反対世論押し切り戦争法施行
廃止まで 声あげる
国会包む「退陣、退陣」
29日午前0時、多くの反対の声を押し切って、戦争法が施行されました。28日、総がかり行動実行委員会が主催する国会議員会館前座り込みとスタ ンディング行動には、のべ600人以上が参加。「戦争法の施行はやめよ」「安倍内閣はただちに退陣! 退陣! 退陣!」と声をあげました。夜にはシールズ が国会正門前で連続抗議行動をおこないました。

(写真)戦争法廃止を訴え声をあげる人たち=28日、国会前
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「武力で平和はつくれない」「戦争しない国、武器を売らない国としての信頼こそ日本の宝」などプラカードを振って通り過ぎる車にアピールし、国会議事堂に向けてコール。戦争法廃止まで声をあげつづけようとの思いを一つにする人々の姿がありました。
「戦争法は廃止せよと、今言わないでいつ言うのか」。昼前から夫婦で国会前に座り込んでいたのは、埼玉県伊奈町の男性(65)。「明日の夜の行動? もちろん来るよ。黙っていたらダメなんだ」と夕方5時の終了まで座り込み続けました。
「反対の声広げたい」
「昨年8月30日もここにいた」と話すのは秋田高教組書記長の菅徹さん(40)。「政治的中立性などといわれて政治の話がしにくくなっています が、この戦争法だけは手続きが民主的でなかったことをはじめ、反対の思いを持った人がいます。まだ声はあげていなくても潜在的に興味をもっている教職員は たくさんいると感じる。18歳選挙権の行使もからめながら反対の声を広げたい」
「明日を決めるのは私たち」という憲法集会のビラを見て「うんうん」とうなずいていた東京都港区の男性(70)です。「内向的な性格で家にこもり がちだったけど、戦争法と9条改憲だけは我慢できない、許せないと思って外に出てきた。大切な人を守るためにこれからも外で訴える」
商社九条の会ののぼりをもった男性(75)が思いを語ります。「九条の会をつくって11年。私たち商社マンが世界で仕事をすることができるのは、憲法九条があるから。武器を輸出して金儲けをするような死の商人になってはいけないという思いを強くしている」と。
「だれの子どもも殺させない」という安保関連法に反対するママの会のプラカードをさげていた東京都葛飾区の女性(61)が語りました。「戦争する国は嫌でしょ。子どもたちの将来が心配。テロはよその国の話ではない。子どもたちが笑顔で生きてほしい」
座り込みとスタンディングの合間に、三度にわたり集会を開催。発言が終わるたびに指笛が響きます。
「私たちは黙らない」
憲法共同センターの長尾ゆりさんは「戦争法が廃止されるまで声を届けていく。さまざまな圧力があっても、私たちは決して黙っていない」と力をこめ ます。解釈で憲法9条を壊すな実行委員会の高田健さんは「戦争法を発動させないたたかいが大事。あの戦前とは違い、いまは多くの力強い民衆運動がある。戦 時を絶対に迎えない活動を広げよう」と強調。戦争をさせない1000人委員会の福山真劫さんは「連帯すれば、団結すれば、安倍政権を絶対に倒すことができ る。今日の行動を契機にともにがんばろう」と呼びかけました。
日本共産党の宮本岳志衆院議員、井上哲士参院議員、社民党、民進党の国会議員があいさつしました。
廃止が参院選の一大争点に
戦後の軍事法制を全面的に書き換え、日本が戦後初めて海外で「殺し、殺される」道に踏み込む戦争法施行により、歴代政府が憲法違反としてきた集団 的自衛権の行使や、従来の海外派兵法で禁じていた「戦闘地域」での米軍支援、任務遂行のための武器使用などが法的に可能となります。
