gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

三崎亜記他『オトナの片思い』

2010-01-21 13:51:00 | ノンジャンル
 '07年に刊行された複数の作家による料理をめぐる短編集「オトナの片思い」を読みました。
 石田衣良「フィンガーボール」は、年下の男とディナーしながら夫のことを思う30代の女性の話。
 栗田有起「リリー」は、恋をすると下痢をする女性の話。
 伊藤たかみ「からし」は、何事にも無頓着な同棲相手がカレーにだけはこだわる話。
 山田あかね「やさしい背中」は、ダッカに仕事で行った女性テレビディレクターが、同行したカメラマンに恋してしまう話。
 三崎亜記「Enak!」は、風邪で体調を崩していた時に料理で助けてくれた「影なき者」のエナさんが、私がイラストレーターとしての仕事が軌道に乗った頃、周囲の迫害から逃れるために町を去りますが、私が成功して参加したパーティーにシェフとしてまたもてなしてくれたという話。
 大島真寿美「小さな誇り」は、10才下の新入社員に恋してしまった30代の女性課長の話。
 大崎知仁「ゆっくりさようなら」は、5年の結婚生活の後、突然離婚話を持ちかけられ、妻のいない生活になかなか順応できないという話。
 橋本紡「鋳物の鍋」は、20代後半で離婚し、始めたコーヒーショップのバイトで知合った青年に心引かれつつも、友人に勧められた正社員の仕事にも心揺れるという話。
 井上荒野「他人の島」は、海の近くの惣菜工場で働く私と外人のカルロスと借金を返すために働いていたシゲさんの心の交流の話。
 佐藤正午「真心」は、バイトの娘の写真を撮ったことで、その娘が地元のアイドルになり、やがて有力企業の社長夫人になりますが、写真を撮った鰻屋の主人が事故に会ったことで再会し、駆落ちしてしまう話。
 角田光代「わが葉の恋」は、10年付き合った恋人にふられ、離婚も経験した女性が、定食屋で会う青年にときめくだけで満足する話です。
 やはり三崎さんのものが圧倒的に面白かったです。それに次ぐのは奇妙に幻想的な風景が描かれている井上さんの短編でしょうか。いずれにしても、三崎さんの短編を読むためだけでも読む価値のある本だと思います。オススメです。

ジョージ・マーシャル監督『青い戦慄』

2010-01-20 13:27:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが本「美女と犯罪」の中で取り上げていた、ジョージ・マーシャル監督の'46年作品「青い戦慄」をDVDで見ました。
 バズとジョージとともに復員したジョニー(アラン・ラッド)はホテル住まいの妻ヘレンの元へ帰りますが、そこでは彼女主催のパーティが開かれていて、彼女の愛人エディがヘレンにキスしているところを見たジョニーはエディを平手打ちします。パーティの後、ヘレンはパーティで酔っ払い、帰りに交通事故を起こして息子を死なせたことを告白し、怒ったジョニーは拳銃を置いて部屋を飛び出します。ヘレンからジョニーが出て行ったことを知らされたバズは心配して彼を探しに出ますが、ヘレンにバーで会い、彼女に誘われるままに彼女の部屋へ行きます。雨の中を歩いていたジョニーはエディと別居中の妻(ヴェロニカ・レイク)に車で拾われホテルに泊まります。翌日ヘレンは射殺体で発見され、容疑者としてジョニーの名がラジオで放送され、それを聞いたジョニーの振るまいからヘレンは彼がジョニーであることを知ります。ジョニーは自分の荷物をあさって密告しようとしていた宿の主人と取っ組み合いをしているうちに、息子の写真の裏にヘレンのメッセージを見つけます。それにはエディが以前殺しをしたことがあるので、自分が死んだら彼が犯人だと書かれていました。ジョニーはバズとジョージの元を訪ねますが、彼らがジョニーを犯人だと思って匿おうとしるのに腹を立て出て行きます。そこへエディの手下が現れジョニーを拉致すると、バズらはエディの元を訪ね、ジョニーに手出しをしたら後悔するぞと言います。関係者は全員警察署に集められ、事情を聴取されますが全員にアリバイがあることが分かります。そこへジョニーも現れますが、彼も警察は無罪だと言います。
迷宮入りになりそうになった時、バズが当夜の記憶を甦らせ、ホテル付きの探偵が犯人だと気付き、探偵は犯行を認め、逃げ出そうとしますが射殺されるのでした。
 あらすじからも分かるように、プロットが断片的で理解しにくいものでした。アラン・ラッドとヴェロニカ・レイクのコンビも、山田さんの文章で読んでいた方がずっと刺激的だったように感じました。伝説的なブロンド女優であるヴェロニカレイクを未だ見たことがない方にはオススメです。

飯嶋和一『始祖鳥記』

2010-01-19 18:38:00 | ノンジャンル
 宮田珠己さんが著書「スットコランド日記」で言及していた、飯嶋和一さんの'00年作品「始祖鳥記」を読みました。
 江戸中期の備前岡山。優れた表具師の幸吉は、幼い頃に蜃気楼で見た異国の風景が忘れられず、凧を作って橋から飛ぶことを繰り返します。それを目撃した者たちはそれを鵺(ぬえ)と見なし、故事に習って現在の腐敗した政治を揶揄しているものとして喝采を叫びます。やがて幸吉は捕らえられ、財産を全て没収された上で所払いにされます。幸吉と同郷の源太郎は自分の弁財船に彼を乗せてやり、江戸近くで塩を商っている伊兵衛に求められて関西の塩を江戸に運ぶ仕事をして財をなします。その船のベテランの乗組員である杢平(もくべえ)が船を降りて駿府に居を構えると、幸吉もともに船を降りて木綿商を始めます。しばらくすると蝦夷に外国船が訪れ始め、それに刺激された杢平は再び船に乗りますが、しばらくして病死します。その知らせを聞いた幸吉は命のはかなさを思い、生きているうちに空を飛びたいという夢が再び起こり、60mの高さから凧に乗って空を飛び、見事に着地するのでした。
 歴史小説特有の固有名詞の多さ、細部に渡る説明文の多さに辟易しましたが、少し飛ばし読みしながらも最後まで読み終えることができました。内容的には惹かれる部分があったからでしょう。歴史小説が好きな方にはオススメかも。

