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大崎梢『晩夏に捧ぐ』

2007-02-13 16:15:32 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事「2006年 この一冊」の中で、八重洲ブックセンター汐留メディアタワー店の店員さんがエンターテイメント系ということで推奨していた大崎梢さんの「晩夏に捧ぐ・威風堂書店事件メモ(出張編)」を読みました。
 犯人に間違えられた男のアリバイを証明してあげた威風堂の杏子のもとに、元同僚で今は地方の由緒ある書店まるう堂で働く美保から、最近店に幽霊が出て困っているので、ぜひ来てほしいという手紙が来ます。杏子は後輩の多絵と連れて、連休中に美保を訪ねます。駅に着くと、歓迎の垂れ幕と、「めいたんてー」と叫ぶ幼稚園生たちに迎えられます。まるう堂は初代の店主が棚作りに凝った店として地域に定着し、息子は郊外に現代的なブックセンターを運営しています。そしてまるう堂には地元の小説家・喜多山成治のコーナーがあるのですが、喜多山が弟子の小松秋郎に殺された事件がこの幽霊事件に関わりがあるのでは、という噂で持ちきりなのでした。そして主に多絵の直感的な推理により、当時の喜多山の弟子であり、喜多山に厳しく叱責を受けたのを恨んで喜多山を殺し、今回の幽霊騒動を起こした張本人でもあった男を突き止めます。
 もちろん、これ意外にも、様々な人間関係、殺害後無くなった原稿の謎、書店の棚作りの工夫など、いろんな細部が描かれています。多絵の明るいキャラクターも楽しくさせてくれました。
 ただ、これはミステリー小説なんですよね。推薦文にもはっきりと書かれていました。
 今までにも何回も書いてきましたが、私はミステリーが苦手です。理由は3つ。
1、事件発生→推理→謎解き→その後 という構造が決まってしまっている事。
2、登場人物が多く、人物描写が表面的。
3、謎解きの後に、何かしら人生訓的なことを言う。
以上です。だから好きという方もいらっしゃるでしょうが、私はダメでした。今後、ミステリー好きになる本に出会えたら、と思っています。

湯本香樹実『夏の庭』

2007-02-12 16:14:22 | ノンジャンル
 湯本香樹実さんの「夏の庭」を読みました。アマゾンでは、彼女の本の中で一番売れている本です。
 僕とでぶの山下とメガネをかけた河辺の小6の3人は、山下の祖母が死んだことをきっかけに、死に関心を持ち、死人を見るために、近所で一番死にそうな一人暮らしの老人に目をつけ、垣根の向こう側から監視します。庭にはゴミや何かわからないものが山積みされ、部屋の中のテレビが一日中ついていることでかろうじて老人が生きていることが分かります。三日に一度ぐらいコンビニにでかける老人が何を買っているかも調べたりします。そしてある日、魚屋の息子の山下は老人のために、店の刺身を玄関先に置いておくと、しばらくしたら刺身はなくなっていました。
 夏休みが始まり、生ゴミの臭いがひどくなってきたので、老人の庭のゴミを出していると、老人に見つかり、何のつもりで自分を見張っているのか、を聞かれ、散々しかられた後に、川辺は「おまえが死にそうだったから、見張ってたんだ。おまえがどんなし死に方をするか、オレは絶対見てやるからな!」と叫びます。その後、老人はよく食べるようになり、河辺は刺身に毒を入れとくべきだった、などと言います。そして、ある日テレビもつけず、外出した形跡もない老人の家を見た三人は死んだんじゃないか、と本気で心配しますが、老人の家の窓から、彼らの会話を聞いていたらしい老人がVサインをして、三人を激怒させます。老人は庭を片付け始め、それを見ていた三人が行き会わせたクラスの女子に覗き魔扱いをされ、老人から声をかけられたことをいいことにその疑いを晴らすため、老人の作業を手伝うことになります。洗濯干し、ゴミ出し、雑草取りなどを手伝い、それを目撃されたクラスの美女二人から誉められ、老人からはすいかを御馳走になり、老人の提案でコスモスの種を庭全体に蒔くことにします。
 家の手入れもし、見違えるようになります。老人の過去の生活についてもいろいろ質問しますが、返って来るのはぶっきらぼうな答えばかり。そして台風の来た日、老人は初めてまともな話をします。それは戦時中ジャングルをさまよった時の話で、恐ろしいものでした。三人は老人の別れた妻を見つけだし、再会させますが、人違いで、余計な事をするな、と老人に叱られます。が、後日、その女性はキイチゴを届けてくれ、老人と長く語り合います。
 ある日、おじいさんは夜三人を連れて電車に乗り、河原に連れていきます。そしてしばらくすると見事な花火が上がります。老人は花火職人だったのです。
 八月末のサッカーの合宿が終り、老人の家を訪ねると、老人は亡くなっていました。庭にはコスモスがたくさん咲いています。彼らは老人に話したいことが山ほどあったのに、と悔やみます。
 そして、三人は小学校を卒業し、それぞれの道に進む事になりますが、「オレたち、あの世に知り合いがいるんだ。それってすごい心強くないか!」という山下に、残る二人は感激し、再会を約束して別れて行きます。
 老人のキャラクターが厳しい中にも優しさにあふれていて、また、子供達の様子も生き生きと描かれていて、会話もリアルで、気持ちよく読めました。友情ものとしても読めるし、老人と子供の交流の話としても読めるし、いろんな読み方ができる本だと思いました。

