト号の船内でも異変が起きていた。一報は官邸にも届けられるが、安保(あぼ)幸三首相はたるみきっていた。「なんか、コロナって嫌いなんだよね。さっさと済ませてくれないかなあ」
以上、海堂尊『コロナ黙示録』(昨年7月刊)の一節。20年2月~5月の第一波のドタバタぶりを描いた小説で、フィクションなのに随所で笑いが引きつった。
今月発売の『コロナ狂騒録』はその続編。20年9月、安保首相が辞意を表明したところから物語ははじまり、酸ヶ湯儀平政権の発足と第三波、五輪開催直前の21年7月までを追っている。
今度は登場人物も多士済々だ。ワクチン担当として派手に登場するも見かけ倒しの豪間大臣。GoToトラベルに固執する自保党の煮貝幹事長。政治と医療の板挟みになるアドバイザーリーボードの近江座長。肩かな用語で煙に巻く東京都の小日向知事。都構想の住民投票で医療を崩壊させた浪速府の鵜飼知事。
小説は酸ヶ湯首相の茫然自失(ぼうぜんじしつ)した姿で終わりのだけど、ふと現実に戻ると一年前とそっくりの光景が! 現実とフィクションの区別がもうつかないよ。」
また、9月29日に掲載された「脱新自由主義」と題された斎藤さんのコラム。
「どうせ今日のメディアは自民党総裁選一色に染まるだろうから、あえて野党のことを書く。
衆院選を前に立憲民主党が27日に発表した経済政策は、けっこう思いきったものだった。特にスゴイのは「年収1千万円程度以下の所得税実質免除」だろう。5%の消費減税も「時限的」の制限つきながら導入。気になる財源は当面は国債で賄い、長期的には「富裕層や超大企業への優遇措置の是正で捻出」。
共産党が22日に発表した経済政策も魅力的だ。コロナ危機下での生活困窮者に一律十万円の特別給付金を支給。最低賃金を全国一律1500円に引き上げ。生活保護を「社会保障制度」に改め必要な人がすべて利用できる制度に改革。
両党の方向性はおおむね一致していると見てよいだろう。要は格差を広げる新自由主義からの脱却だ。社民党とれいえ新選組を加えた野党4党が合意した経済政策もこの路線に沿っている。
「絵に描いたアニメじゃないの?」と思う人もいるでしょうね。だが自民党はと見れば、こちらの総裁4候補もこぞって一定の財政出動を匂(にお)わせている。コロナ禍で緊縮財政の人気は急落中だ。
総裁選は米大統領選でいえば予備選みたいなもの。本番はもちろん総選挙である。へらへらと新総裁へのご祝儀報道をやってる場合ではない。どちらが本気か。論戦はこれからだ。」
そして、9月26日に掲載された「安倍前首相の暗い影」と題された前川さんのコラム。
「退陣後一年を経てなお安倍前首相の暗い影を感じる報道が続いている。森友学園問題で安倍昭恵氏らの名が記載された決裁文書を改竄(かいざん)させられ自殺した赤木俊夫さん。妻雅子さんが開示を求めた公務災害認定報告書のうち、赤木さんの業務内容などを人事院が不開示にしたのは違法だと、総務省の審査会が16日に答申した。人事院はなぜ赤木さんの業務内容を隠そうとするのか?
22日に警察庁長官に就任した中村格(いたる)氏は2015年、安倍氏と親しい山口敬之氏に対する準強姦(ごうかん)容疑でのp逮捕を中止させた。これについて会見で問われた中村氏は「法と証拠に基づき捜査を尽くした」と答えた。捜査を尽くすなら逮捕すべきだったのではないか?
またジャパンライフの山口隆祥元会長は同日の東京地裁の初公判で詐欺罪の起訴内容を認めた。彼は安倍首相からの「桜を見る会」への招待状で被害者を信用させていた。そこには60という首相推薦枠を示す番号があった。安倍氏は山口被告とどういう関係なのか?
さらに同日、自民党の柴山幹事長代理は2019年参院選で買収を行った河井克行・案里夫婦からの報告を根拠に、党本部が供与した1億5千万円が買収原資ではなかったと説明した。買収した本人の報告では根拠にならない。資金供与の最終責任者だった安倍氏はなぜ説明しないのか?」
どれも一読の価値がある文章だと思いました。