日本共産党など野党5党は2月19日、戦争法廃止法案を提出。7月の参院選に向けて「安保法制廃止、閣議決定撤回」を一致点に、幅広い市民と一体になって選挙共闘を進めています。同法の是非は参院選や、同時にも予想される総選挙での一大争点となります。
安倍晋三首相は28日の参院予算委員会で、民主党の小西洋之議員が戦争法施行にふれ、「違憲立法を推進する安倍政権の打倒」を掲げたのに対し、「国民の命を守り抜くために、必要な自衛のための措置を考え抜いていく責任がある」と答弁。戦争法推進に強い執念を示しました。
ただ、政府は参院選での争点化をおそれ、当初は今春にも予定していた南スーダンPKO(国連平和維持活動)派遣部隊への「駆け付け警護」などの任務追加は見送ります。
戦争法の施行
違憲の法制は廃止以外にない
安倍晋三政権が、憲法の平和主義、立憲主義を破壊し、昨年9月に強行成立させた戦争法が、きょう施行されます。戦争法は、戦争放棄、戦力不保持を 定めた憲法9条を踏み破り、世界のどこでも米国が起こす戦争に日本が参戦するための違憲の法制です。憲法9条の下で、1954年の自衛隊創設以来、一人の 戦死者も出さず、一人の外国人も殺さなかった戦後日本の在り方を根本的に変え、「殺し、殺される国」にするものです。国民の批判や不安になんら応えること なく、戦争法の施行を決めた安倍政権の姿勢は重大です。
危険極まる参戦の仕組み
戦争法の本質的な危険は、日米同盟を憲法の上に置き、米国の戦争に日本が参戦する仕組みがいくつも盛り込まれていることです。
日本が直接、武力攻撃を受けていないのに、海外で米国が介入・干渉の戦争などを起こした際、時の政権がそうした事態を日本の「存立危機事態」だと判断すれば、「米軍防衛」のために歴代政府が違憲としてきた集団的自衛権の行使=自衛隊の海外での武力行使が可能になります。
従来の米軍支援法にあった地理的制約をなくし、地球規模で米軍に対し輸送や補給などの支援(兵站(へいたん))もできるようになります。歴代政府 が「他国の武力行使と一体化する」との理由で禁じていた「戦闘地域」での活動も可能です。兵站は戦争遂行に不可欠であり、敵から狙われやすい軍事目標で す。自衛隊部隊が攻撃されれば、応戦し、戦闘に発展することになります。
自衛隊が自らの武器を守る「武器防護」規定を広げ、「平時」から米軍を「防護」できるようにもしました。自衛隊の防護対象は米軍の空母や戦闘機など無限定です。
国連平和維持活動(PKO)などでは、新たな任務として▽他国部隊などが攻撃された際の「駆け付け警護」▽「住民保護」などを目的にした警備や巡 回、検問といった「治安維持」―を加え、これら任務遂行のための武器使用を認めました。自らは攻撃されていないのに、先制的に武器を使用する恐れもありま す。
戦争法の施行により、「殺し、殺される」現実の危険は、いよいよ差し迫ったものになっています。
安倍首相は、内戦状態にある南スーダンのPKOに派遣している自衛隊部隊に新たな任務を付与することを検討していると認めています。中谷元・防衛 相は5月に派遣する第10次隊に新任務の追加予定はないとしつつ、今秋派遣する第11次隊への付与は否定していません。自衛隊に「駆け付け警護」などのた めの武器使用を認めれば現地武装勢力と交戦し、戦後初めて外国で人を殺す危険は避けられません。戦争法をこのままにしておくことは絶対に許されません。
世論と共同をさらに広げ
安倍政権は、戦争法成立後も広がる反対世論を恐れ、国政選挙での争点隠しの狙いから具体化作業を当初より遅らせています。米軍支援を拡大する日米物品役務提供協定(ACSA)は今国会への提出を見送り、米軍「防護」の運用指針も策定されていません。
戦争法廃止と集団的自衛権行使容認の「閣議決定」撤回、立憲主義回復を求める世論と共同のたたかいをさらに広げ、安倍政権を追い込むため全力を尽くす時です。