ピタゴラスイッチの本

2007-02-11 20:08:28 | ノンジャンル
 随分前にここでも書いた記憶があるのですが、NHK教育テレビの朝の8時10分からの5分番組で「ピタゴラスイッチ・ミニ」というのが月曜から金曜までやっています。そのオープニングとエンディングで、ドミノ倒しをすごく複雑にした様々な装置が出てきて、その装置の各部を動きが次々に伝わって行くのがとてもあざやかで感心していたのですが、一度番組のエンディングのテロップで、どこかの大学の研究室が作っているということが書いてあり、やっぱりそうか、番組のスタッフが作れるレベルを超えてるものなあ、と思ったものです。そして、この度、ついにその装置の全貌を明らかにする本が発売されました。
 本の題名は「ピタゴラ装置 DVDブック(1)」で小学館から発売され、すでに10万部を突破したそうです。
 内容は、「装置」33本の映像を収録し、それに解説もついたものだそうです。
 ただ、値段が2940円とちょっとお高いのですが、それでも10万部売れたというのは、ちょっとすごいことなんじゃないでしょうか?
 私も今度本屋に行ったら、立ち読みしてみようと思っています。2940円は高いし、本屋で立ち読みするのも面倒という方は、朝8時10分にNHK教育テレビにチャンネルを合わせて下さい。そこには、それまで見た事も無い世界が広がっているはずです。

角田光代『今、何してる?』

2007-02-10 17:55:19 | ノンジャンル
 角田光代さんの「今、何してる」を読みました。彼女のエッセイ集で、構成は、「恋愛プリズム」と題された恋愛論が12編、「恋の言葉に溺れるな!」と題された、映画や小説の台詞についてのエッセイが12編、「旅と本の日々」と題された様々な内容のエッセイが11編、「本と一緒に歩くのだ」と題された、本の批評が27編です。
 面白かったのは、植物をすぐ枯らす著者が、朝顔の花を咲かすことに成功する「みどりの指と朝顔」、小学校の親友との交流を描いた「ハリーにルー、私にロン」、精神病院に入院したことがあるので、興味を持って読めた「『狂う』ってどういうこと」、うつ状態を脱するには本を読むのが最適という「『うつうつ』を吹っ飛ばせ」などでした。
 恋愛論はご説ごもっともという感じでしたが、今一つピンと来ず、本の批評は、読んでいた本が一冊しかなくて、考えてみると、3~4年前の新刊をこの本では批評しているらしく、ここ1~2年の新刊ばかり読んでいた私が読んでいないのも当たり前でした。
 非常に率直に書いてあり、読みやすかったです。角田さんのファンは必読の書でしょう。

 ということで、角田光代さんの本を何冊か読んできましたが、結果から言うと、あまり私の好みじゃないな、と感じました。「Presents」の中の2つの短編が良かったので、これはと思い、読み始めましたが、どの小説も主人公の自己主張が強く、なじめませんでした。読んでいて夢中にさせてくれることもなく、何となく読みつづけるのも苦痛で、楽しい読書体験ではなかったと思います。もちろん、これは私見ですので、角田さんの小説が好きという方も多くいらっしゃるでしょう。その方たちには、どうかお許しいただきたい、と思います。