ジャ・ジャンクー監督『プラットホーム』

2010-01-18 13:22:00 | ノンジャンル
 シネマート六本木で、ジャ・ジャンクー監督の'00年作品「プラットホーム」を見ました。
 城壁で囲まれた町の農村娯楽劇団に所属する24才のミンリャンは、やはり劇団に所属する恋人のチョンビンに結婚しようと言いますが相手にされません。チャンジュンは逆に恋人に結婚を迫られますが、同意しません。彼らは公演の合間は無為に町で過ごしますが、やがてチョンビンは劇団から去り、行方が分からなくなります。チャンジュンは恋人を妊娠させ中絶させようとしますが、恋人は断ります。やがて恋人は子供を産んで徴税官となって働き始めます。ミンリャンの父は浮気相手に店を持たせ、それを知ったミンリャンは談判に行きますが父は留守でした。赤ん坊をあやすチョンビンのそばで、ミンリャンは惰眠をむさぼるのでした。
 2時間30分を超える映画でしたが、そんな長さを感じさせることなく見終えることができました。ここでもやはり登場人物らの背景は壁などで閉ざされ、乗り物や人物が縦移動する時だけ奥行きのある画面になっていました。ロードムービーというふれこみでしたが、この閉息感はそれとは対照的なものでした。けだるい中国の田舎の雰囲気を味わいたい方にはオススメです。

小松左京『影が重なる時』

2010-01-17 15:20:00 | ノンジャンル
 小松左京さんの'64年の短編集「影が重なる時」を読みました。
 「影が重なる時」は、ある地域内で本人にしか存在しない分身が現れ始めますが、それは未来に起こる核爆発による時空間の歪みで生じたものであり、被爆直後の広島を思わせるという話。
 「さとるの化物」は、相手の考えが分かる人間を探しては、自分のテレパシー能力を使ってその者の思念を奪ってしまう女の話。
 「カマガサキ2013年」は、21世紀の乞食が26世紀からやってきた乞食に、誰もがお金を恵みたくなる機械を開発してもらいますが、目先の金に目がくらんで政府にその機械を売ってしまう話。
 「サラリーマンは気楽な稼業‥‥」は、22世紀に長寿のために定年が100才に延長され絶望する5才のサラリーマンの話。
 「痩せがまんの系譜」は、家の唯一の生き残りとなった独身女性のもとに、未来の子孫が江戸時代の侍を夫にするために連れて来る話。
 「墓標かえりぬ」は、列車事故で体をまっぷたつにされ、右半身だけパラレルワールドに飛ばされてしまった男の話。
 「三界の首枷」は、透視能力のある私が読心能力を持つ妻との間に、思念を送ることができる息子と念動能力を持つ娘を持つようになる話。
 「花のこころ」は、ある星で生きる意識のある植物が美しい花を咲かせたいと思い、人間の遺伝子を取り込むために人間を誘惑し始める話。
 「御先祖様万歳」は、100年前の幕末とつながった洞窟が出現したことによって生まれた悲喜劇。
 「遺跡」は、真田幸村のぬけ穴に入っていて水爆から命拾いした老人の話。
 「女か怪物(ベム)か」は、ある惑星に1人で滞在していると現れる理想の女性が本物か怪物かと隊員たちが悩む話。
 「さんぷる一号」は、合成食料を試食する仕事をする僕が社長一族の食料として自分が肥育させられていたことを知る話。
 「ダブル三角」は、家事から解放された主婦が強くなった世の中で、一時的に性転換し娘と付き合うようになった私が、その娘が性転換した青年と、やはり性転換した夫が付き合っているのに遭遇する話。
 「墓地での会合」は、団地の建設予定地にある墓地に出るという幽霊を見に行くと、それは核爆発後の人々の姿で、彼らにとっては自分たちが爆発前の幽霊だったという話。
 「お召し」は、三千年前の古文書に、ある日突然11才以下の子供たちだけの世界になったことが書かれていて、12才になると姿が消える現在がその時に始まったことが分かるという話。
 「火星の金(かね)」は、火星の宝石と交換するために運ばれてきた膨大な量の札束を囚人たちが強奪しますが、それは宝石型の安価な火星の貨幣と交換するための古紙幣だと分かる話。
 「恵みの糧」は、高度近代化社会の中で、飢えた猟師の一家が人間を食べるようになり、核爆発で一気に食料が増えるという話。
 「恥」は、北九州の炭鉱夫の子孫が退化した種族を見ていた観光客を醜悪なものとして宇宙人の観光客が見ているという話。
 「自然の呼ぶ声」は、男性が女性を殺す事件が続発し始めた星で、それまでは性ホルモン抑制剤が食料に添加されていたことが分かるという話です。
 ほんの数ページしかない短いものもありましたが、どれもオチがついていてそれなりに楽しめました。レムの「惑星ソラリス」を思わせる「女か怪物か」など他の作品と関連しているものも多く、またユーモアにあふれた短編も多くありました。SF好きな方以外にもオススメです。