角田光代『対岸の彼女』

2007-02-09 17:16:41 | ノンジャンル
 昨日テレビに「新ブログの女王」として、見た事も聞いたこともない、セーラームーンのコスプレもするというタレントが出ていました。ということは真鍋かをりは「旧ブログの女王」になっちゃったのか、と思っていたら、今日の朝日新聞の朝刊に、バレンタイン・チョコの簡易包装キャンペーン&マイ・バッグキャンペーンに顔を出していました。ブログの次ぎはエコですか。この人、ほんとに世渡りがうまいなあ、と感心しました。

 ところで、角田光代さんが第132回直木賞をとった「対岸の彼女」を読みました。1章ごとに小夜子の現在と葵の過去の人生が交互に語られ、最後に解け合います。あらすじは、次のようなものです。
 あかりを産んだ小夜子は、公園でグループを作る母親たちにとけ込めず、子供も公園で一人遊びをする始末です。子供の社会性をつけようと、保育園に入園させようとし、自分も映画の配給会社に入社できます。社長の葵はざっくばらんな性格で小夜子と気が合いますが、配置されたのは、会社の経営が苦しく新しく始めた清掃業でした。
 中学でいじめに会い、高校は母の実家がある群馬の女子高に入学した葵は、無個性な子が集まるグループに入りますが、すぐ友達になったナナコは様々なグループを渡り歩きます。
 研修で清掃業者の典子に鍛えられる小夜子は、典子から異種業親睦会に誘われます。
 冒頭では、葵とナナコ、葵と母の交流が語られます。後半で一人ずつ次々に虐めの対象になるクラスの風潮が語られますが、ナナコは気にせず、葵と変わらず河原で語り合います。
 あかりの保育園がようやく決まり、小夜子の仕事も順調で、独身の葵と人生について語り合います。
 高2の夏、ナナコの複雑な家庭環境が理由でいじめが始まり、葵とナナコは夏休みに伊豆のペンションで働きリフレッシュします。しかし、仕事が終り家へ戻る電車にナナコはどうしても乗らず、「帰りたくない」と言い、葵も行動を共にします。
 典子の研修が終った後、小夜子がリーダーになることになり、自宅のプリンタでチラシ作りをします。
 ナナコの家の乱雑さを思い出しながら、葵はナナコと大磯のラブホテルで一泊し、仕事を探しに来た横浜のディスコで食事をすまし、ラブホテルで泊まる生活を続け、ついに葵はカツアゲをし、屋上で語り合っていた二人は、葵が「ずっと遠くへいきたいね」といい、ナナコが「飛んでみようか」と答え、二人で手を繋いで飛び下りてしまいます。
 小夜子は自分が働くことで夫と口論しますが、清掃業の方は準備が順調に進んで行きます。
 葵は病院で目を覚まし、2週間ほどで退院し、家で見つけた記事で、レズの女子高生の心中としてマスコミに報道されたことを知り、ナナコの行方を探るが分からず、働きづくめの母に「何が不満なの」と激怒されます。
 あかりの運動会の最中に、清掃業の最初の依頼が来て、小夜子は大喜びします。葵は初仕事の前祝いということで、前から言ってた温泉に行かないか、と小夜子を誘い、あかりも連れて連休を使って行く事にします。葵は泊まって行こうと言いますが、主婦の小夜子は誘いを断ります。
 飛び下り以来、学校を休んでいた葵は終業式には出ます。終ると校門で個人タクシーをしている父が待ってくれていました。父はナナコに会わせてくれます。二人は久しぶりに言葉を交わし、また別々の道へと向かわされます。
 小夜子がリーダーの清掃業は同僚が文句を言い始め、3人が辞表を出し、葵はせっかく軌道に乗り始めた清掃業を止めると言い出します。そして別れ際、小夜子は葵に自殺未遂の後の話を尋ねます。
 ナナコのいなくなった学校へ相変わらず葵は通います。ナナコからの手紙は来ず、大学に進学しても、19歳の誕生日も、何の連絡も来ません。人と関わることに疲れてきたところに現れたのが、同じ大学を卒業した小夜子でした。
 年末、あかりと過ごす小夜子。葵の家を訪ねると、机の上にはナナコからの手紙がありました。
 以上、段落ごとに章の内容をまとめたのですが、分かったでしょうか? 実際に読んでいても小夜子と葵のキャラクターがごっちゃになることが何回かありました。面白い試みだとは思います。
 この小説で一番私が気に入ったのは、あかりちゃんの描写でした。言う事、やる事かわい~。目の前にいたら、抱き締めてあげたいぐらい、かわいかったです。小説自体より、そっちに惹かれました。